【観光コラムKITENE~IWAKURA~】 ちょっと今から寺巡ってくる👋 信仰心に乏しかったわたしの32テラ(寺)クエスト ~寺と観光~
1.はじめに
わたしは、愛知県岩倉市で観光まちづくり事業を企画・運営する「NPO法人いわくら観光振興会」で働いています。
岩倉市は、愛知県の北西部、西尾張地区にあり、市のほぼ中心を流れる五条川は「日本のさくら名所100選」に選ばれたお花見処で、毎年春に行われる“岩倉桜まつり”が有名です。
そんな五条川の桜のように、すでに観光地として認知されているような名所に行くことだけが観光ではないという考えから、日々まちの新しい観光資源を探しています。
今回は、ひょんなことから市内32カ所(岩倉市史下巻から)あるお寺を巡ったわたしが感じた、寺と観光の結びつき方についてお話します。
2.“ちょっと今から寺巡ってくる” のきっかけ「こんな狭いまちにお寺多くない?!」
わたしがお寺を巡ろうと思ったきっかけは、「岩倉って神社やお寺がすごく多いみたいだけど、どこ行ったらいいかな?」という、なんともざっくりした問合せを受けたのがきっかけでした。岩倉市の伝承にまつわるお寺だったり、著名な方のお墓があるところもある。山車の倉庫があるような比較的大きな神社も、オススメできますよね。
・・・って、ちょっと待って✋それ全部ネットで転がってる情報やん。せっかく直接問合せしてもらったのに臨場感無いわ~。って、急に自分にガッカリしたんです。
そこで、手始めにいくつかの神社仏閣を調べてみると、こんな狭いまちに32カ所もの寺があるということが分かりました。そして、都道府県別「寺院数」ランキングではなんと「愛知県」が1位なんですね。うーん、なんだか面白くなってきたぞ~!
ということで、特に“寺”に興味を抱き、魅力を感じたわたしは
まずは市内にある32カ所あるというお寺を実際に巡ってみることにしました。
写真:廣福寺 手入れされた庭が印象的。
3. レジャー要素を含む参拝がカギを握る?!
わたしの以前のお寺のイメージは、お葬儀や法事をする所、お墓のある所というものでした。
本来は、お釈迦様の教えを広める所がお寺ですよね。昔は寺子屋があったり、役場の役割もしていたわけですから、人々の普段の生活にお寺が身近にあったということになります。
そういう時代と比べると、多くの人の生活にお寺が馴染んでいる、とは言えないのかなと思います。
社寺は檀家減少が進んでいるようだ、よって経営に苦しむ社寺は多数ある。ということは素人のわたしでも知っているし想像もつきます。
さらに、跡継ぎが居ない、祭事を担ってきた地域住民が高齢化、伝統をどう引き継ぐのか?などの課題もあるようです。
その解決の糸口として、なんと!観光の要素がお役に立つこともあるようです。
事例のひとつとして、昨今ブームとなった「御朱印巡り」があげられると思います。
社寺や、城などの歴史文化への興味を持ち、知識もあるのは一般的に男性に多く、年齢は60~70代くらいが多数を占めています。しかしそういった層は、お寺から積極的なアプローチをしなくても勝手に来てくれる所謂マニア層です。「御朱印巡り」はそんなマニア層とは違い、知識を深めることを主な目的とせず、興味や関心はあるが、気軽に訪れることを希望している層に提供できるコンテンツとなり、観光地に遊びに行くような感覚も兼ねて、多くの人が社寺に参拝するきっかけになったわけです。
4. 御朱印は「集めるもの」でなく「集まるもの」
ところが、わたしは以前からこの御朱印巡りブームに関して、観光につながるに違いないと感じながらも、あるイメージから抜け出せず手をつけずにいました。
それは、「コレクション感覚」で集印している人も多いのでは?
というものです。“信仰心”をもって社寺参拝をするという大切な部分が少々置き去りになったような感覚でした。
ところが、今回社寺について調べるにあたり、
『御朱印』は参拝の証であり「集めるもの」ではなく、多くの社寺に参拝する事で「集まるもの」
という考え方を知り、わたしは正直、信仰心がそれほど篤い訳ではないけれど、これを機会に市内の社寺に参拝させていただき、学びながら御朱印を頂戴してみようと思えたのです。
そしてこの考え方こそが、人々と社寺との距離を縮めるポイントになるんじゃないかなと思えました。
もちろん「コレクション感覚」が社寺参拝のきっかけになってもいいのですが、御朱印をもらう際のしきたりやマナーにはもともとの信仰に基づくものもあり、そうした“ルール”に沿って集めることが御朱印巡りの重要な要素なのでは、と考えさせられたんです。
写真:御朱印帳と市内32カ所のお寺についてのリサーチ資料。
5.まとめ 観光を足掛かりに。しかし「観光地化」しないでという思いも
実際に市内32カ所のお寺を巡ってみてわたしが感じるのは、
信仰や歴史的な知識が深くなくともお寺という場所を充分に楽しめる
ということです。
例えば
お庭のお花が素敵。
お地蔵様の表情の違いが面白い。
寺紋を見つけるのが楽しい。
などのような楽しみ方もありました。参拝し、お寺の方に直接話をきいたり、また見聞きしたことを資料と照らし合わせてみる事で、歴史や信仰についての知識も自然と少しづつ増えていきます。まさに、百聞は一見に如かず。です。
「御朱印巡り」に限らず、社寺が多種多様な方法で参拝客を増やしている事例が全国にあります。ドラマや映画の撮影場所に使用してもらい、その作品の聖地巡礼をする人を取り込んだり、コンサートやフェスなどに場所を提供することもあるそうです。
わたしのように、はじめは知識がない中でも、参拝することで社寺における信仰を理解し、多くの人々が楽しんで参拝することが出来れば、結果地域とのつながりが深くなり、教えを身近に感じる人も増えていくことでしょう。
もちろんそんな簡単にいくとは思っていませんが、自身の経験上、どんなジャンルでも自分のまちを楽しむことは観光につながると確信していますので、可能性は無限大です。
そして最後に、偉そうに「観光の要素が社寺のお役に立つこともある」なんて言ってしまいましたが、わたしのまちのお寺に観光を足掛かりに参拝する人を増やせたら嬉しいという思いと、その一方で「観光地化」しないで、信仰や文化が大切にされているコミュニティであってほしい、という真逆にもとれる思いを同時に抱いているというのがわたしの正直な気持ちです。
それぞれの楽しみ方を見つけながら寺社巡りをされる方が増え、そうした方が訪れることでまちが栄え、また寺社を訪れる方が増えることにより仏教の教えがより根付いていく、といったような、相互の良い関係を築いていければいいなと改めて感じています。
すごく当たり前なことを堂々と言っている感じになってしまいましたが・・・
自分のまちに合った寺と観光の在り方を、これからも模索していきます。
写真:長遠寺の手水舎に飾られた風鈴。季節ごとに変わる飾りつけは長遠寺の人気のフォトスポット。
写真:龍潭寺の本堂。近年修繕されたという天井が美しい。
※いわくら観光振興会アメーバブログにて市内32カ所のお寺を1カ所ずつ、随時紹介していきますので、そちらもぜひご覧ください。
●いわくら観光振興会アメーバブログ
https://ameblo.jp/iwakura-kanko
【 この記事を書いた人 】
木村 さや香 (Kimura Sayaka)
NPO法人いわくら観光振興会
人事教育長/イベント企画制作
1986年生まれ。岩倉市在住。1児の母。岩倉市PR大使い~わくんのアテンド"鯉のぼり恋子"としても活動。「観光資源は自分たちでつくることができる」をコンセプトに、市内の農家や商店、消費者をつなぐ企画を提案している。