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公式にちょい悪おやじに認定された話
十数年前、とあるファッション誌から取材依頼のメールが来た。
ちょい悪おやじの文化人を紹介するコーナーで
インタビューをさせてくれという内容であった。
(ちょい悪おやじという言葉をつくった雑誌の編集者がつくった新雑誌)
なんで僕に?!
この依頼メールを読んだ瞬間、笑った。
同時にたくさんの違和感があった。
当時はまだ30代になりたて、おやじと呼ばれるにはまだ少し抵抗があった。
でもそこはいい。
それより大きな違和感が「ちょい悪」の部分だ。
僕の事を知ってたら特に面白いと思うんだけど、
僕って「ちょい悪」どころか、むしろ真逆、
「ごりごり無害」おじさん。よくある量産型おやじ。
大きく分類したら蛭子能収と同じ箱に入れられるでしょう。
(とはいえこの時まだ30歳)
とくにこの当時の「ちょい悪」の使われ方は、
渋くて、経済的に余裕があって、夜の遊びをたくさん知っている、
かっこいいオヤジというニュアンスであった。
今でいうと、吉田鋼太郎や岩城滉一あたりであろう。
どこが僕やねん。
なんで取材されることに!?
当時の僕は、町田の事務所兼自宅で、
仕事以外では外に出ない引きこもり。
お金もファッションに使うくらいなら、資料本に全振りするほどの
若くして仙人みたいなライフスタイル。
ぜんぜん悪くない。むしろいい。ちょいいいおやじ。
そして最大の違和感がこれ。
男性ファッション誌に僕のインタビューページ必要!?
当時の代表作→ギャグマンガ「国宝トゥナイト」
だれやねん。
これは明らかに何かの間違い、誰かと勘違いしている、、、
編集部に電話してみよう。担当者を呼び出す。
担当者と話す。人違いではないかを聞く。
「いわきりさんで間違いないです。取材させてください」
「え?なんで僕なんですか?」
「以前うちの編集長が、パーティでいわきりさんと名刺交換したらしく、
その時に目をつけてて、今回実現となりました。取材お願いできますか」
「は、はい。。。」
間違いではないらしい。
名刺交換した記憶は一切ないが(パーティなんていかない)、
職業柄、編集部の人に名刺を配るのはありえる。
交換したのかもしれない。
僕は自身のことをちょい悪おやじだなんて、まったく思っていなかったが、
ファッション雑誌の編集長が一目みただけで、僕に目をつけていたということは、素人にはわからない魅力が、プロにはわかるのであろう。さすがだ。
この時僕は、公式にちょい悪おやじに認定されたのだ。
電話のおかげですっかりその気になり、
インタビュー内容が「ちょい悪おやじ」が使っている名刺入れはどんなものか?という特集記事だったので、慌てて嫁さんと、デパートにダンディな名刺入れを買いにいった。
ダンディな名刺入れ。(←今後使わないであろう、口に出したい日本語)
取材は3日後。
ダンディな名刺入れが新品すぎるので、少しでも使い込んだ感を出すために
いろんなところに持ち歩く。名刺入れはよりダンディになった。
そして、
取材前夜。
一通のメールが届く。
「誠に申し訳ありませんが、急な紙面の都合で
いわきりさんの紹介記事ページが無くなってしまいました。
申し訳ありません」
一応、了解しておいた。
急な紙面な都合と書いてある。
でも僕の中ではやはり「人違いだったのが直前になってわかった説」である。
絶対そうだと思う。
しかし、あれだけ電話で確かめた手前、人違いに気づいたと向こうも言えなかったのであろう。
だから公式には「急な紙面の都合でインタビューはなくなった。」である。
つまり公式には、
僕はちょい悪おやじであるということは認定されたままである。
時々、嫁さんに僕は言う
「おれは公式に、ちょい悪おやじに認定されてる男だからな」
そして夫婦そろって笑う。
慌てて買いに行ったダンディな名刺入れ。
これがまた値段は高かった。
今となってはいい思い出。