文化人物録83(籾井勝人)
83籾井勝人(元NHK会長)
→1943年福岡県山田町(後の山田市、現:嘉麻市)出身。九州大学卒業後、1965年に三井物産に入社。三井物産米州監督兼米国三井物産社長、三井物産本社専務取締役、副社長を経て、日本ユニシス代表取締役社長、相談役・特別顧問。2014~17年日本放送協会(NHK)会長(第21代)。
14年1月25日、NHKの会長に就任した籾井氏は記者会見で、いわゆる従軍慰安婦問題について「戦争地域にはどこにもあったと思う」、尖閣諸島、竹島について「国際放送で尖閣、竹島など領土問題について明確に日本の立場を主張するのは当然だ」「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」などと述べ、我が国の歴史、領土問題に関する発言が政府追従だとして物議を醸した。
僕は2014年から15年まで約1年間放送担当だったが、その間NHKの会長はずっと籾井氏だった。最初の頃は毎回会見も紛糾したが、籾井氏自身も批判された後は比較的慎重な物言いになった。ただ、それでも随所に元来の勝ち気、強気な性格が顔を出し、たびたび会見で言い合いになることもあった。結局籾井氏は任期最後まで会長を務めたが、歴代NHK会長の中で最もインパクトのある1人だったとは間違いない。「お友達」的な人を近くに置く安倍政権だったからこそ生まれた人事だったとも言える。
(2015年2月)
(ワークライフバランスについて)
(籾井、以下M)今NHKの女性比率は15%、管理職は5%とかなり低いレベルだ。2030年までの女性比率を30%、管理職は現代の2倍以上にしたい。保育施設の必要度も高い。女性は今も男性と同じ仕事をしている。女性がやった方がいい仕事も今後出てくるだろう。男女比率は自然と50対50になるのが望ましいが、NHKの場合男女が仕事を同じようにやっているので数値目標は必要になると思う。
(仕事内容の見直しは)
(M)仕事内容も見直しは勤務条件、環境の改善も含めて必ずやっていかないといけない。全体の最適化、仕事の棚卸し、不要な仕事は捨てていく必要がある。今から関係企業も含めてやっていく。
(放送センターの建て替え、進捗状況は?)
(M)進捗と言える状況ではない。全く決まっていない。何が重要大事なのか、鋭意検討する。
(新年度は戦後70年にあたる。基本方針は)
(M)戦後70年、だんだん戦後が遠くなるが、戦争の悲惨さ、廃墟からどう立ち上がってきたか。元気の出る番組も入れて欲しいと思っている。全体の方針は聞いていない。
(従軍慰安婦問題はどう扱う?)
(M)従軍慰安婦問題については政府のスタンスが見えない。我々が放送する際に妥当かどうかは慎重に考える。夏にかけてどういう政府の方針がわかるかがポイントだ。
(4K、8Kについて)
(M)よのなかは4Kに進んでいる。2017年に4K受像機となってここで放送ができる。実情では4Kは韓国中国に太刀打ちできない。我々は4Kで止まってはならず。8K時代の最先端を行かないといけない。ただ8Kをやるといっても4Kをほっぽり出すわけではない。
(国会同意人事で経営委員3人が退任した。受け止めを)
(M)特にない。任期が来たから辞められたという認識だ。
(受信料制度についてはどのようにやるのか)
(M)有識者会議の具体的な人選や時期を決めると思うが、まだ決まっていない。
(ニュース9のキャスター、大越健介さんが交代した)
(M)民放の方は外部の方がやることが多いが、NHKは職員だ。通常の回しで(キャスターを)持ってくる。大越さんはキャスター5年やったので、ルーティーンの中で交代したということ。
(従軍慰安婦問題のスタンスは?)
(M)コメントしない。