認知症患者さんに対する経皮的ドレナージ
認知症の患者さんに対する経皮的ドレナージを施行する機会が年々増えてきている。
問題点は、手技中に安静を保てないことがあること。 長時間の安静や一定の体位を保持するのが困難となりうること。 呼吸停止や吸気の指示に従えないことがあること。 カテーテル留置した場合に、自己抜去の危険があること。 などである。
手技中の対策としては、手技を迅速に終えることに尽きる。これは、普段から安全かつ迅速な手技を心がけて修行するしかない。急いで手技を行えば合併症の危険が増える可能性があるため、普段の手技自体が迅速にできるようになる必要がある。
尚、手技そのものの迅速化は当然必須であるが、手技に付随する行動(カテーテルやガイドワイヤーの交換や材料の準備・配置、介助Nsとの意思疎通など)の迅速化も非常に重要である。後者は、経験を重ねて会得するような性質のものではないため、明日から直ちに実施できることである。
また、手技中にトラブル等に遭遇した時に、その場で対策を考えているようでは手技の迅速化は実現できない。手技開始前に、想定されるトラブルや合併症について解決策を検討しておく。
次に、そもそも自己抜去は、避けられない事故と考えるべきである。
認知症ではない患者さんでも自己抜去することがあるし、カテーテルの固定をいくら厳重に行っても自己抜去はなくせない。
まず、太径カテーテルは最初は用いないこと。カテーテル径に応じて穿刺部痛や違和感が大きくなるからである。
また、看護師の手薄な夜勤帯にはカテーテルをクランプし、ドレナージルート(廃液バッグなど)を外す手もある。
そして、不幸にも自己抜去された場合のダメージが少なくてすむような対策が必要である。
具体的には、膿瘍ドレナージの場合には、膿瘍腔を可及的に洗浄する。少なくとも、注入した生食を吸引した際に濁りが消失するまで洗浄すべきである。カテーテルが自己抜去され、膿汁が腹腔内に漏出しても、腹腔内の汚染の軽減を企図するものである。
胆道ドレナージの場合も同様である。
場合によっては、帰室後に、もう一度病室に出向いて洗浄を施行することもある。
さらに、内瘻化が可能な症例では、一期的に内瘻化することもある。内瘻化してしまえば、念のため残しておいた外瘻カテーテルを自己抜去されても、ダメージは軽度で済む。腎瘻(一期的に尿管ステント)や胆道ドレナージ(一期的に胆管ステント留置)などの場合が当てはまる。