IVRist

IVR(画像下治療)専門医・画像診断専門医です。 スキルアップのヒントになりそうな内容を中心に、雑多な内容を綴っていきます。

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最近の記事

キットに同梱されている使えない器具

巷にはいろいろな穿刺キット、その他のIVR用キットが市販されている。ドレナージキットの場合は、穿刺針、ガイドワイヤー、ダイレーター、留置用カテーテルなどが同梱されている。 各材料を単品で用意する場合と比較して、合計金額が安いことが多いし、準備の手間もかからないのが利点である。 ただし、同梱されている材料の中に、粗悪な品質のものや使い勝手のわるいものが含まれていることが往々にしてある。製品価格を抑えるために、廉価な低品質製品を同梱しているのだと思われる。 費用がかさむこと

    • 高齢者の経皮的ドレナージ 2

      高齢者の経皮的ドレナージにおける注意点二つ目。 一つ目はこちら 高齢者は皮膚のたるみ、皮下組織の弾力性が乏しい。 仰臥位以外の体位でドレナージカテーテルを挿入すると、仰臥位に復した場合に、予想外に皮膚がたるみ、下垂してしまうことがある。 この場合、皮膚の下垂とともに、挿入したカテーテルが抜けてくる。皮下を走行する距離が長くなり、留置腔内の実効カテーテル長が短くなるのである。 典型的には、側臥位や伏臥位で側腹部を穿刺する場合である。 最悪、カテーテルが留置腔から抜け

      • 小児のIVR

        小児、特に 小学校中学年くらいまでの患児 に覚醒状態でIVRを行う場合。 小児の場合は、当然ながら それ以外の患者さんと異なり、事前や手技中にいくら我々が説明しても不安感と恐怖心が極めて強いものである。 覚醒状態で手技を施行する限り、不安感と恐怖心を除去することは不可能である。 そこで、小児に覚醒状態でIVRを行う時には、原則として お母さん(ないしお父さん、またはご両親双方)に付き添いをお願いしている。すなわち、X線が出ていない限り、手技中は検査室内で患児に直接触れて

        • 小骨処理

          難航したIVRについては、しばらくの期間は記憶に鮮明に残るものである。 しかし、年月が経過すれば、記憶は風化し、詳細な内容は忘れてしまう。 難航したIVRから学べることは非常に多く、今後の大きな財産となる。にもかかわらず、その財産を忘却によって失うのは非常に残念である。 仮に症例の条件が全く同一であったとしても、IVRが難航する理由は術者によって千差万別である。したがって、その症例から学べる内容も、術者に固有なものとなる。 少なくとも、難航した手技については図入りの文

          著明に屈曲蛇行したシャント血管

          シャントPTAの際、動静脈吻合部やシャント静脈が著明に屈曲蛇行しており、狭窄・閉塞部のガイドワイヤーの通過を含め、ガイドワイヤー操作が極めて困難な場合がある。 マイクロカテーテルを併用することで、通常は、ガイドワイヤー通過はかなり容易となる。 また、静脈側からのアプローチでガイドワイヤー通過が困難な場合、動脈側からのアプローチで上手くゆくことがある(その逆も然り)。しかし、穿刺が2か所となってしまい、侵襲が増す。 ここで、シャント動静脈が表在であることを有効に利用できる

          著明に屈曲蛇行したシャント血管

          認知症患者さんに対する経皮的ドレナージ

          認知症の患者さんに対する経皮的ドレナージを施行する機会が年々増えてきている。 問題点は、手技中に安静を保てないことがあること。 長時間の安静や一定の体位を保持するのが困難となりうること。 呼吸停止や吸気の指示に従えないことがあること。 カテーテル留置した場合に、自己抜去の危険があること。 などである。 手技中の対策としては、手技を迅速に終えることに尽きる。これは、普段から安全かつ迅速な手技を心がけて修行するしかない。急いで手技を行えば合併症の危険が増える可能性があるため、

          認知症患者さんに対する経皮的ドレナージ

          やる前に9割は終わっている。

          IVR施行中には、種々の不都合・トラブルがつきものである。 ただし、経験症例が厖大になってくると、想定外のことはまず起こらない。実施の現場で何か起こったとしても、それはほとんどの場合は想定範囲内である。 経験症例が厖大になってくると、頻度が低い不都合・トラブルであってもほとんどが実際に経験されるからである。また、自らは未経験でも、文献や学会発表で知識を得ている場合もある。 そして、トラブルシューティングの仕方も、過去に経験した際に学び済みなので、そのトラブルがその後に発

          やる前に9割は終わっている。

          腎膿瘍の腎盂側穿破

          背部痛、熱発で受診された患者さん。 尿管結石嵌頓+水腎症が基礎にある。 CTでは、腎背側の後腹膜腔~腎実質~傍腎盂域にまたがって、大きな膿瘍が認められる。腎膿瘍が腎盂側と後腹膜腔に穿通した状態である。 膿瘍が腎盂に密接して張り出しているため、水腎症の状態だが腎盂は圧迫され扁平化している。このため、腎盂拡張は軽度であり、楽に腎瘻造設できる状態ではない。 膿瘍ドレナージは必須であり、基礎疾患たる水腎症に対しても、尿路ドレナージが必要と考えられた。 超音波で観察すると、膿

          腎膿瘍の腎盂側穿破

          高齢者の経皮的ドレナージ

          高齢者の経皮的ドレナージにおける注意点を一つ。 上腹部の臓器に経皮的にドレナージ等の穿刺手技を行う場合、穿刺経路が胸腔を通過してしまうことがある。その場合には、気胸が発生する可能性が高まる。 穿刺経路が胸腔を通過する頻度が高いのは、肝右葉(特に、前区域)や横隔膜下腔の穿刺である。 なお、肋間からの穿刺でなくても、経胸腔的穿刺となる場合があるので、注意が必要である。 横隔膜が挙上している場合には、そうでない場合と比較して、臓器が胸腔側に偏位しているために、穿刺経路に胸腔

          高齢者の経皮的ドレナージ

          久しぶりのシャントPTA

          前回のシャントPTAから約3年ぶりに、シャント不全が再発した症例。この間、同一のシャントを継続使用している。 もともと、橈骨動脈と静脈を吻合していたのだが、橈骨動脈は起始部から閉塞していた。(前回シャント不全時は開存していた) 代償性に、尺骨動脈との吻合が発達し、シャント供血路となっていた。 尺骨動脈とシャント静脈は屈曲がほとんどなく交通しており、動静脈接合部の位置が分からない状態であった。 今回のシャント不全の原因は静脈狭窄であるが、上述の理由で動静脈接合部に狭窄が

          久しぶりのシャントPTA

          拍動が良く触れるのに、穿刺に失敗する理由

          動脈穿刺の際、拍動が良く触れるのに、穿刺に失敗することがある。 拍動から想定される動脈走行軸に沿って穿刺針を刺入しているのに、動脈にヒットしない場合である。 その理由の一つとして、穿刺による圧で動脈位置が偏位することが挙げられる。特に高齢者の場合、皮下組織の弾性が低下し、軽度の圧迫にて動脈が逃げやすくなる。 対策としては、穿刺を素早く行うと良い。穿刺針の速度が遅いほど、動脈が逃げやすくなるからである。これは、ドレナージ時の穿刺において、対象に向かってゆっくり穿刺すると、

          拍動が良く触れるのに、穿刺に失敗する理由

          シャント静脈慢性閉塞を開通させる試み

          シャント不全に対してPTAを施行する際、現在のシャント不全の原因ではないが、当初は主たるシャント静脈路であったと思われる静脈の閉塞が見つかることがよくある。典型的には、いわゆる正中肘静脈や橈側皮静脈の閉塞が多い。 側副路が発達しているため、前腕近位部から中枢側(中心静脈側)へのシャント血還流は制限されておらず、静脈閉塞による弊害が顕在化していないのである。 しかし、側副路は屈曲・蛇行し、不自然な走行を呈することも多い。素直な走行の静脈と比較して、この側副路も将来的に閉塞す

          シャント静脈慢性閉塞を開通させる試み

          シャントPTAの際のマイクロガイドワイヤー

          シャントPTAの際、ファーストチョイスとしては長らく0.016インチダブルアングルのGTワイヤーを使用していた。このガイドワイヤーは、腹部の血管系IVRでの鉄板ファーストチョイスであるため、その流れでシャントPTAでも漫然とファーストチョイスとして使用してきたものである。 しかし、最近多用するようになった細径プロフィールのバルーンカテーテル(モノレールタイプ)は、0.014インチガイドワイヤー対応であり、0.016インチワイヤーは使えない。 従って、ファーストチョイスの

          シャントPTAの際のマイクロガイドワイヤー

          側孔開けたカテーテルはキンクし易い

          ドレナージカテーテルを留置する際、ドレナージ効果を高めるためや、内外瘻カテーテルとするために カテーテルに側孔を開けることが非常に多い。 側孔位置、側孔個数や側孔サイズは、症例によっていろいろである。 側孔を開けた部位では、カテーテルのコシが弱くなるため、屈曲部や蛇行部でキンクし易いので注意が必要である。 キンクすると、その部位でカテーテル内腔が狭小化するため、ドレナージ効果が低下する。 したがって、ドレナージ効果が落ちた場合には、キンクに起因していないかを確認すべき

          側孔開けたカテーテルはキンクし易い

          腎瘻2本の1本化

          腎瘻は1本入っているだけでも不便なのに、2本(すなわち、左右両方)も入っていたら大変である。 QOLの悪さを考慮し、両側水腎症であっても腎瘻造設は片方のみにとどめている症例をしばしば見る。 しかし、その場合には、腎瘻造設しない方の腎機能が失われてしまうことになり、もったいない。 そこで、腎瘻カテーテル1本で両方の尿路をドレナージできれば非常に都合が良いが、これができる場合がある。 まず、腎瘻が2本入っている場合、両方とも内瘻化できれば、膀胱内腔を経由して両側腎盂を1本

          腎瘻2本の1本化

          インデフレーターなしでも

          PTAを施行する場合、nominal圧よりかなり低い圧でも、バルーンが良好に拡張することがあるが、このことは非常にしばしば経験する。 とすれば、インデフレーターなしでも、手技を完遂できる場合が相当数存在することになる。用手法によるバルーン加圧でnominal圧に達することはまずないとされているので、過剰加圧の危険もない。 ただし、病変形態や狭窄度から、低圧で拡張可能か否かを判定することはできない。 PTAを繰り返している症例で、前回のIVR報告書に用手拡張との記載があ

          インデフレーターなしでも