夢の中でわたしは

夢の中に出て来た彼女はかつての彼女ではなかった。
いつだって自信なさげで遠慮がちで、
悲しげにも見える不思議な表情で微笑んでいた、
あの頃の彼女ではなかった。

「私はもうあの場所にはいないんだよ」
そんな言葉が聞こえそうだった。
よく知っていたはずの懐かしい彼女に、
わたしは尻込みして、足がすくんで近づくことができなかった。
凛とした表情で真っ直ぐ立っている、ただそれだけなのに。
冷たい膜が張られたようで、かける言葉もはね返されそうで、
怖くて何も言えなかった。

夢の中に出てきた彼女は私に何を伝えようとして現れたのか。
手がかりとなるものは何も得られず、
今もずっと頭から離れない。

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