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森山未來さんへの公開インタビュー「自分がどう動くのかではなくて、何に身体が動かされるのかを意識する」

森山未來さんへの公開インタビューを企画・登壇しました。文化庁より委託された文化観光高付加価値化リサーチチームとしてお声がけをし、「地域の文化をみつめる、みたてる、かたちにする」と題して、兵庫県豊岡市内に残る近畿最古の芝居小屋である出石永楽館でインタビューを行いました。

地域に固有の文化やランドスケープ・空間に焦点をあてつつ、作品をクリエーションしていくこと。その過程でどのように地域の素材に光りをあて、かたちへと「転換」しているかをお伺いするという内容でした。

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森山さんにこのインタビューをお願いしたいと思ったのは、作品を立ち上げる際のアプローチとして、地域における「まだ形になっていない価値」を見立てて、身体を通じて形にすることをやっておられる方だ、と感じていたからです。

最初のきっかけは、文筆家・アートプロデューサーの小崎哲哉さんとお話していたときに、「九相図」という仏教絵画から発想したパフォーマンスを、京都清水寺で森山さんがつくられたと伺ったことです。京都府内の九つの聖地と呼べる場所を廻り、リサーチを重ねたその結実したものをサイトスペシフィックな形で踊りとしてあらわしたと。
この上演は、ごく少数の限られた招待者にのみ向けて一昨年の春に行われたそうで、小崎さんによる批評文唐津絵理さんによるレビューがオンライン上にあります。

ならびにオリンピック開会式でのパフォーマンス。森山さんがザハ・ハディドを演じた、岡田利規さんの作・演出による演劇「未練の幽霊と怪物『挫波』」を思わせる衣裳、舞いで、能楽における鎮魂を体現するような空間を、その身体で作りだしたのを映像越しに目の当たりにしました。
パフォーマンス中の身体を地面に幾度も投げ出す動きは、東大寺の行事である修二会(しゅにえ)で行われる、仏教における伝統的な礼拝「五体投地」を想起させるとも言われています。(参考記事

そのような作品のつくり方、創作上のプロセスで地域の文化をいかに掘り起こし、アーティストの視点で作品として昇華するのか、といったことを森山さんに伺いたいという思いがありました。
これまでのインタビューをオンライン上で探しても、同じような観点から話を聴いている文章は見当たらなかったから。

ひいてはその視点は、地域の外側から地域の内へと関わっていき、「なにもない」と地元の方が言われるところに「光るものがある」ことをみつける行為に通じていくと思いました。文化観光はそうしたものであってほしいとも思うのです。

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インタビュー時の森山さんの発言で、「『いまここからしか生まれない身体』を模索しようと思ったときに、自分がどう動くのかではなくて、何に身体が動かされるのかを意識することが多いです」という言葉が深く印象に残っています。

主体はじぶんにあるのではなく、「動かされる」ことを意識する。國分功一郎さんの『中動態の世界』、あるいは若松英輔さんのおっしゃる「器としてのわたし」を想起させられます。
アーティストの創作行為とは、本源的にはそのようなものであるとも思います。それは「わたし」をないがしろにした結果としてあらわれてくるのではなく、とことんまで「わたし」を突き詰めた結果として、わたしから突き抜けたものが不意にあらわれでてきてしまう、ことなのだろうと。

「作為的に生むものと、無作為に生まれてしまうもの」についても、そのバランスがどうありえるのか、普段存在している身体との関係値が「そこにしかない環境や背景」によってまったくちがったものになってしまうことが影響していく。そういう話題も出てきました。
「わたし」の身体がどこに置かれるかによって、周縁からの影響を受けざるを得ない。むしろ積極的に影響を受けていく受け身の状態である、ということが、「わたし」をつくっていくのかもしれません。

アートのことを話しているようでこれはアートだけではない、あらゆるものの本髄があるのではないかと感じます。人間がコントロールできることは決して多くない。摂理に逆らって事を起こそうとすると、どこかでリバウンドが生じます。そのバランスがどのように整っているかが、アートの立ち上げ方においても、文化の活かし方においても、地域の光らせ方においても、人間の生き方においても、共通したこととしてあるように思われるのです。

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インタビューの映像がアーカイブとして、Youtubeにアップロードされています。よろしければご視聴ください。

また、森山さんへのインタビューは記事化して文化庁へのレポートで提出します。春には文化庁公式サイト文化観光のページ上に掲載されることになります。その際にはお知らせをしますので、ご期待くださればうれしいです。

all photo by ©︎igaki photo studio


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