Itto SAKAI│酒井一途

ひととひと、ひとと地域、ひととアート、などを繋げながら、あちこち渡りあるいています。文学とか思想の話もすきです。

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マガジン

  • 地域でみたり、きいたり、考えたこと。

  • 観た作品の感想や批評。

  • アートを考える。

  • 学びをひろげる。

    読書メモ:一読し終えてから、ざっと再読しつつ本の内容を圧縮して、自分用のメモを作りました。そのため文章は本からそのままの形の引用ではなく再構成してあり、括弧なども書き加えています。

最近の記事

招待制合宿企画『揺蕩う群島 豊島篇』

『揺蕩う群島』という招待制の合宿企画を立ち上げ、9月30日に第一回を開催しました。瀬戸内の豊島に新設された豊島エスポワールパークにて。 友人の丸岡直樹くんと共同で企画し、日常の延長線上ではなかなかに巡り合うことのないであろう十八名のゲストをお呼びしての実現が叶いました。 生きていると、人間ひとり一人に個々の「わたしの世界」が自然と生まれてきて、その世界のなかに住まうようになっていくと感じます。関わるひとも、得られる情報も、身辺の使う道具も、生活の範囲も、仕事の幅も、次第に「

    • 『存在の客』 神宮前bonobo

      2022年7月15日、『存在の客』という名のオールナイトパーティを、神宮前bonoboで開催しました。大雨降りしきるなか、パフォーマーとしてお声がけしていた16人を含め、107名の方々がつどいました。 「いろんなタイプの人間が絶妙なバランスで存在していた」とか「長い時間だからこその人との関係が流れていくことが久しぶりで何か感覚を呼び起こされるような時間」とか「満員が続き、ボルテージも常に高く、能動的な素晴らしい催し」といった言葉をいただき、これらの言葉は響きあうようにして、

      • 森山未來さんへの公開インタビュー「自分がどう動くのかではなくて、何に身体が動かされるのかを意識する」

        森山未來さんへの公開インタビューを企画・登壇しました。文化庁より委託された文化観光高付加価値化リサーチチームとしてお声がけをし、「地域の文化をみつめる、みたてる、かたちにする」と題して、兵庫県豊岡市内に残る近畿最古の芝居小屋である出石永楽館でインタビューを行いました。 地域に固有の文化やランドスケープ・空間に焦点をあてつつ、作品をクリエーションしていくこと。その過程でどのように地域の素材に光りをあて、かたちへと「転換」しているかをお伺いするという内容でした。 森山さんにこ

        • ひとに出会うこと、親しめるコミュニティがそこにあって、また会いにきたいと勝手に思うこと|宇都宮・大谷訪問

          毛塚幹人くんに会いに、宇都宮に行ってきました! 就任当時26歳の全国最年少でつくば市の副市長に就任し、「アジャイル行政」を掲げ民間企業との数々の社会実験をしたり、市長公約82事業実現のロードマップを作るなど、任期4年間にめざましい成果を残しています。 参考URL:https://publab.jp/2021/07/05/3100/ 退任後は故郷である宇都宮市に尽力したいという彼の思いを前々から聞いていたので、かならず宇都宮には訪れたいと思っていたのをこの機会に訪問。 地

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        • 地域でみたり、きいたり、考えたこと。
          7本
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        記事

          武本拓也『山を見にきた』|一切の支配がない空間をうみだす身体

          武本拓也さんの上演『山を見にきた』をゲーテ・インスティトゥート東京で観てきた。複数回にわたって彼の上演は観てきているのだが、今日観たところで感じたいまの感覚を言葉にしておきたいと思った。できるだけ未見の方にも読める文章で、いつか彼の上演を目にしたいと思ってもらえるように。 前提として、これからも彼の上演には多くの言葉が与えられることだろう。批評的な難解な言葉が当てられるかもしれないし、素朴な言葉にもならないような感想が置かれるかもしれない。彼の上演そのものは限りなく多様な解

          武本拓也『山を見にきた』|一切の支配がない空間をうみだす身体

          守らなくてはならないちいさなものを、解像度を上げていくつも見えるようにすることが、わたしたちに必要な誇り|柳川藩主立花邸 御花

          福岡・柳川視察|柳川藩主立花邸 御花 2021年9月23日 縁あって地域の文化をリサーチする仕事をはじめた。各所に赴いては、その土地に受け継がれてきた文化やこれからの時代においてよりよい形で大切に残していきたい文化に触れ、学んでいく。 多くの地に足を運ぶことでみえてくるものがあるだろう。多くの文学や映画や芸術に触れることで、学んできたことがあるように。相対化することは選択肢を増やす。まずは見ることから。 やがて見てきたもの同士が繋がったり、ある土地の事例がべつの土地の事

          守らなくてはならないちいさなものを、解像度を上げていくつも見えるようにすることが、わたしたちに必要な誇り|柳川藩主立花邸 御花

          ぶらぶらとなんの目的もなく旅するときのように、日常への余白をもっていたい。

          同じ町に住んでいても、出会う機会のないひとのほうが多い。 生活圏にないコミュニティに属するひとと、気兼ねなく知り合うことのできる場は、町の中にそうそうない。大人になったら小中学生や高校生と出会うことなどないし、近所に在留外国人が住んでいたとしても知り合わない。 なぜなら、話し始めるきっかけがないから。生活圏に関わるコミュニティ内でのコミュニケーションだけでも手一杯なのに、何の脈絡もない他人と繋がるようなことを積極的にすることを、人は選択しない。 学生だから出会わない、外

          ぶらぶらとなんの目的もなく旅するときのように、日常への余白をもっていたい。

          歓待される喜び、そして、歓待する喜び。それらがともにある関係性をさぐりたい。

          縁あって、「観光」について考える機会が増えた。あるひとから聞いた「観光は行き交い」という言葉がずっと響いている。行き交うことによって生まれてくるもの。  * ベルリンに住んでいたころ、歓待されることの喜びを知った。いろいろと親身になってくれてお世話になっている hiromiyoshii gallery の吉井さんに、「ドイツに行くなら会うといい」と、ベルリン近隣在住の二人のアーティストを紹介してもらってから、日本を発った。 連絡を取ると、二人ともすぐに返事をくれて、会い

          歓待される喜び、そして、歓待する喜び。それらがともにある関係性をさぐりたい。

          目の前の相手に無条件で信頼を寄せるということ

          2020年2月16日 目黒にある高野山真言宗高福院にて、『共感と自由 演劇の身体知による実践』というタイトルでワークショップ講師をしてきました。副住職の川島俊之さんにお声がけいただいて今日の場が生まれました。 チケットは完売し、18名の方々にご参加いただきました。20代から50代以上まで、会社役員や経営者、会社員、精神科の看護師、翻訳と通訳のフリーランス、不動産賃貸の代表取締役、経営コンサルタント、福祉系の相談員、役者、ファシリテーターなど肩書も様々。 参加してくださった方

          目の前の相手に無条件で信頼を寄せるということ

          劇場を再定義するために ― 岐阜県可児市文化創造センターあーとま塾2019に参加して

          2020年2月12日 岐阜県の可児市文化創造センター(以下、ala)で行われている「劇場に関わる人のためのアーツマーケティング・ゼミ」に参加した。 ゼミのタイトルには「劇場の再定義」と掲げられてあり、まさしくその言葉通り、「劇場を再定義する」ことがこれからの時代の公共劇場には求められていると考えさせられる場だった。 従来の「劇場」という言葉の認識では、地域の公共施設として建てられたはずのその場所の公共的価値が発揮されないままに、ただ運営維持費ばかりが予算を圧迫していく。全

          劇場を再定義するために ― 岐阜県可児市文化創造センターあーとま塾2019に参加して

          ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』序章〜第5章

          人間の直感は統計をうまく扱えるか? ほとんど扱えない。なぜなら、人間の判断には〈バイアス〉がかかるから。思い出しやすさや入手しやすさなどの〈利用可能性ヒューリスティック〉を使ったり、難しい問題を類似した易しい問題に置き換える〈単純化ヒューリスティック〉を使うことで、解決への近道を見出そうとする。すると、統計とまったく違う答えにたどり着いてしまう。 人間は合理的で論理的である、とされていたが、そこに疑いが投げかけられた。 たとえば、メディアに取り上げられた情報は容易に記憶

          ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』序章〜第5章

          読書メモ:M・ミッチェル・ワールドロップ『複雑系 生命現象から政治、経済までを統合する知の革命』第5章〜第9章

          コンピュータ科学者のジョン・H・ホランドは〈適応〉に関する講演を、サンタフェ研究所で行った。 経済は〈複雑適応系〉の好例である。自然界におけるそのようなシステムとしては、脳、免疫系、エコロジー、細胞、発生中の胚、蟻の巣などがある。人間の世界においてもまた、政党とか科学界といった社会的、文化的システムがある。これらにはどれも共通する特性が見られる。 第一、〈複雑適応系〉のシステムは並行的に作用する多くの〈エージェント〉のネットワークである。どの〈エージェント〉も、他のすべて

          読書メモ:M・ミッチェル・ワールドロップ『複雑系 生命現象から政治、経済までを統合する知の革命』第5章〜第9章

          読書メモ:M・ミッチェル・ワールドロップ『複雑系 生命現象から政治、経済までを統合する知の革命』第1章〜第4章

          1977年のノーベル化学賞受賞者であるイリヤ・プリゴジンは、「なぜこの世には秩序と構造があるのか? それはどうして生まれるのか?」を問いとして掲げた。そして〈自己組織化〉という発想を持ち出した。後にサンタフェ研究所に参加する物理学者ブライアン・アーサーはプリゴジンの著作を読み、多大な影響を受ける。 〈自己組織化システム〉は自己強化に依存している。つまり「条件が整っていれば、小さな影響が除去されるのではなく拡大される傾向」のことをいう。工学の世界でいう〈ポジティブ・フィードバ

          読書メモ:M・ミッチェル・ワールドロップ『複雑系 生命現象から政治、経済までを統合する知の革命』第1章〜第4章

          読書メモ:フリッチョフ・カプラ『ターニング・ポイント』第2章「ニュートン物理学と機械論的世界観」

          西洋における「中世」では、精神的な現象と物質的な現象がたがいに依存しあっていて、自然の秩序を理解し調和することによる、理性と信仰に根ざした科学があった。科学者や哲学者は物事を〈予測〉したり〈制御〉するのではなく、物事の〈意味〉や〈意義〉を理解しようとしていた。 また、社会は個人に優先していた。アリストテレスとカトリック教会(トマス・アクィナスがアリストテレスの自然体系とキリスト教神学を結びつけて体系化した)が権威であった。神、人間の魂、倫理の問題が主題であった。  * * 

          読書メモ:フリッチョフ・カプラ『ターニング・ポイント』第2章「ニュートン物理学と機械論的世界観」

          読書メモ:ディーパック・チョプラ『クォンタム・ヒーリング 心身医学の最前線を探る』

          究極の真実を問われたヴェーダの予言者「アハム・ブラフマースミ(私は形あるものないものすべてである)」 アインシュタインは時間と空間を包含する〈統一場〉の探求に生涯を費やした。しかし〈統一場〉は俯瞰できるものではなく、私たち自身が〈統一場〉そのものなのだ、ということ。私たちは本来的には、通常の時間的流れも通常の空間的仕切りも超越して、時間と空間の制約を受けない無限の存在である。自我、知性、心、感覚、物質といった層を通過して、統一場に波動を作りだす。人は光子のかわりに〈意識〉を

          読書メモ:ディーパック・チョプラ『クォンタム・ヒーリング 心身医学の最前線を探る』

          国際コラボレーションの場におけるアーティストの経験を、開かれたものとして共有する ― 人びとが共存する道を探るために ―

          2019年9月から10月にかけてインターン・アーティストとして参加していたAPAF(アジア舞台芸術人材育成部門)に提出した報告レポートが公開されました (https://www.apaf.tokyo/report-sakai )全文をnoteでも掲載します。  * * * 恥をかいた話からはじめる。 顔合わせの初日、アジア諸国から日本を訪れてきた同世代のアーティストを前に、僕は自分を見失った。何者としてそこに立っていればいいのか、わからなくて。 彼らに対して、はじめて自

          国際コラボレーションの場におけるアーティストの経験を、開かれたものとして共有する ― 人びとが共存する道を探るために ―