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【物語】 うっかり者のアリス、紅葉狩りに癒される - アリスの物語2話(タイトル変更1/9)

バレンタインデーの2月14日、うっかりその気もないのに誘ってしまった社長に勘違いさせてしまい、どうしたものかと悩んでいたアリス。


アリスは生命保険の外交員。「マネーコンサルタント」や「ライフコンサルタント」の呼び方でカッコよく自己紹介している。

入社初年度はタイトルも獲得しヤル気満々だったが、2年目に入ったばかりだというのにもはや厳しい状況になってしまった。

件の社長からの連絡には、即レスしない・核心に触れないよううまく話を繋ぐ・自分から連絡しないを貫き、徐々になんとなく疎遠になっていた。

だが、ほっとしたのも束の間、足を怪我したのでと保険の給付金について教えてほしいとLineが入ったのだ。

保険の話となれば即レスするしかない。

Lineから察するに自宅で模様替え中タンスを移動しようと手が滑り、足の上に落ちてきて骨にヒビが入ったらしい。保険金が出るか教えてほしいというもの。入院せず通院で治療するのだとか。

社長が入っている保険は入院しないと給付金は出ないタイプだった。残念だけど、今入っている保険だと保険金の対象にならないことを返信した。するとなんと、「こんな時でも給付になる保険に改めて入りたい」というのだ。

どうしようか一瞬考えたものの、お断りする理由が全く思いつかない。「違うよ〜。勘違いだよ〜。」と心の中で大声で叫んでも、それを口にする勇気はない。そんな自分に嫌気がさしながらも、やっぱり適度に合わせながらやんわりと「気づいてね」と念じ、保険の話を進めるしかないのである。


「怪我がもう少しよくなったら、そっちに行くよ」

そう来たか〜〜〜。。。

「了解!連絡待ってるね!!」

残暑が残るお盆すぎのLineのやりとりだった。


秋も深まり紅葉が見頃になるころ社長からLineが入った。

「だいぶ良くなったのでそろそろ行こうと思ってる。そっちのあのお寺の紅葉がちょうど見頃だね。ライトアップは中止かな?久しぶりに紅葉狩り、いんじゃないか?」

あちゃー、とうとう来たぞ。紅葉狩りは私も行きたい。久しぶりにあの綺麗な紅葉眺めたい。左を見ても右を見てもマスクだらけの日常にはウンザリ。あのお寺の紅葉、それはそれは見事で空気のせいかお寺のエキスがいいのか真っ赤な紅葉に目が奪われる。緑のまま葉っぱをつけた木もあってそのコントラストもすごく良い。ライトアップはないけど昼の紅葉も綺麗だよね。行きたいな。いやいや待て。これは勘違いを冗長させるのではないか?

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「足は大丈夫なの?あのお寺は歩く距離が長いけど。。少しだけど上り坂もある。行ける?」

「大丈夫!ノープロブレムだ!!」


紅葉狩りは、仕事の都合があると理由をつけて同僚と一緒に行くことを伝えた。新しく保険に加入してもらう担当が彼女と2人になるので手数料が按分されるけどそれは仕方ない。それでなければそれ相応のお礼を渡す。どちらにするかは、手数料や加入する保険の内容によって決めることにした。この厳しいご時世、3人連れの紅葉狩りも彼女へのお礼も目を瞑るしかない。


お寺の紅葉は、それはそれは綺麗だった。コロナの影響で一時期は車の数が減り空気そのものが随分と澄んだ気がしていたが、最近はまた元に戻りつつある。

でもお寺の空気はやっぱり澄んでいて、樹木が多いせいなのか、このお寺に住む空気の神様のおかげなのか。つーんと澄んだ空気の中で赤や真紅、黄色や緑とのコントラストが鮮やかなことといったら、なんとも言葉にできない。奥に進めば進むほど、そう坂を登っていくに従い葉っぱの上に葉っぱが重なり、何重にも奥行きが感じられるから更に風情が増し心に染み込むものがある。

なんて気持ちいいんだろう。この空気。色。まるでこの景色の中に吸い込まれてしまいそうだ。1人でまた来ようかな。この感覚は2人も感じているだろうか。。。。

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「綺麗だね〜。やっぱりこの時期を選んで来て良かったよ!」社長はご満悦だった。

その夜は仕事の会食があるとかで、翌日、保険の契約と健康診断のため保険の提携病院へいくことになった。


翌日の商談では、なるべく手数料が高くそれでいて保険料が安めで補償が充実したものを提案し、社長も快く契約に応じてくれた。さて問題は健康診断。なにしろ補償額が大きいので改めてしっかり診断をしないと入れないのだ。それなのに朝から気になっているのが、社長が動くたびにお酒の臭いがすること。

ゆうべ飲みすぎたのかなあ?あんまり飲まないように言ったはずなんだけど。私の気のせいかな?服に染み付いてる?いやそんなことないでしょ。診断がうまくいくことを祈るしかないか。


予約していた病院へ3人で向かった。問診は問題なし。お酒の臭いはクリアだ!ホットしていると、「血圧を測ってきてください」と先生から指示があった。公民館に置いてあるような自動血圧計と同じ機械が待合室にありそれで測ることになった。

「あれ?おかしいな。180もあるな。。」

ボソっと社長の声が聞こえた。

「えっ⁈」とアリスは思わず叫んだ。

「いや、もう一回測ってみるよ」

「いつもそんなに高いの?」詰問口調でアリスが尋ねた。

「いや、ひゃくう〜〜さんじゅう〜〜〜〜くらい、かなあ〜」

急に50も上がったりするわけないよね。やっぱりゆうべのお酒?ちょっとさあ、、、


「お!今度は150だ。もう一回測れば130かも。」

。。。。。

「ん?155。もう一回。」

。。。。。

「だいじょぶだいじょぶ。もう一回。ほら、145!」


その後も10回、いや20回近く測った社長。130は一度も叩き出すことができず。その間何度か看護師さんに呼ばれ、もう一回、もう一回と待っていただいた。

とうとう、先生がやってきて「何回測ってもそんなに変わらないから一番低く出たので提出します。」って。そりゃそうですよね。

社長も観念し「はい。」と素直に返事してました。


同席した同僚にお礼をし、半分諦めつつもちょっとの期待を残し待っていた結果は、もちろんそのまま通るはずもなく複数の条件付き契約となりました。

それでも「怪我した場合も給付される保険に入りたい」というオーダーだったのにそれ以上の保険契約をいただいたので、アリスとしては結果オーライなのです。

悔やまれるのはあのバレンタインデー。うっかりあの日お誘いしなければ誤解されることもなく、按分することも無かったはず。

でもまあ、あの紅葉が観れたのでそれだけでも良かった、と目の奥に残る色鮮やかで奥深い紅葉の残像と、あの景色に吸い込まれる感覚を思い出し、心地よい秋の日を過ごすアリスでした。

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この物語は、以前書いたこちらの続編です。


物語の部分を2021.1.30追記しました。

♡♡♡♡

アリスは生命保険外交員をしている。金融コンサルタントとかっこよく言ってみることもあるけれど要はセールスレディーだ。
近場の知人にお勧めし結構な成績を上げたけれど、そろそろ行く先もなくなり遠くの友にも連絡を入れるようになっていた。

ちょうど転職も検討していた2月中旬に狙っていたセミナー情報が入ってきた。
早速申し込んだアリスは、少し遠くで行われるそのセミナーにせっかく交通費をかけていくのだからと会場近くの友人に声をかけた。

その友人はすでに保険に入ってくれていたけれど、追加でまた申し込んでくれるかもしれないと淡い期待を持って出かけた。新幹線は相変わらず混み混みで、みんななんの用事があってどこへ出かけるのだろうと、目的を持って前をみている風に座っている人たちの顔を眺めた。


せっかくだからとセミナーの予定をもう一つ入れておいた。これなら物足りない結果だったとしても後悔しないだろうと打算的に考えたからだ。

二つ返事でオーケーを出した友人は待ち合わせ場所に指定した駅ナカのスタバにニコニコして現れた。

待ち合わせまで時間があったアリスはパソコンを開きスタバで仕事をしていたのだ。

アリスはマーケティングの世界に片足を突っ込んでいた。Macを持ってスタバでカチャカチャやっているといかにも仕事ができそうに見える。そう見られたい一心でちょっと気取ってカチャカチャする。

集中して乗ってきたところに友人がやってきた。
「ちょうどいいところなのに」
そこは顔に出さずにこやかに手をあげる。

場所を変え居酒屋に入った。
彼は相変わらずニコニコして上機嫌だ。
それぞれの近況報告をしながらお酒もご飯も美味しくいただいた。

居酒屋にしては駅ナカだからか。味付けやメニューに工夫が凝らされていて、それでいて大衆向けの枝豆などもあり、飽きずにたくさんいただけた。

彼はまだ籍の抜けていない奥さんと離婚調停中だ。高校生と中学生の子供2人と3人暮らし。お弁当を作って毎朝送り出しているらしい。強面の見た目からは想像ができないほどかいがいしく家の中を切り盛りしている。仕事は小さいながらも会社の社長だ。

アリスの事を憎からず思っているのは感じていたけれどアリスには全くその気はなかった。

それを知っているはずなのに彼はなぜかすごく上機嫌だ。いつもより饒舌だ。

2人で飲むのは初めてだからだろうか?
いつもは用心して友人を交えている。

セミナーがあったことや他にも用事を済ませたことをなにげに会話に挟みつつ、会いに来たのではないよと暗に伝えたつもりだが全く理解してない様子。

ついに、今日は飲み明かそう的な話になってきた。いやいや終電で帰りますからと伝えると、
「仕方がないなあ、でも次もあるから」
とにこやかに答える。

いつもはお会計の後お店の前で解散するのに今日はホームまで見送ると言う。
2人で飲むのは初めてだからだろうか?

断る理由もないのでホームまで見送ってもらうことにした。それでもなんとなく居心地が悪いのでちょっと断ってみた。

それでもやっぱりホームまで来ると言うので従った。
アリスは新幹線に乗り込んだ。

窓の外でニコニコ手を振る彼に向かってにこやかに手を振りながら、出発の時間はまだかと時計に目を落とす。ついでにバッグの中を必要もないのに漁ってみたりして。

ようやく新幹線が出発しホッとしているとすぐにLINEが来た。


「いやぁーバレンタインデーに来てくれるなんてほんとに嬉しかった。今度は僕の方から行くよ。」

「・・・・・」

うっかり者のアリス。
今日は2月14日だと知ってはいたけれど、バレンタイデーの意味合いはすっかり忘れていた。

彼と家族に幸多かれと願うばかりのアリスなのであった。

♡♡♡♡





記事後半に物語があります。


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#創作墨字書いて参加祭り  詳細 途中でルール変更あるかもですが。。。

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(写経継続 235日 12クール4日) 継続してます。

最近は娘と分担です。

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今日も最後まで読んでくださりありがとうございます! これからもていねいに描きますのでまた遊びに来てくださいね。