初節句 パンチもお初 ひなパンチ。 いっぽうで老いに向かいし額縁か
初節句を終えた翌朝、ベビーベッドのHamは90度回転していた。3ヶ月を目の前にした赤ん坊は、かくも動くものだったか…
もはや記憶の片隅にも残っていない我が子の生後3ヶ月を思い出すより、自分の老いの早さを思ったからか、ふと、こちらの記事が目についた。
最期の寫眞(声ノ文)
僕は父が大嫌いだった
だから亡くなるまで、父とはろくに口を交わさなかった
某大手電機会社の重役をしていた父は、人一倍世間体と他人様からの評価を気にし、その重圧を幼い僕に強いた(と、ずっと勘違いしていた)
だから、そんな父を
僕は徹底的に嫌った
しかし父にはもう一つの顔があった
厳格な父からは想像もつかない、優しく温かく深い詩を書く詩人の顔だ
世間体を僕に強いる父と、神と愛と平和を一編の詩に綴る父の、その対比する矛盾の狭間で、とうとう僕は耐えきれなくなり高校に入ると同時に家を出た
以降、僕と父の間の会話はなくなった
晩年
父は日を追う毎に弱くなっていった
父の代名詞だった世間体や評価話しはめっきり減り、「さとし、こんな詩を書いたんだけどどうかな」とか「この部分、もっといい表現ないかな」とニコニコしながら擦り寄ってくるようになった
しかし冷血非情な僕はテーブルに無造作に広げた父の詩篇には目もくれず、
「あっそう」
と吐き捨てその場を後にした
それでも父は執拗に作品を僕の前に広げてきたが、それでも僕は無視し続けた
そんなある日
新橋の居酒屋で仲間の鶴ちゃんにその話をすると、鶴ちゃんは僕をキッと睨み言った
「今すぐ帰れ ! 帰って親父さんと肩を抱きあってツーショットの写真を撮れ ! 撮ったらそれを俺に送れ ! 」
僕は鼻で笑いたかったが鶴ちゃんがあまりに真剣だったので
「あぁ・・・」
と軽くあしらい話題を変えた
(後で知ったが鶴ちゃんも父親との確執を抱えたまま見送ってしまったらしい)
それから数日後、神さまは実に巧妙で素敵な仕掛けをしてくれる
たまたま田舎に帰る用事ができて僕は久しぶりに実家に戻った
用を済ませ帰り支度をしていた僕に、突然母が「珈琲飲みたい」と言いだした
「じゃぁ行こうか」と答えると父が背後からポツリと言った
「俺も行っていいかな」
10分後、僕と母と父は小洒落たカフェのテーブルを囲み珈琲を口にしていた
ふと僕は何を考えたのか「久しぶりだから三人で写真でも撮ろうか」と言い出しスリーショットを撮った
撮った瞬間、鶴ちゃんのあの声が頭の中に響きわたった
「親父さんとツーショットの写真を撮れ!」
それから幾日か過ぎたある日
父が死んだと姉から電話が入った
山の稜線が白く初雪に染まる寒い朝だった
その後僕がどうなったか、キミに想像できるだろうか
父が旅立ってからわかった事
父を嫌った原因の、
そのほとんどが僕の思い込みだったということ。
それが日を追うごとに僕を責めこんでくる
もしも今、父の声が聴けたなら
父は僕に何を語ってくれるだろうか
僕の後悔が少しでも和らぐだろうか
手に残ったあの日の最期の写真
そこには僕と母が寄り添い、
少し離れて寂しそうに珈琲をすする父がいる
♡♡♡♡
#創作墨字お礼祭り2021 3番目に手を挙げてくださったのがまつおさんです。
まつおさんは、募集記事のコメント欄に詩を残してくださいました。
まさしくnoteでの私の姿勢を言い当てていて、覚悟と自然な思いとともに
そしてすこしずつ明るみに出し裸になっていってます。
募集記事から見るまつおさんを少しづつ拝見しています。
逃してもよい時、逃してもよいこと、逃してもよいもの。
逃したくない時、こと、もの。思い、想い。感じたこころ。こころ。心。
>まつおさん、もう少しお待ちくださいね。ただいま取り掛かり中です。
♡♡♡♡
まつおさんと出合ったきっかけはコジさんが書いてくださったこの記事です。額は額でもこちらはイキイキ(イケイケ)な額です。額の中は愛がいっぱいなのですね。
創作墨字お礼祭り。お礼の気持ちをお届けしたくて初めて考えた昨年の企画。参加してくださったコジさんが、なんと!ゆめのさんの絵とともに額にまで入れて飾ってくださっているのだとか。
それはそれはありがたいことで、まさかの素敵な絵と隣り合わせとな。
わたくし嬉し恥ずかし、赤ら顔です。
>コジさん、一緒に並べて飾っていることを記事にしていただきありがとうございました。おかげですてきなすてきな、まつおさんと出会うことができました!
この記事が参加している募集
今日も最後まで読んでくださりありがとうございます! これからもていねいに描きますのでまた遊びに来てくださいね。