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【連載小説】少年時代#31

「えー、ごわさんで願いましてはー、百二十五円なーりー、七十八円なーりー、、」


"『ごわさんで』って何やねん?"

"『願いましては』って別にお願いなんかあらへんし、"

"なんで『願いましては』でみんな一斉にそろばん『ジャーッ』てやらなあかんねん"

"なんで『足す』が『なり』やねん"

ポンタは思っていた。


ポンタ達はそろばん塾に通い出した。
学校でそろばんの授業が始まり、みんな通い始めたので、つられてポンタも入る事になった。

ポンタはそろばん塾に通い始めたものの、そろばんがどうも苦手だった。

辛うじて足し算は出来るが引き算や掛け算、まして割り算なんて何故そろばんを使ってやらなければならないのかわからなかった。


そろばんが得意なはざま君は昇級試験に次々と合格し、すぐに一級になった。
でもポンタはいつまでも六級止まり。試験でそろばんを使わず紙に書いて計算していたから受かるはずもない。


「、、三百五十八円なりー、四百七十九円でわ!」

ハイ!

ハイ!

ハイ!

教室の全員が手を挙げる。

ポンタはそろばんで計算してるフリをしていただけなので、答えはわからないが一応手は挙げた。

「はい、では本田君」

先生がポンタを指差した。

"ヤバい!"

ポンタは隣のはざま君をチラリと見た。
はざま君はいつものようにそろばんで答えを見せてくれた。

「千五百八十二です!」

「はい!ご名答ーー!」

先生が言うと教室のみんなが拍手する。

ポンタははざま君に『サンキュー』と目配せした。


家でポンタは母に言った。

「あー、そろばん嫌いやわー、先生ネズミみたいな顔して八百屋さんみたいな声なんやで、冗談も全然言わへんし、面白無いから塾辞めてええか?」

「そろばんはやっといて損は無いからもう少し続けなさい」

ポンタの"願いましては"は、けんもほろろに却下となった。


つづく

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