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対外的な根拠と対内的な根拠

円安は国内のインフレ要因で、その円安を押し上げる要因の一つには外貨との金利差がある。だから金利差が注視されるけれど、円安は日本円そのものの購買力が落ちているということでもある。

日本で暮らしているから気づきにくいし気づくまでに時差があるけれど、「海外ではラーメン1杯が3000円」と聞くと「うわっ、マジか。高ぇ〜!」と思ってしまうのは、ラーメンが高いのではなく日本円が安いから(日本円の購買力が低いから)。

そんな日本は資源がほぼないので、エネルギーや食糧などほとんどのものを輸入に頼らざるを得ない。ただでさえ世界中で原材料価格が上がる中、この購買力の低い日本円で買う必要があるのだから輸入物価が高騰するのも至極当然のこと。
”日本円で買う” といっても、実際には貿易決済通貨として使われる大半は米ドルだと思うので、日本円を米ドルに替えて決済することになる。
もちろん、これも円売り・ドル買い。

また、これらは生きていくために必要不可欠なエネルギーや食糧の輸入なので、今後も日本はこうして外貨を買い続けることになる。
仮に、今のコストプッシュ型インフレの原因とされるロシア・ウクライナ戦争や中東情勢の有事が終わり落ち着いたとしても、かつてのような物価まで下がるとも思えないんだな。

それに加え、以前の記事(「経常収支が黒字なら良いのか、という疑問」「デジタル赤字」)で述べたように、近年では経常収支の中身や旅行収支の黒字を帳消しにするほどのデジタル赤字といった問題もある。それも、これは今後拡大していく一方だとも思われる。

短期的な金利差だけでなく中長期的に見ても、こうして構造的に実需の面で円安・インフレが続くと考えられる根拠がある。
また、これらは輸出入といった対外的な問題だけれど、今度は国内だけに目を向けても、インフレ要因になると思うものはある。

先日、『連合、25年の賃上げ目標「5%以上」に 24年と同水準』という記事が出ていた。
「賃金制度が整っていない中小企業では、大手との格差を縮めるため全体の目標に1%上乗せし、6%以上の賃上げを目指す」とまである。
もう中小零細企業の経営者にとっては本当に厳しい局面になったと思うけれど、今や世間の空気は完全に「賃上げ一直線」になった感がある。

政府は最低賃金を「2020年代に全国平均1500円」と目標にしているけれど、これを実現するには劇的な経済成長が必要で、人口減少が進む日本では難しいんじゃないか、という私見を先述した。

けれど、もしこの目標が本当に達成するとすれば、ぼくはこれしかないと思っている。

この最低賃金は法的に遵守すべき金額であって、「その額を出せば働きに来てもらえる」といったものでないことも実感あると思う。

パラダイムシフト

国を挙げて最低賃金を上げようとするのも、それに法的効力があるのもわかるけれど、それでもこれは名目的なものであって、現実的にはその金額で人材を確保するのはおそらく困難だ。
つまり、仮に政府が最低賃金を設定、強制をしなかったとしても、結果的に賃金は上げざるを得ない状況になると思っている。それも政府が想定しているよりも早い時期に達成する可能性さえあるかもしれない。

そして、ぼくはこれが対内的なインフレ要因になると考えている。

つづく



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