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最低賃金は ”目安” でしかない、ということ

10月3日、4日と2日間続けて『日本の最低賃金「十分ではない」審議会長、外国人材の獲得激化念頭』という内容の記事が日本経済新聞に出ていた。

この審議会が採っている基準は、平均賃金でなく ”賃金中央値” 。
労働者の中で真ん中に位置する人の賃金に対し、最低賃金の比率はどうなのか。
世の中には、めちゃくちゃ稼いでいる人もおられるので平均賃金ではおかしなことになる。だからこれには納得。

この中央値がフランスと韓国で60%台、英国やドイツでも50%台なのに日本は46%しかない。そのため日本の最低賃金水準は国際的に見ても「差は縮まってきたが、まだ十分とはいえない」、これでは「日本は外国人労働者から選ばれない国になる」と指摘されている。

つい先日、経済同友会代表幹事の身も蓋もないぶっちゃけが話題になっていたけれど(これも後述するつもり)、この審議会長の発言は感情論でなく、客観的なデータを基にご自身の立場から淡々と指摘されているので、ぐうの音も出ない。
また、岸田前政権の目標を前倒しにした石破首相の「20年代のうちに全国平均1500円まで引き上げる」という目標についても、ちゃんと「単純計算で毎年90円上げる必要があり、ハードルは高い」とも述べられている。

そう、 ”ハードルは、かなり高い” と思う。

今年、最低賃金が全国平均で51円という引き上げになっただけでも中小零細企業の事業主からは悲痛な声が挙がる中(雇用される側は喜びの声だけれど)、毎年約90円の賃上げというのは、ハードルが高いというよりも正直現実感が伴わない。

まぁそれでも「できる」「できない」でなく、「やれ」ってことになるだろうし、そうこうしているうちに金利も上がる。これだと中小零細企業の倒産や廃業は増加の一途だろうな。
もちろんこれも問題だと思うけれどそれ以上に、本当にこれほど早いペースで最低賃金を上げ続けるとインフレが加速して止まらなくなるんじゃないか、と心配になる。

23日にも「食品スーパーが有名パティスリーを買収」というニュースをやっていた。あまり知られていないかもだけれど、一昨年の暮れにも同じくらい有名なパティスリーが M&Aで売却されている。
M&Aといってもいろんなパターンがあり、ぼくのように完全にリタイアする人もいれば、彼らのように大きな資本の傘下に入り子会社の代表としてやっていく場合もある。
彼らが後者を選択されたのは、今後の展開を考えてということもあるだろうし、スターシェフゆえに条件がそういったものだったのかもしれない。その辺りはわかりかねるけれど、これまで述べてきたように、ますます困難になる人材確保や最低賃金の上昇、物価高騰といった懸念を見越しての結果が、そういった決断の要因になったのではないかと想像する。
そう考えると、食べもの屋さんだと年商10億前後〜50億くらいの会社規模のM&Aは、今後もまだまだ続く気がするなぁ。

あっ、そういえば M&Aの話を書いていたのに、最低賃金の話になってた。
M&Aの話の続きは、また改めて後述しよう。

さて、日経新聞の記事の話に戻る。

この記事でぼくが興味深かったのは、タイトルよりもこちらの箇所。

最低賃金は年に1度、国の審議会が示す「目安」をもとに、各都道府県の審議会を経て引き上げ額を決めている。
(中略)
当初、国が示した目安は全都道府県で一律50円上げだったが、結果的に半数を超える27県で目安を上回る引き上げ額となった。例えば徳島県は84円、岩手県と愛媛県は59円の引き上げを決めた。人手不足や隣県との競争意識が背景にある。

2024年10月4日 日本経済新聞より抜粋

やはり、国の審議会が示す最低賃金は ”目安” なのね。で、各地方の審議会がそれ以上の金額に決めた、と。

事業主には頭の痛い問題だとは思うけれど、中小零細企業の経営者にとって本当の脅威は、こちらなんじゃないかな。
コストコ 時給 1500円

時給1500円の破壊力

「TSMC工場の立地やコストコの出店場所は局地的なものだから」と対岸の火事に捉えていると、好条件による応募者数の多さを認識した別の会社やお店の中にも「それなら、うちも」と相場以上の賃上げをするところが現れることも考えられる。

蟻の一穴

ぼくは地方の審議会と同じことがミクロ経済、つまり小規模な会社やお店の間でも起きると思っている。

つづく



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