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スランプ | 日日雑記 / Sep.19

「スランプである」と書きたいところだが、それは大いなる間違いだ。
下手くそにスランプはない。あるのは変わらぬ下手くそさか、それ以上の下手くそさだけだ。

とにかく、頭の中にあるものがうまく文字に置き換わらない。
これまでだって決してストレートに、スムーズに置き換わったきたわけではないが、先の見えないカーブが続く道で渋滞に巻き込まれたような苛立たしさがある。

「未熟者にスランプはない」と言ったのはプロ野球の故野村克也監督だった。
結果を残した人間だけが使うことを許される言葉であって、未熟者の言うスランプなど、ちょっとつまづいただけに過ぎない、と耳の痛い言葉を遺されている。

僕がスランプを公言できるのは泳ぐことぐらいのものだ。
泳ぐことについては「スランプを経験したことがある」程度なら言っても許されるんじゃないかと思う。
そしてどうやってスランプを抜けたか、その方法も。

未熟な人間が上達するために唯一必要なものは練習だ。努力と根性という言葉は役人と数学という言葉の次くらいに嫌いだけれど、残念ながら努力を除いて成長する近道はない。そしてスランプを公言しても許されるようになってからも、力量、技術を維持するにはまた努力が必要となり、スランプに陥ればさらに正しい努力が必要になる。
楽な道や近道はない。ありがたいことに。

幸い、読み、書き、さらに読み、さらに書き、とことん読み、とことん書くことが書くことのスランプから脱出するための努力になる。
存分に息が吸える分、競泳のスランプ脱出よりはるかに楽だ。
というわけで今日は小説を4冊読んだ。

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樹 恒近
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