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7月2日20:00~配信! ワンカメラによる120分配信ライブ「DubbingⅫ」について、 あらかじめ決められた恋人たちへ・池永正二が語る

「DubbingⅫ」は、シネマティックな音像を追求する彼らの真骨頂が発揮された、新たなライブ体験

 あらかじめ決められた恋人たちへのワンマン配信ライブ「DubbingⅫ」が、7月2日木曜日20:00~から三日間限定で配信される。

現状における配信ライブは、元々予定されていたライブが延期もしくは中止になった公演を無観客のネット配信に差し替えたものが大半であり、予定されていた日程はそのままに、生でパフォーマンスされるケースがほとんどだ。あら恋も、4月に出演予定であった『SYNCHRONICITY2020』、6月に出演予定であった『やついフェス』が中止(のちに両イベントともオンラインによる開催に切り替え)になったほか、発表前であったが、4月頭に新代田feverで配信ライブを開催する予定であったという。だが、緊急事態宣言により配信も中止となり、あら恋は下北沢CLUB Queで開催されたKoochewsenとのツーマンライブ(6月18日)からようやくライブ活動を再開。そして今回、差し替えではなくあら恋による主催イベントライブ「Dubbing」シリーズの最新形として、無観客の配信ライブを発表した。
 今回の配信ライブは、事前収録。新代田feverのステージではなくフロアに円を描く形でメンバーが配置され、120分に及ぶ演奏を、映像チーム・naoeikkaによるワンカメラの長回しによって収録されたものとなっている。鳴らされた音にはmix以外の編集は加えず、ライブ感を極力重視。一方で、映像のところどころに加えられたエフェクト処理により、「あら恋」らしいシアトリカルな質感を獲得しているのが特徴だ。ライティングチーム「LICHT-ER」によって多数持ち込まれた照明機材による光の効果も素晴らしく、配信ライブをひとつの作品・表現として捉えた新たなライブ体験を提供している。
今回の配信ライブによってあら恋が表現したかったことはなんだったのか。
あら恋リーダー・池永正二に、COVID-19以降の生活とその音楽制作、そして今回のライブ配信に至るまでの流れを電話で取材した。
(取材・文:森樹/写真:タイコウクニヨシ)

〈イベント詳細〉
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「Dubbing XII」
あらかじめ決められた恋人たちへ
映像:naoeikka
照明:阿部将之(LICHT-ER)
音響・MIX:小泉健

2020.7.2(thu) 20:00 ~
配信チケット ¥1,500
チケットをご購入頂きましたお客様は、生配信終了後準備が整い次第~7月5日(日)22:00までアーカイブ映像の閲覧が可能となります。
ZAIKOにてチケット絶賛発売中!
https://fever.zaiko.io/_item/327445

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INTERVIEW:池永正二
「長回しは映画好きには憧れなんです。相米慎二とかルベツキとか」


――ごぶさたしています。2月にアルバム『......』のリリースツアーが東名阪で開催されて、それからもう4ヶ月以上が経ちました。池永さんも自粛生活に入られたと思うのですが、どのような日々でしたか?

池永 こっちの生活が変わることはあまりなかったです。ふだんから一日中、自分の部屋で音楽を制作しているから。映画観たり音楽聴いたり、あと中島らもの本をずっと読んでた。やっぱり人間、こういうときは自分のルーツに立ち戻るというか、再確認できた。新発見もあり、今の状況とすごくリンクしている部分もあり面白かったです。

――なるほど。

池永  ……でも、ニュースや社会の空気感がどんどんシリアスになっていって、知らない間にストレスが溜まってたんやなっていうのは、この前のKoochewsenとのライブのときに気づいて。ドカーンとした音楽ってやっぱ必要だと思いました。

――劇伴制作など、仕事の状況はいかがですか?

池永 劇伴もライブも、延期になったものが多いかな。仕方ないです。

――さて、今回の配信ワンマンですが、『DubbingⅫ』として開催されることになりました。

池永 そう。元々、4月の上旬くらいに新代田feverで(配信の形で)ワンマンやりましょうか、という話になっていて。それが延期になり、中止になりで。その頃から、映像制作のnaoeikkaとは話をしていて。

――配信ワンマンと言えば生が多いですが、今回は事前収録ですね。

池永 naoeikkaとも、長回しでやりたいというのがあったから、万が一のトラブルに備えて。

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――ノーカットにするのは何か理由があったのですか?

池永 映画でカット点の分からない長回しは主流になってきてますが、ライブ配信での長回しはあまりないので。それに長回しは映画好きには憧れなんです。相米慎二とかルベツキとか。

――コーチェラ・フェスティバル2019のトリ、チャイルディッシュ・ガンビーノのライブ映像も念頭にありましたか?

池永 あれは生で配信観て衝撃受けて。ステージインするシーンもなしで、いきなりドナルド・グローヴァー(チャイルディッシュ・ガンビーノの本名)の歪んだ表情の寄りから配信が始まって、もう映画か舞台を観てるみたいだけど、やっぱりライブで。そのライブと物語の間っていうか、そのどっちもっていうか。ライブに映画や舞台のような物語性を取り入れたいし、映画にライブ感も取り入れたい。それはあら恋がずっと求めていたものでもあるから。

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――照明も特別なものを使っているみたいですね。

池永 「LICHT-ER」というチームが照明をやってくれました。普段は舞台の照明をやられている方たちで、光で物語を作ってくれました。最初は水の中にマイクを入れる水槽スピーカーを使おうかという話もあったけど、合わなかったので止めたり。そういう判断も含めて現場で状況を考えながら作ってくださるチームでした。ほんとむちゃくちゃ素晴らしかったです。

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――演出面では何か考えていたことはありましたか? 実際の映像では、演奏するメンバーと、ライブハウスという箱そのものにスポットが当たっていて、かなり感動的ですらありました。

池永 ひとつアイディアとしてあったのが、天井からサンドバックを吊るして、それを本物のキックボクサーの人に叩いてもらおうというもの。格闘家とバンドのセッション。重いワンパンチ的なもの。そのサンドバッグに打ち込む打撃音をマイクで拾ってDUBしたり響かせたりしてからベースのフレーズに入って、バンド演奏に流れていく……っていう演出を考えていました。ライブの配信で、格闘家のサンドバッグ打ちから始まるとかカッコいい! ヤバイ! って実際進んでたんだけど、サンドバックを吊るすのがライブハウスの構造上どうしても難しく、元プロの方だったのでパンチの負荷もすごいことになりそうで、いろいろあってナシになりました。また機会があればやりたいです。

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――先日収録されたライブ映像を少し拝見しましたが、音は編集せずそのままですが、ところどころエフェクトが加えられていますね。

池永 ライブ感は保っておきたいので、音はミスしても修正せず。音のmix、むちゃくちゃ良いですよ。映像はカットを割ったり時間軸をいじくる編集はなし。配信時間はミュージシャンが演奏している時間と全く同じ尺になります。生配信と同じです。失敗しても撮り直さずそのまま配信。時間とは関係のないエフェクトは照明とかと同じ演出になるので、かけました。……ただ、撮影した映像にトラブルがあって、4分くらい映像が破損してしまったところがあります。編集して誤魔化すこともできたのですが、そこは4分破損したままガッツリそのまま配信させていただきます。すみません。。。。音だけで楽しんでもらえればと思います。

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――まだまだ予断を許さない状況が続きますし、以前のようにライブハウスにお客を入れて開催できるライブも難しい状況です。

池永 まだまだね。だからできることからやっていきたい。COVID-19も含めいろんな問題が絡み合って、近所の人や知人と話すときも、「NG」の話題や相容れない内容が増えたように思う。少し他人と意見が違うとヒステリックになる人も多くなってきてるのかな。だから話を聞く、受け入れる、言いたいことは言う。そうやってカラッとスカッとやっていきたい。ネトネト、グチャグチャしたのはやっぱ良くない、とやっと気付きました。僕らはインストなので、言いたいことを音に鳴らしています。言葉ほど直接的ではないので、なんだか伝わってるような伝わってないような、そもそも伝えたいのか伝わったら恥ずかしいような嬉しいような、僕の思ってたのと逆に伝わってたり、思ってた以上に豊かに伝わっていたり、つまりそれぞれのイマジネーションの領域なので、好きなように楽しんでもらえたら嬉しいです。そう感じたらそれがすべてです。あと、音、とりわけ低音が良い感じなので、ヘッドフォンかスピーカーで大きい音で楽しんでもらえたら。2020年はもう半分を過ぎてしまいましたが、これが東京の現状、あら恋の現状。ここから何か作り出していきたいです。

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PROFILE:あらかじめ決められた恋人たちへ/1997年、池永正二のソロ・ユニットとして誕生。現在は池永正二(鍵盤ハーモニカ、エレクトロニクス)、劔樹人(ベース)、クリテツ(テルミン、パーカッションetc)、オータケコーハン(ギター)、GOTO(ドラム)、ベントラーカオル(キーボード)、石本聡(DUB PA)の7名に、PAを加えた8人がコアメンバー。池永は映画、実写ドラマの劇伴制作を幅広く手掛ける。近作は、7月31日から公開される松本穂香主演の映画『君が世界のはじまり』。


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