「セルフケアコミュニティ『いつでもおかえり』アプリリリース記念 対談配信 イベントレポート
はじめに
株式会社祭ではセルフケアコミュニティ「いつでもおかえり」を運営しています。これまではSlack上にて運営していましたが、ユーザーの利便性やサービス向上のためにこの「いつでもおかえり」のスマートフォンアプリを開発し、アプリ版に移行しました。
現在はテスト版をテストユーザーの皆様にご協力いただきサービス体験の向上のため日々改修・改善中ですが、近日中に一般公開版をリリースする予定です。(追記:現在はリリース・公開済み)
しかし、さまざまなコミュニティーサービスが立ち上がる中で、より多くの皆様に「いつでもおかえり」を使っていただくためには「いつでもおかえり」がどのような特徴を持ち、どのようなユーザーにどのような経験をしていただきたいのかを丁寧に説明していく必要があると感じてます。そこで、一般公開版のリリースに合わせて、2022年2月15日に「いつでもおかえり」のリリースイベントを開催しました。
このイベントでは、さまざまな経験を持ち、ソーシャルグッドな活動を行っている皆さまをお招きし、弊社代表の清水舞子とのリレー対談を行いました。今回はその模様をレポートいたします。
オープニング・「いつでもおかえり」の説明
まずは弊社代表の清水より簡単な挨拶と、「いつでもおかえり」について以下の通りの説明がありました。
清水「『いつでもおかえり』は自分が投稿したり他のユーザーの投稿を通じてみんなの気持ちを受け止め合う匿名かつ基本無料でご利用いただけるオンラインコミュニティで、投稿を誰かに否定されることなく、誹謗中傷や批判がないよう安心な空間を維持できるように設計してます」
説明の後、リレー対談がはじまりました。(ゲストの詳細はこちらをご確認ください。肩書はすべてイベント開催時のものとなります)
鶴田七瀬さん(一般社団法人ソウレッジ代表)
鶴田「少しずつ性教育のへ認知が上がってきていますが、子どもを対象にした『性教育の第一歩』へのリーチの難しさに課題を感じています。また、最近話題になっている緊急避妊薬ですが、若者にとっては潜在的なニーズもあるはずなのですが、価格が高くて手が届かなかったり、あまり知られていなかったりという問題もあります。そこで、現在、クラウドファンディングを進めています」
清水「鶴田さんの活動はすごく勇気がいることだと思いますし、すごく尊敬しています。私もクラウドファンディングを応援しています。鶴田さんからみていつおかはどのようなものだと思いますか?」
鶴田「このような活動をする中でも『セルフケア』がとても大事になっている。セルフケアをするためには自分の問題を話す力、説明する力がとても大切になってきます。いつでもおかえり、自分の言葉を出す『第一歩』ができる場所にしてほしいです」
清水「いまのインターネットで自分の心を安心して吐き出せるかというと、すごく厳しい言葉が飛び交う場になっています。これは『自分の言葉』が受け止められていないという思い込みから言葉がとがるところがあるのではないかと思っていて、ちゃんと受け止める事ができる関係性が作れるならいいんじゃないでしょうか」
鶴田「いま、メンタルヘルス関連のビジネスが増えてきていますが、お互いのケアを行う上でその関係性が一方的な憂さ晴らしになったり、相手の感情を搾取することになることもあるという問題が明らかになりつつあります。そこをどうするかという課題はあると思います」
清水「ネット上でケアをするためには、心の置き場所がちゃんとあることが必要なんですね。いつおかをちゃんとそういう場にできるように運営していく必要性を感じました」
風間暁さん(保護司・文筆家・写真家)
清水「風間さんとは以前から友人で、辛いときに何度も励まされました。いつもありがとうございます。いまはどのような活動を行っていますか?」
風間「今の現在の大きな活動としては、薬物依存症の予防教育に関する学生たちへの出張講座などがあります。その活動では「薬物はダメ、ゼッタイ。」という方向性ではなく、薬物依存症という脳の病気があること。また、逆境体験などの背景により薬物を使用することが「自己治療」である場合もあることを、当事者である私の体験談を通じて伝えています。正しい知識とともに使用のリスクを伝えつつ、回復できる病気でもあるのだというスティグマの是正も行なっています」
清水「依存に関する啓発では『ダメ、ゼッタイ。』というのはだめだという話をよく聞くようになりましたが、それはなぜでしょか?」
風間「生きていく上では様々な依存に陥ることがあって、薬物依存はその一つです。それを『ダメ、ゼッタイ。』としてしまうと、使用してしまったときに自分から相談できなくなり、苦しみがますます強まり、依存状態が強化してしまうことがあります。だから、使用を全否定することではなく、依存症になったらどう脱却できるかという知識を広めることが大切なんです」
清水「風間さんにはすでにいつおかのアプリをインストールして使っていただいていますが、どんな感想を持っていらっしゃいますでしょうか?」
風間「使ってみて結構すごいことをしているなと感じています。緩やかなつながりが保たれる設計になっていますよね。新型コロナウイルスの流行などでますます外に出るのがしんどい人が多くなっていますが、依存症者が集うような自助会はいつでも開いているわけではないです。自助会でなにかを伝えたいというような瞬間にいつおかにさっと投稿できるような使い方をしてほしいですね」
清水「夜中などに急に辛くなったとき、『今よしよしが欲しいんだ』というときに吐き出す場として使ってほしいです」
横山北斗さん(NPO法人Social Change Agency 代表理事/社会福祉士)
横山「昨年、国が孤独孤立対策の一環で社会保障制度や相談窓口をチャットボットで案内するウェブサイトを作成したのですが、私はその提言と実際の作成にも関わりました。これは社会保障制度はあるけれど、必要な人に届きづらい現状があるからです」
清水「私もうつ状態が辛いとき、社会福祉の制度などはとてもわかりにくくて福祉や社会保障につながることの難しさを体験しました。このようなハードルを乗り越えるためにはどうしたらいいでしょうか?」
横山「一方的に伝えられるだけでよくわからないことが多いですよね。信頼できる人に話を聞いてもらう中で情報をもらい、医療に繋がったり福祉サービスへ踏み出しやすくなったりするように感じます。いつおかがやろうとしていることが『つながる』ということとリンクすると思います」
清水「私もうつ状態のとき、そこから抜け出すきっかけになったのは人を介して『つながること』ができたからです。辛い時にいつおかのようなアプリが手元にあることで『つながっている』ということを信じられるのが大事だと思います。横山さんから『いつおか』はどういうアプリに見えているか教えてほしいです」
横山「私は子供のときに病気になり、すごく孤独感がありました。でも、ゲームのオンラインチャットルームで放課後に集まって話したりすることでその孤独から救われました。まさにオンラインコミュニティに救われたんですね。このように孤立している人たちの行き場のない気持ちの行き先の一つとして、『いつおか』に可能性があると感じています」
青木翔子さん(認定NPO法人PIECES理事)
青木「PIECESは子供の孤立を解決するためのNPOです。子どもを直接支援するというより、大人の方々がつながって子どもが孤立しない環境を構築するための活動を行っています。」
清水「PIECESの活動は前から尊敬しています。『いつおか』はオンラインでのつながりを作ろうとしていますが、PIECEはオフラインのつながりの目を細かく作っているので、その活動量がすごいなと感じています。青木さんはどのような社会を作りたいと考えていますか?」
青木「身体が傷ついて怪我をすることがすることがあるように、だれもが心に傷つくことは当たり前です。だから、それをお互いに癒やしあえる社会になってほしいし、そうなるように活動を行っています。親密ではないけど、緩やかなつながりがある人に癒やされることもありますよね。いまはいろんなツールがあって、昔の地域の繋がりとは異なるさまざまな層での繋がりが生まれ、『癒やされる』機会が増えています。いつおかもまさにそういうものの一つだと感じています」
清水「私にも辛いときに話を聞いてくれる人がたくさんいて、コミュニティの大切さを感じました。その上で『癒やされるコミュニティ』を作る上で大切だと思うことは何でしょうか?」
青木「与える/与えられるという相互の関係性が大事だと思います。いつおかでは『癒しを与える』『ケアを与える』というより与え合っている印象があって、関係性が一方的に硬直しないことで居場所として在りやすいと感じています」
清水「与えるというのは大事で、いつおかでもスタンプだけでも相手にメッセージを送ることができます。その「スタンプを送る」ということだけでも与えるという実感することができるし、スタンプを送られる方も嬉しいですよね」
青木「そのような『送りあう(贈りあう)』という行動を行うことで心が楽になることもあると思います。いつおかはそういう緩いつながりで対等であり続けられるようにしてほしいですね」
【追記】青木さんが事前に作成していたメモを共有します
・今の社会には「感じた違和感を話せる場がない」が、一方でネットでは「親密であるか、開放的過ぎる」という感じがある。ちょうどその間にあるものが必要である。いつおかはそのような距離感であってほしい。
・デジタルで人間の関係性がアップデートされて地縁などから自由になったはずなのにSNSごとの暗黙のルールがあり、そのルールに乗らないと会話ができない不自由さがある。ただ、現代は複数のコミュニティのレイヤーをつくれるメリットがあり、いつおかは「少し優しくて癒やされたい人のSNS」という立ち位置でいいのではないか。こうやって中間的な紐帯は多層化していくと思う。
・「居場所」はコミュニテイになりがちだが、コミュニティになってしまうとそこにアイデンティティが染ま った人が増えすぎて外の人が入りづらかったり、退出しにくくなってしまうことがある。「親密じゃないけど、安心できる、愚痴を話せる」という空間も必要なのではないか
岡琢哉さん(児童精神科医・株式会社カケミチプロジェクト代表取締役)
岡「よくクリニックを開院しないのは何故と聞かれますが、クリニックは個人事業主での開院となり、医師個人の裁量が最も強くなってしまい課題解決できる幅が狭いんです。だから、会社を立ち上げて事業として運用した方が解決できることの幅は広がると考えたんです。また、株式会社として運営することで、新規事業の立ち上げスピードをあげたりや複数事業の持続可能性につながってくると感じてます」
清水「持続可能性についてもビジネスで行ったほうが確実ですよね」
岡「ただ、今のSNSは広告収入のために『見てもらうこと』が大事になっているので、すごく感情を動かしたり怒らせたりすることが戦略になっている。そうでないオンライン上のコミュニティを作りつつ収益を作るのはかなり大変ではないでしょうか」
清水「現状では、ユーザーが増えれば増えるほど広告収益が増加するので、とにかく人を増やそうとするSNSがほとんどです。いつおかの事業戦略はそうではなくて、心理的安全性を深めるための一部機能を有料化するというモデルをとっています。だからいたずらに中毒性を持たせたり、感情を煽って人を増やす必要がないようにしています。既に有料機能を使ってくれているユーザーさんも出てきました。一方で、「ゆるいつながり」をどう維持するかという課題はたしかにあります」
岡「あまりに拡散しすぎると言葉や気持ちを伝えることが難しくなるし、かといってユーザーが増えないというのも違いますよね。」
清水「いつおかを実際に使ってくれた人が「これはいいよ」と2〜3人を誘ってくれるような流れができると、我々がお金を払って広告を打ちユーザーを連れてくるよりも、ずっと効果的なんです。それに、いつおかを実際に使ってくれた人いつおかにぴったりな人を連れてくれたほうが、穏やかな繋がりを維持できると思っています」
岡「今までの話を聞いていると、いつおかは「吐き出してよかった」という価値が大事になるように感じています。そのためにはユーザーがあまり労力をかけず、リテラシーがそれほど高くなくても使える設計にしないといけない。それを頑張って欲しいですね」
株式会社祭代表 清水の振り返り
今回のイベントは、延べ200人以上の方に訪れるという大盛況の中で終えることができました。ご多忙の中ご登壇してくださったゲストの皆様、聞いてくださった皆様、本当にありがとうございました。
イベントの中で、ゲストの皆様はさまざまな言葉で「今後、様々な場所や形態で『自分が居ても良い場所』が広がっていくだろう」ということをおっしゃられていましたが、そのとき、『いつでもおかえり』がその選択肢のひとつとして選ばれたらとても嬉しいです。
現在はβ版となりますが、『いつでもおかえり』のアプリをまだ入れていない方はお試しにインストールしてもらえたら嬉しいです。また、既に入れられてる方は、思い出した時に開いてくれると(帰ってきてくれると)とても嬉しいです。
アプリはまもなく一般リリースを行いますが、それに向けて急ピッチで改善を続けていますし、リリースの後もアプリを絶えず良くするために頑張っていきます。今後とも『いつでもおかえり』と株式会社祭をよろしくお願いいたします!
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アーカイブについて
このイベントのアーカイブはこちらで聞くことができます。(音声のみとなります)
本件についての問い合わせ先
本件について問い合わせ等がございましたら、「いつでもおかえり」公式アカウント、またはsupport@matsuli.jpまでご連絡ください。
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