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【和訳/解説】 Elli Ingram - Growing Pains


イギリスのソウル/R&B歌手 Elli Ingram による新作『Bad Behavior』より『Growing Pains』の和訳をしてみました。

2つ目の和訳です。
「この曲の次はこの曲を和訳して…」などを事前に考えることなくフワーッと始めたため、なかなかに今回の選曲は迷っていたんですが、素直に最近一番聴いているこの曲にしました。

そんな今楽曲ですが出逢ったのはつい最近、6月末に1ヶ月近く溜めていた新譜の山を一気に聴いていた時のことでした。
その日は何枚も新譜を聴いていた為、正直他の楽曲についての細かい記憶は一切無いくらいなんですが、この曲に対する「いい歌だな」という感想だけは鮮明すぎるほどに憶えています。
一見するとありきたりな普通の感想なんですが、洋楽を最初に聴く際、基本的に歌や歌詞は度外視してリズムや全体の雰囲気だけを聴くようにしている私(リスニングのように身構えた状態で音楽を聴くのが嫌だから)にとって、よりも先にに感動したのは恐らくこれが初めてのことでした。
「歌詞を見ていないのに歌詞に感動した」というか、とにかく何とも形容し難い不思議な体験でした。
深みのあるローファイなR&Bと、ソウルフルでありながらも喪失感を感じさせる彼女の圧倒的な歌声とが「言葉の壁」を越えるほど強く絡み合い、歌詞に込められた彼女の想いを表してくれていたのかなと、今となってはそう思います。

私が出会った中でもトップクラスに繊細で力強く、そして何より美しい一曲です。


後方に解説・注釈/Spotify, Apple Musicのリンクも載せておりますので、ぜひご覧ください。


※堅苦しい訳やコーラス部分の和訳を繰り返し使うなどの形式が私自身あまり好きではないため、一部噛み砕いた表現や意訳を含んでいます。
予めご了承ください。

歌詞

Do you remember
The days we'd stay out in the streets and play
'Til mum would say it's time for tea?
It was so easy
Why did it have to change?
I hate these growing pains
'Cause these days, all I do is let you down
And all I want to do is be around

Do you remember
The days we'd get minimum wage and waste it all away?
Sat in the dark
Down Happy Valley Park
Drinking cans
Holding hands (Ooh, ooh)
Chain smoking all your fags
But I don't see you 'round no more (I don't see you)
I hope you're happy like before

Why does it have to change?
I hate these growing pains (Know that I hate 'em)
Wish I could go back home and start it all again

Do you remember
When we were all under one roof and (One roof)
We had to share a bathroom and (Bedroom)
Even had to share a bedroom? (Sharing a bedroom)
We could have been anywhere, but I was with you (Know that I was)
And now I'd go anywhere just to see your smile

Time, it moves so fast
I'm dreamin' of the past
And the way we used to laugh was the sweetest thing (Sweetest thing)
Days are getting shorter
Nights are getting longer
Why'd it have to change?
Why does nothing feel the same?

Why does it have to change?
I hate these growing pains (Know that I hate 'em)
Wish I could go back home and start it all again (Know that I wish I could go back home)
Why does it have to change?
I hate these growing pains (I hate these growing pains)
Wish I could go back home and start it all again

Wish I could go back home and start it all again...

和訳

憶えてる?
二人で街中を歩き回ったあの日々
「帰って来なさい」って言われるまで一緒にいたあの日々を
あなたと一緒だと自然体でいられた
どうして変わらなくちゃいけなかったの?
私はそんな「青春の痛み」が大嫌い ※1
近頃の私はあなたを落ち込ませることしかできてないの
本当はそばに居たいだけなのにね

憶えてる?
大したお金もないのに迷わず2人のために使ってたあの日々を
暗がりの中で座って話したり
ハッピーバレーパークを散歩したり
あなたと手を繋ぎながら
缶に入った飲み物を飲んで
煙草の箱を二人で空にしたことだってあった
でもそんなあなたの姿はもう無いの
幸せを願うこと、それが今の私の精一杯

どうしてこんなにも変わらなきゃいけないの
「若さゆえの苦しみ」なんて大嫌い
あの場所に戻ってやり直せたらいいのに、なんて願ってる

憶えてる?
同じ屋根の下
一緒にお風呂に入ったり
ベッドの中でただ時間を潰していた時のこと
二人で居られるなら場所なんて気にしなかったよね
あなたの笑顔のためなら何処へだって行くのに

時間は過ぎ去っていく
夢であなたとの過去を思い出す
私たちのくだらない笑い話、あれより美しいものなんてないの
日は少しずつ短くなって
夜はどんどん長くなっていく
どうしてこんな風になってしまったの?
どうして何もかも昔みたいに感じられないの? ※2

変わりたくなんてない
「青春の苦しみ」なんて要らないの
二人で振り出しに戻ってやり直せたらいいのに
変わらなくちゃいけない?
私は「若さゆえの痛み」なんて求めてない
あなたとやり直せればそれでいいの
それでも変わらなくちゃダメ?
「痛みを伴う成長」なら要らない
あなたともう一度やり直すことだけが私の願い

どうしてこうなったんだろう
大嫌いなこの痛みはどんどん酷くなっていく
ずっと願ってるの、やり直せたらいいのにって

もう一度やり直そう、二人が出会ったあの場所から


解説・注釈

※1 『Growing Pains / 若さゆえの痛み
タイトルでもあり、コーラス部分で何度も繰り返されるこのフレーズ。
思春期や青春時代特有の(主に恋の)悩みや痛み」という意味で使われる表現なんだそうです。
今楽曲内で描かれている過去への未練や、そこに縋る彼女の姿、これらは恐らく誰しも一度は経験する"痛み"であり、大人になり別れを多く経験していくうちに"慣れていく痛み"でもあります。
彼女自身、今の自分が苦しんでいるのはそんな「若さゆえの痛み」であることは理解していて、だからこそそれを「嫌い」だと言い切ることは自分自身が未熟であることを認める行為になる得ることも分かっているはず。
ですか、彼女はその上でそれが「嫌い」だと言い切っています。
自分が幼く未熟であることは百も承知で、ただひたすらに「あなたともう一度やり直すこと」だけを望んでいるのです。
清々しいまでに愚直で、これ以上ない程に美しいこの想いを表す上で『Growing Pains』以上の表現があるでしょうか。

※2 『どうして何もかも昔みたいに感じられないの?
この曲のバースは全て「覚えてる?」というフレーズから始まります。そして、その後に続くのは決まってあなたとの思い出についてです。
ここから、彼女が「あなたという存在」と同様に「あなたと共有した時間」や「あなたといた頃の自分」も強く求めている、ということが分かります。
手を繋いで散歩したこと、一緒にお風呂に入ったこと、くだらない話や遅くまで一緒にいたこと…
特別なことは何一つありません。
それでも彼女にとってはかけがえのない思い出であり、大好きな時間だったんです。
でもこれらは全て、あなたが居なければ味わうことのできないもの。あなたが隣に居ない今、あの頃みたいに感じられるものは何もない。
ここでの『どうして?』はそんな現状への嘆きから来ているのではないでしょうか。

最後に

いかがでしたでしょうか。
この曲を筆頭に新作『Bad Behavior』には素晴らしい13曲が揃っています。
ぜひアルバム全体も聴いて頂けると嬉しいです。

今回も拙文をお読み頂きありがとうございました。
では。

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