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『ONE PIECE FAN LETTER』のシナリオが刺さりまくった件

※こちらの記事は『ONE PIECE FAN LETTER』、『ONE PIECE novel 麦わらストーリーズ』について言及しています。ネタバレにご注意ください。

2024年10月20日(日)に25周年を迎えたTVアニメ『ONE PIECE』。

その記念作品として放送された『ONE PIECE FAN LETTER』を遅ればせながら視聴しました。

その内容、特にシナリオにものすごい感銘を受けたので、興奮のままに筆を取っています。

(『ONE PIECE FAN LETTER』の詳細はこちら)


一般人が見つめたルフィたち


本作品は、麦わらの一味を一般人の視点から描いた短編小説を原案としたものです。

主な登場人物として、ナミに憧れる少女、マリンフォード頂上戦争に参戦した海兵の兄弟、そしてシャボンディ諸島のアルバイト書店員などが描かれています。

麦わらの一味が2年間の修行期間を終え、シャボンディ諸島で再集結した際の、一般人たちの反応や行動が丁寧に描写されてます。この世界のほとんどは、ルフィたちみたいに海賊じゃなくて、フツーに暮らしてる一般の人なんですよね。ワンピースなんて追い求めてない人たち。


原作小説からの進化

原案の小説は私も読んでいたのですが、アニメ化にあたって改変点がいくつかありました。小説も面白かったものの、アニメでの改変点が個人的にすごい好きだった!

まず、主役的ポジションである「ナミに憧れる人物」の性別を、男性から女の子にしたところ。

この変更によって、現代のジェンダー観がより反映された気がしました。小説版で、主人公からみたナミは「会いに行けるアイドル」的存在だったのですが、アニメ版では主人公のロールモデル的な存在になっています。

というのも、ナミは悪魔の実の能力者でもなければ、脅威的な怪力も戦闘力も持ってないんですよね。

でも、知恵と機転の良さ、航海のセンスという「自分の武器」を持ってる。ここに憧れる女の子、という図がよかったです。等身大の憧れと、自分らしさで人生を切り拓いていくって希望が見えた。

そして、マリンフォード頂上戦争に参加した海兵の兄弟。
これも良かったですねー!刺さりました。

小説版では、兄の方が海兵としての階級が上で、頼れる兄貴と手のかかる弟という感じ。

これがアニメ版だと立場が逆転しています。
実直だけど不器用な兄と、要領が良くて兄より先に出世している弟。

弟に立場を逆転されていることで、兄としてのジレンマや葛藤が生まれやすい状況になりましたよね

あと、損しがちな兄(姉)と世渡り上手な弟(妹)って構図が、きょうだい間あるあるで視聴者の共感を誘うのでは?……と、要領のいい妹を持つ私としては思いました(笑)

「群像劇」の魅力

また、本作品の大きな特徴として、複数の視点による群像劇としての構成があります。

それぞれの登場人物のドラマが交差しながら話が展開していく様子が、人生における偶然の出会いや関係性を表しているみたいでした。
たくさんの一般人の物語が交われば、ひとつのドラマが出来上がる……って構成がエモかった

また、組織の中での葛藤や、単純な正義では割り切れないジレンマなど、大人になったからこそ身に沁みる展開にもしみじみしました。

世代を超えて響く『ONE PIECE』

『ONE PIECE』という作品の魅力のひとつは、長期連載ゆえに世代を超えて異なる楽しみ方ができること。

子供の頃にルフィに憧れていた読者が大人になり、また違う視点で作品を楽しめる。さらには(物語が続くうちは)次の世代に作品を伝えていくことができます。

私自身、視聴しながら「現在の自分」と「6歳の自分」が一緒にいるような感覚になりました。ナミに憧れて寒い冬の日にミニスカートを履いて学校に行った、小学生の頃の自分も。しばらく『ONE PIECE』から離脱してた高校生の自分も。

読み返すごとに新たな発見のある作品づくりは、創作における一つの理想形、と言えるかもしれません。


おわりに

『ONE PIECE FANLETTER』で脚本を担当した豊田百香さんは、現在放送中の「SPECIAL EDITED VERSION 『ONE PIECE』 魚人島編」でも脚本を担当されているとのこと。

魚人島編は「種族差別」というセンシティブなテーマを描きつつ、物語の重要なワードが連続して出現する大切な章。新編集版でどんなふうに変わっていくか楽しみだなぁ。


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糸崎 舞|カルチャーライター
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