26世紀青年
26世紀青年(2005年:アメリカ)
監督:マイク・ジャッジ
配給:20世紀FOX
出演:ルーク・ウィルソン
:マーヤ・ルドルフ
:ダックス・シェパード
:テリー・クルーズ
まず、この邦題タイトルつけたヤツに説教したい。狙いすぎだろう。「20世紀少年」×「WALL・E」÷2=「26世紀青年」!?って内容はまったく違う。まぁこれくらいのミスリードはB・C級洋画の日本配給ではよくあるが。
資料室勤務の極々平均的な軍人が娼婦と一緒にコールドスリープの被験者になるが、一年のはずがトラブルで500年後の26世紀に目覚める。目覚めた未来は賢い人材がいないバカばっかりの国で、彼らは過去に戻るため奮闘するが…という20世紀FOXが大得意のSFコメディ。
未来の街はゴミだらけで山のように積みあがっており、ゴミの雪崩が起きても住民は気にすることもなく低俗なテレビ番組を観てキャッキャッと笑い、口を開けば頭の悪い暴言ばかり。誰もメンテナンスなんかできないからインフラや自動車、機械類は薄汚れて損壊や故障、動作不良を起こしまくっている。病院に至ってはドクターからして心もとない様子で、警察や刑務所はちゃんとした規律もない。大統領は元プロレスラーのマッチョだが、演説にはまったく具体策はなく、議場に銃火器を持ち込んで乱射する始末。閣僚も仕事できるような人選ではない。
世の中も荒唐無稽で、人間が好きだから植物も好きだろうと水に代えてスポーツ飲料を畑に散布したり、大きいことで有名なコストコが更に超巨大な街のように広がっていたりと、無能すぎるにもほどがあると笑ってしまう演出が多い。なおコストコ内には風俗があり、スタバも男性向け風俗店と化していたのには更に笑ってしまった。
そんな中で平均的な能力しかない主人公は、世界一の天才と認定されてしまって無理やり国政に引っ張り出されるのだが、最初は無能の昼行燈にしか見えなかったルーク・ウィルソンが、次第に頼もしく見えるようになる。ストーリーが進むにつれてどんどん表情が冴えて見えた。みんながバカだから対比がすごい。
また一緒にコールドスリープにされた娼婦、マーヤ・ルドルフが目覚めた後、早速男を手玉に取って金をせしめたのには、やっぱりこういう時は女性の方がたくましいなぁと感嘆してしまった。
キャスト全員演技だろうけど、とにかくバカになり切った、突き抜けた演技が観ていて笑ってしまう。特に最初に主人公と関わった弁護士、ダックス・シェパードのバカっぷりは清々しいほど堂に入っている。もう顔見ただけで「あ、こいつバカだ」と思わざるを得ない。テレビの低俗な番組を観てゲラゲラ笑っている姿は弁護士という知的な職業を生業としている人物にはまったく見えない。
大統領役のテリー・クルーズが生き生きしていた。強面なのにコメディ好きなんだろうなと感じた。
これ、いわゆる1960年代に提唱されたr-k戦略説が下地にあるらしく、賢い人間たちが自身の生きがいや境遇などを優先して子作りを控えた反面、知能の低い人間たちは本能的に子作りしまくったため、世の中には自然と知能の低い人間の子孫が増えて続けて、賢い人間は淘汰されていったという、ある意味ユートピア、本当は逆ユートピア状態となってしまったと思われる。知能の低い家庭の家族系統樹がカオスになって広がっていくのにも笑ってしまった。
と、今まで散々に語ってきたが、SFコメディは現代社会に対する痛烈な批判だと思っている。同時に今のアメリカの病み具合を表しているようにも感じた。安いセックスとヴァイオレンスをパッケージングしたコンテンツやエンタメを大量生産し、その場限りで楽しめればいいという人たちに対してのアンチであり、自分たちの権益を保守して、社会に何も貢献しようとしない一定層へのアンチとも取れる。
視聴後、この世界での日本はどうなってるのか想像してみた。内向的な各様々なヲタクたちが引きこもった世の中になってしまいそう。そんな自分も映画ヲタクとして缶ハイボール片手にモニターの前でゴロゴロしている気がする。