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【エッセイ】6歳児ジェラピケデビュー

先日、娘と買い物に行った。

用事を済ませ、帰ろうとしたときに私と娘の目はある店に惹きつけられた。

ジェラートピケである。


ジェラートピケといえば二十歳そこそこで小金持ちの女の子が、セルフォードのワンピースを脱いでローラメルシエのボディクリームを塗った後に着るルームウェアブランドである。

偏見が入っていて申し訳ない。

少なくとも毎日ドタバタのミドサー子持ち主婦の私にとっては別世界の店だと思っていた。


たまたま通りかかったジェラピケは大賑わいだった。

人だかりは覗きたくなるのが人間の性分である。

私たちが人山の向こうを覗き見ると、なんとそこにいたのである。

私たちの愛するポケモン、ヤドンが。

そう、ジェラピケがポケモンスリープというゲームとコラボしたルームウェアを発売したのだ。


私たちはその人だかりに突進した。

何を隠そう、私はヤドンが好きである。

まぬけポケモンの二つ名の通り、まぬけな顔をしていてとてもかわいい。

ピンク色をしているところもなおかわいい。

しっぽが甘いという設定なのもこれまたかわいい。

娘が大のヤドン好きに育ってしまったのは、ヤドンの英才教育を施した私の影響だろう。

娘はヤドンのぬいぐるみリュックを所持し、しょっちゅうおもちゃのツナ缶を食べさせてかわいがっているのだ。

祖母にヤドンを変な顔と言われたときに号泣したくらい、彼女はヤドンを愛している。


店内には、ヤドンの着ぐるみめいたルームウェアが飾られていた。

フードには丸い耳がつき、ショートパンツにはしっぽまでついている。

これを着たら誰でもヤドンになれるという代物である。

なんてかわいいのだ。

かわいさに衝撃を受ける私の隣で、娘は目をきらきらさせて「ほしい……」と呟いた。


とは言ってもあのジェラピケだ。

間違いなく高価だろう。

おそるおそる値札を見ると¥17,820と書いてある。

いや無理だ。

子どもの部屋着にかける金額ではない。


ずるい私は娘に諦めてもらおうと思った。

「これ誕生日に欲しいって言ってた宝石箱が3個買えるくらいの値段だよ?」

「大人の女の人向けのサイズしかないよ?」

「部屋着だからどこにも着ていけないよ?」

しかし一貫して娘は諦めない。

欲しがりの娘はいろいろなものを欲しいと言うが、本当に欲しいものに対する反応は違う。

目がまず違うのだ。

何を言っても諦めない。

自分の貯金を使ってもいいから買って欲しいとまで言い出した。


私は考えた。

確かに高価だ。

でも限定商品ですぐ売り切れてしまうであろうそれは、後になって買うことはできない。

娘の本気度は見て取れる。

ここで我慢させることよりも、応えてあげた方が娘の成長にとっていいのではないのだろうか。

それに、妥協したものを買うよりもずっと大事にしてくれるだろう。


私たちはふたつ約束をした。

一つ目は半額を娘の貯金からもらうこと。

二つ目はパパに値段を内緒にすることだ。

そしてヤドンのルームウェアは娘のものになった。


あれから数日間、娘は毎日ヤドンのルームウェアを着て過ごしている。

背中にヤドンのリュックも背負って、日に何度も「ヤドンが来たよ~」と言って私にヤドン姿を見せに来る。


半額もらうといったのはただの念押しで、実際には何ももらう気はない。

6歳児に何でもない日なのに20000円近いものを買ってあげるなんて、私は娘を甘やかしているかもしれない。

ばかな母親だなと自分でも思う。

でも、毎日るんるんとしてルームウェアを着る娘を見ると後悔はない。

本当に欲しいものを買ってもらって大事にしたという経験が、娘にとって大切な思い出になってほしいと願っている。











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