【3つの事例で考える】GPT-3を事業に組み込む方法
プロンプト系AIの流行
Stable Diffusionをはじめ、様々な画像生成AIが世間を賑わせています。
日本では、こうした画像生成AIが脚光を浴びていますが、海外では2年前から、画像生成AI以上にテキスト生成AIのGPT-3が社会を揺るがすほどの話題になっていたことをご存知でしょうか。
GPT-3は2年前に登場後、様々なサービスに導入され、既にビジネスで実用化されています。
この投稿では、GPT-3を導入して実用化に成功している3つの事例を紹介します。
テキストと画像の違いはあるものの、Promptを用いたUXは、GPT-3もStable Diffusionも同様で、今商用化を模索している画像生成AIにも通じるケーススタディになると考えています。
ちなみに、私自身GPT-3を活用したAIライティングアシスタント「Catchy」というサービスを開発運営するデジタルレシピの代表をしていまして、メンバーと1年間「GPT-3すごっ、やばっ」と語彙力ゼロなSlackをし続けながらGPT-3の研究を続けています。
日本語でGPT-3の威力が体験できる数少ないツールなので、是非遊んでみてください。
ネットがGPT-3に震撼した2つ出来事
GPT-3は簡単に言うと、Prompt投げると、人間っぽい文章を生成してくれるAIです。
例えば、まだGPT-3が一般公開される前の2020年夏には、下記のような出来事が起こり、英語圏を中心にGPT-3の威力とそれに伴う危険性について議論され始めました。
(1)GPT-3が生成した記事がニュースサイトで1位になる。しかもGPT-3が書いたと誰も気づかなかった。
カリフォルニア大学の学生が、「GPT-3は人間に成りすませるのか」という実験のために、GPT-3が書いた記事を有名なニュースサイトのHackerNewsに投稿し、それがアクセスランキングで1位を取るという事件が起こりました。
(2)「人 VS GPT-3」の広告効果検証のバトルでGPT-3が勝利
下記画像のように、広告で流入した先のLPのキャッチコピーをコピーライターとGPT-3がそれぞれ作って、その成果で勝負をし、結果、GPT-3が3勝1敗3引き分けで人間に勝利しました。
GPT-3の脅威は、人間のような文章と意見
GPT-3が米国で騒がれた理由は、上記の事例のように、AIかどうか見分けがつかない文章が書けるレベルまで達している点です。
これまでの文章生成系AIは、メディアで話題になったとしても、僕らの感覚でいう「日本語が少し喋れる非ネイティブの外国人」の日本語を聞いて「凄い!日本語上手!」と褒める程度でしたが、
GPT-3は、「日本語非ネイティブなのに僕らと同じかそれ以上のレベルで日本語が喋れる外国人」の日本語目の当たりにして、「俺より日本語上手くね?ヤバ」と言ってしまうレベルです。
また、GPT-3は事実を説明させるよりも、意見を述べさせたほうが質の高いアウトプットを出すという面白い特徴があります。
例えば、「ブロックチェーンとは何か」という説明を求めた文章よりも、「ブロックチェーンが今後社会に与える影響」という正解を1つに絞れないトピックの説明をさせるなどです。
このことから、GPT-3はマーケティング、カウンセリング、創作活動(小説の執筆)など、これまで「AIにはできない人間らしさ」が要求される領域でも活用されています。
GPT-3を活用した事例3選
1.広告コピー生成 (Anyword)
上記で、GPT-3が広告コピーのCVRで人間よりも成果が出た出来事からもその後の展開は想像できると思いますが、リスティング広告などで使用するテキストの生成で、既にGPT-3は多くの企業で導入されています。
例えば、2021年11月に30億円調達したAnywordは、GPT-3で質の高い広告コピーを効率的に生成できるSaaSです。
GPT-3で広告コピーを作る場合、ファインチューニングしなくてもかなり質の高いアウトプットを出せるのですが、Anywordは300億円以上の広告トレーニングをGPT-3にファインチューニングしている点を強みにしています。
こうした運用広告市場は、中国でユニコーン化したTezignやアメリカのBynderなど、クリエイティブから配信最適まで自動化するDAMのトレンドが2019年からきていることもあり、GPT-3と相性のいい市場になると思われます。
ちなみに、弊社では、Catchy以外にパワポでwebサイトが作れるSlideflowというサービスもやっていて、以前からSlideflowの広告コピーはGPT-3に丸投げしています。
僕を含めて、社内メンバーは元広告代理店出身が数名いるんですが、全員で広告コピー出し合ってテストした結果、全員がGPT-3に負けるという衝撃の結果でした。
画像の赤い部分がGPT-3で作成した広告コピーです。
成果は圧倒的で、僕の制作した広告セットの約3分の1程度でした。
2.記事制作 (Catchy、Writesonic、Jasper)
大学生がGPT-3で作った記事がニュースサイトのアクセスランキングで1位になった事件もあって、一般公開当初からGPT-3の記事制作利用は注目を集めていました。
現在では、「AIライティングアシスタント」というカテゴリで定着しています。
メインの利用用途は、
記事のタイトル出し
記事の目次出し
記事の本文生成
メルマガの生成
メールの返信文章
ホワイトペーパーの生成
資料内の文章生成
など多岐に渡ります。
ザックリ、AIライティングアシスタントの時系列はこういう感じです。
上記サービスは、記事制作だけでなく、キャッチコピーやアイディア出しなど幅広いライティングに対応した汎用的なツールがほとんどなんですが、
この中でも、Writesonicは記事制作に特化したことで人気を得たサービスです。
また、AIライティングアシスタント領域では最もユーザー数が多いCopyaiは、リリースから2年でARR10億円まで成長するなど、GPT-3関連サービス群の中で最も盛り上がっているカテゴリの一つです。
ただし、Googleは2022年8月に実施したHelpful contents updateで、AI生成割合の多い記事を推奨しない旨を発表しています。
そもそも、GPT-3の開発元OpenAIが公開しているGPT-3のドキュメントにも、SNSへの投稿をはじめ、文章を人間が手動で確認することなく投稿することを禁止しています。
弊社が開発するCatchyにも、記事作成機能はあるのですが、こうした記事制作ツールの正しい利用方法としては、そのまま使うことを前提とせず、記事内容の着想を広げるなどあくまでライティングのサポートとして利用することを推奨しています。
3.カスタマーサポートサービス(Viable)
テキスト生成AIといえばチャットボットですが、実はGPT-3を使ったチャットボットサービスはほとんど存在しません。
理由は、GPT-3が規約でチャットボットの利用範囲をかなり厳しく取り締まっているためです。
GPT-3は、リリース当初から人間的な振る舞いをする動作を禁止しています。
以前もGoogleエンジニアがGoogleで開発しているAIが感情を持ったと発言してかなり炎上したように、アメリカではAIが人間の意識に近づく脅威について様々な議論がなされています。
GPT-3が実際に利用停止を行った例は下記などです。
このように、チャットボット的な使い方が規約上できないため、この市場はかなり潜在的な可能性を秘めています。
その中でも、GPT-3の規約上問題ない設計をしたチャットボット関連サービスが誕生しました。
Viableというカスタマーサポート分析サービスです。
Viableは、カスタマーとチャットボットのやりとりをGPT-3にさせるのではなく、カスタマーとのやりとりを従業員にフィードバックするためにGPT-3を使用しています。
GPT-3の強みは、前述したように意見を言うことです。
一連の会話はどうすれば、より顧客にとって満足度の高いものになるか
一連の会話で、特によかった点はどこか
などをGPT-3が即座にフィードバックします。
状況に応じた柔軟なアドバイスがGPT-3と相性がいいことから、先日発売されたGPT-3の解説本によると、エンタープライズレベルでのGPT-3導入でこうしたカスタマーサポートチームへのフィードバックツールとして活用されているケースが増えてきているようです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?