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地震・巨大不明生物・コロナと定時株主総会~今宵、記述式答案構成力養成答練(商業登記法)ライブ劇場で(第3回)~

伊藤塾 司法書士試験科 司法書士 杉山潤一

【要注意】本稿は、記述式答案構成力養成答練第3回の問題の内容に触れている箇所がありますので、解説講義の受講後にお読みください。

こんにちは。
記述式答案構成力養成答練(商業登記法)の問題作成者の杉山です。

現在、東京校で実施されている記述式答案構成力養成答練(商業登記法)のライブ講義も、第3回が終了しているところです。

ところで、今日は、令和6年3月12日です。ちょうど、東日本大震災があった日(平成23年3月11日)から13年が経過しています。

そこで、今回は、受講生からの質問についての解説をお休みとし、「定時株主総会の開催時期に関する定款の定めと自然災害等との関係」について少しお話をしてみたいと思います。

第3回第2問では、定時株主総会の不開催によって、役員の任期が「定款所定の定時株主総会の開催時期の末日」に満了することとなりました(昭33.12.23民事甲2655号回答)。

例えば、取締役Aの任期が令和6年6月中に開催予定の定時株主総会の終結時において満了することとなる場合において、実際には令和6年6月中に定時株主総会が開催されなかったときは、取締役Aの任期は、令和6年6月30日において満了することとなります。

ところで、定時株主総会を開催することができないとすると、後任の役員の選任、剰余金の配当等を決議することができませんし、定款に定時株主総会の開催時期に関する定めがある場合には、定時株主総会の不開催は、そもそも定款違反の状態であることともなります。

しかし、例えば、定時株主総会の開催の準備段階において、東日本大震災のような大規模自然災害が発生した場合、ゴジラ(?!)のような巨大不明生物が上陸した場合又は新型コロナウイルス感染症のような感染症が大流行した場合には、定時株主総会の不開催を定款違反であるとして株式会社(取締役)を断罪するのは甚だ酷であるといえる場合もあるでしょう。

そこで、法務省は、各自然災害等に関連し、定時株主総会の開催時期に関する定款の定めについての見解を示しています(ゴジラ上陸の際には、法務省は見解を示さなかったのでしょうか……。ご存じの方がいらっしゃったら、ご教示ください)。

●東日本大震災関連

https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/saigai0012.html

●新型コロナウイルス感染症関連

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00021.html

これらにおいては、概ね、定時株主総会の開催時期に関する定款の定めについて、次のような見解が示されています。
 自然災害等のような極めて特殊な事情により定款所定の開催時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合にまで、形式的・画一的に適用して、その時期に定時株主総会を開催しなければならないものとする趣旨ではない。
 上記①のような場合には、事業年度の終了後一定の合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足り、その時期が定款所定の時期よりも後になったとしても、定款に違反することとはならない。

会社法は、自然災害等によって極限状態に置かれている株式会社(取締役)に対してまでも、杓子定規に規定の遵守を求めるような無慈悲な存在ではない、ということでしょう。

なお、最後に、司法書士(日本司法書士会連合会)においても、自然災害等の発生に際し、被災者等が抱える法律問題の解決に向けた相談活動を積極的に行っていることを申し添えたいと思います。

●令和6年能登半島地震関連

このような公益的な活動は、司法書士法1条の定める司法書士の使命(「…法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与すること…」)を果たすものであるといえるでしょう。

今回のお話しは以上となります。

記述式答案構成力養成答練(商業登記法)も残すところあと3回、全6回の折り返し地点までやってきました。受講生各位のより一層の奮励努力を祈念しております。

第1回の記事はこちら

第2回の記事はこちら


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