見出し画像

【 ライナーを読んで 聴く ! 】  Kiss of Spain(キス・オブ・スペイン) / Duke Jordan Trio(デューク・ジョーダン・トリオ)

ミュージックアルバム note

 (Web版 ブックレット)

レコードやCDには、プロデューサーズノートやレコーディングデータ・写真などがパッケージされていて、それらを眺めたり読んだりしながら音楽を聴き楽しむということができました。そんな楽しみ方は多くのリスナーに喜ばれていました。 そこで、noteのこの場を使って、配信サイトとの組み合わせを楽しんでいただけるように致しました。

Kiss of Spain(キス・オブ・スペイン) / Duke Jordan Trio(デューク・ジョーダン・トリオ)




📖 ミュージックアルバム note

(Web版 ブックレット)

♬  Kiss of Spain / Duke Jordan Trio  ♬


地中海の向こうにスペインを望む
アフリカから捉えたスペインは優しかった

美しいアドリブメロディーのデューク
富樫の美意識が包み込み
スペインの隠れた優麗が導き出された

Kiss of Spain
内に秘めた情熱
1.   Kiss of Spain / Duke Jordan 6:37
2.   Misty Thursday / Duke Jordan 5:20
3.   I Can't Get Started / Vernon Duke 5:20
4.   Someone to Watch Over Me / George Gershwin 5:22
5.   All of Me / Seymour Simons 4:35
6.   I Need Your Love / Duke Jordan 5:49
7.   As Time Goes By / Herman Hupfeld 5:07
8.   All The Things You Are / Jerome Kern 7:03
9.   When You Wish Upon A Star / Leigh Harline 4:23
10.   If You Could See Her / John Kander 3:22
piano : Duke Jordan
drums : Masahiko Togashi
bass : Nobuyoshi Ino

producer : Hideharu Itoh
engineer : Kimio Oikawa
piano tuner : Hidejiroh Ohnishi
mastering engineer : Kazuie Sugimoto
cover design : Hideharu Itoh
inner design : Eriko Kawada
photography : Katsuhiko Katoh
special thanks : Mieko Togashi
May 12 & 13 , 1989
at 3361*BLACK
(Yamanakako Japan)

 富樫さんの家へは、我が家から、山、山、山を抜けて、車で 50 分。当時はほとんどがフリー・スタイルの演奏だった富樫さんに大胆にもデューク・ジョーダンのサポートのお願いに・・・。
 プランをひととおり聞いてもらった後、富樫さんは、プランは理解できたと言いつつも、一言「2と4が踏めないぞ」と。それは、4ビートの2拍目と4拍目がハイハットで鳴らせないぞ、という意味だが、私の答えは、即座に「もちろん問題ありません」。
 ドラマーはリズム・キーパーである必要はない、というのが私の考えであり、だからこそ2拍目と4拍目でハイハットが鳴る必要もないと考えているのも当然のことだが、それに留まらず、「パラジウム」などで聴くことができる富樫さんの刻み続けないシンバルレガート、2と4を踏み続けないハイハットが30年前から大好きだった。富樫さん独特の4ビートのスイング感 ( 四分音符を長め長めに後ろにおもりを着けたように刻んでいく ) が何とも心地よく、ここにスタイルは違おうともデュークとの共通点を感じていた。そして、" ドラムスが美しいピアノをより美しく聴かせるためには " を、最もよく心得ているのが「アーティスト富樫雅彦」。そのころはソロ・パフォーマンスに一番向かっていた頃だったような気がする。それだけに、私のプランにお付き合い下さった事に大感謝。そしてこれは、J.J.SPIRITSがスタートした2年前の事である。

 デュークの来日の際、山中湖の " 3361*BLACK " はオフの日の常宿となっていた。そんなある日、一緒に富士山を眺めながらデュークに新たな提案をしたのだった。デュークと私の第2作目。
 「ミディアムからスローにかけてのデュークの美しさは格別で、その代表作が " フライ・トゥ・デンマーク " だと思う。だから " フライ・トゥ〜 " を上回るアルバムを作りたい。」これがアルバム・コンセプトを伝えた第一声。デュークはあの力強い張りのある声で、「オーケーィ!」と。次に、その目標を達成させるための最大の要因として伝えたのが、富樫さんのサポートの件だった。
 収録後、デュークと私の手応えは同じだった。顔を見合って、まさに「やったね」。
 いったん名盤と名付けられてしまったものに対しては、それを上回る作品が誕生したとは、なかなか誰もが言い出せるものではないようだが、でも今になって立証された思いがある。それは、このアルバムのかつてのLP、CDを購入してくれた方々の一番多い感想「 " Kiss of Spain " は、ターンテーブルに乗ったままなんです」という言葉からだ。つまり、ほとんど毎日聴くという。「家に帰ったら先ず掛けます」とか、「疲れた時は必ず針を乗せます」とか、「食事の時はいつも・・」とか。それを証明するが如く、LPの場合は2枚お持ちの方が非常に多い。
  " Kiss of Spain " 、まずは富樫さんのイントロで始まる。タムが " Kiss of Spain " のメロディーを導くが如く唄う。富樫奏法の最大の魅力は唄うこと、ドラミングというよりアドリブ・メロディーラインだ。このイントロのメロディーラインは本当にきれいで、もう私たちの間では " Kiss of Spain " のイントロはこのメロディーでなくてはいけない、ということになってしまっている。

 富樫さんは4バースが嫌いだと言う、それは、4小節毎に音楽をぶった切ってしまうからだと。言われてみれば確かに。でもソロが聴きたくて無理言って強引に1曲やって貰ってしまった。" All The Things You Are " がそれ。さすが、ドラム・ソロが唄って、見事に音楽がきれいに繋がっていっているのを聴き取っていただけると思う。
 「2と4が踏めないぞ」いやいやとんでもない、時折スティックで叩くハイハットの2と4は誰よりも「いい音」で惚れ惚れしてしまう。EとFにチューニングされたタムを中心にセッティングされた富樫流スペシャルセットは、どんなミュージシャンと共演しようとも、確実に富樫ワールドを醸し出し、自分を曲げることなく相手の魅力を引き立てる。リズムキーパーに甘んじているドラマーが多い中、「富樫雅彦は音楽家である」と、私も富樫さんのこととなると、ちょっとばかり力が入ってしまう。
 自分の制作してきた作品を振り返った時、この " Kiss of Spain " の思い出として他にないものがある。それは、レコーディング中、私もメンバーと一緒に演奏空間に居たことだ。つまり及川氏と共にモニタースピーカーを前にしていたのではないということ。音色が定まった後は及川氏に任せてしまって、自分は生音を投げ掛け合っている空間に居たくて、でもそれがこの作品の「作り」の最良の手段に思えてならなかったから。同じ空間に居ながらも目は富士山へ、そしてテイクのOK結論を出す。これは申し訳ないが最高の気分だった。最後に収録した " オール・オブ・ミー " のフィニッシュには、「OK」と発する前に、思わず唸ってしまい、しっかり残響の中に声が残ってしまった。
 その時、夕暮れの富士山をシルエットに仕立て上げた西日は、ホールに横殴り状態で反対側の壁を照らしていた。     ( 伊藤秀治 )

今時、アナログ録音機を回すの・・
って言われたデジタル全盛の時、
逆らってみたことが、今になって
貴重な音質を残す結果となった。
あの時、最高と言われたK2を通して
デジタル化したことも、
今、振り返ってみても、全く新鮮で有る事は、
おいおいっ!!デジタルって進歩しているの・・
って疑いたくなるが、
いやあ!!立派に進歩している。
あのアナログしか再現できない
音の太さ、厚み、は、
今、あの当時のアナログ再生音を
彷彿とさせる音質を再現出来ていることだ。
これからも、許されるならアナログを回す事に、
少しも恐れを感じない。
                (及川公生)


1.   Kiss Of Spain
2.   Misty Thursday
3.   I Can't Get Started
4.   Someone To Watch Over Me
5.   All Of Me
6.   I Need Your Love
7.   As Time Goes By
8.   All The Things You Are
9.   When You Wish Upon A Sta
10.   If You Could See Her

piano : Duke Jordan
drums : Masahiko Togashi
bass : Nobuyoshi Ino

producer : Hideharu Itoh
engineer : Kimio Oikawa
piano tuner : Hidejiroh Ohnishi
mastering engineer : Kazuie Sugimoto
cover design : Hideharu Itoh
inner design : Eriko Kawada
photography : Katsuhiko Katoh
special thanks : Mieko Togashi

May 12 & 13 , 1989
at 3361*BLACK (Yamanakako Japan)


📖📖📖📖📖📖📖📖



📖 ミュージックアルバム another note

(Web版 ブックレット)

♬  Kiss of Spain / Duke Jordan Trio  ♬

この日までの富樫雅彦 !!

この日のデューク・ジョーダン !!

ここから先は

5,109字 / 15画像

¥ 500

期間限定!Amazon Payで支払うと抽選で
Amazonギフトカード5,000円分が当たる

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?