ストーカー
私は、ストーカーを主題とした小説をいくつか書いている。現実のストーカーは犯罪で、決してしてはならない行為だが、私が書くストーカーは、かならずしもそうではない。肯定はしないが、否定もしない。あれこれ、ひねって考える。この作品も、そのひとつである。
Sudden fiction、超短編、いわゆる掌小説です。あっという間に読み終わります。
*
「またあいつだ」
私は振り返ると、電信柱の後ろにいる人影を確認した。
背の低い貧相な顔をした中年男である。一か月間、私をつけまわしている。まこうとしてもまけない。走って逃げたこともあったが、いつの間にか、私のあとにぴたっとついてきているのだ。
まるでプロのようである。尾行の。
ある日、私は意を決して、くるりと踵を返して、ダッシュして突進した。そいつの手首をかたくつかんで、いってやった。
「いい加減にしろ、このストーカー野郎!」
腕をつかまれた男は平然といった。
「警察です。あなたから依頼があって、この一か月、ずっと様子をうかがっていましたが、誰もいないようですよ」
(シリーズ「未来はありません」⑤)
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