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店を出て、もうこの街には、二度とくることはないかもしれないと思うと、私の胸にスプーン一杯分くらいの哀感が、胸にこみあがってきた

 とあるブックオフが閉店する、という情報を得た。そのブックオフは大型店舗で、長い期間、通った店である。当時、住んでいた場所から近かったからだ。私が持っている本のうち、ある部分は、このブックオフで買ったものである。
 ノスタルジーもあり、閉店前に行ってみた。
 店構えは(当たり前のようだが)当時のままだ。
 中に入る。品揃えは、ずいぶん変わっていた。
 本が押し出されたように少なくなり、その代わりゲームとフィギュアの売り場が増えている。
 当時の在庫は、本とCDとゲームだけで、フィギュアの売り場などはなかった。
 本が少なくなったからか、店舗に入ってもわくわくしない。
 外国文学の棚など、数段しかない。
 ここでウディ・アレンの新しい戯曲本を見つけて小踊りした記憶があるのに。
 本好きには、残念な感じである。

 本が売れないので、フィギュアやゲームに力を入れたのかもしれないが、うまくいかなかったのだろうか、と思う。

 最近のヴィレッジ・ヴァンガードにも似たような傾向がある、と私は思っている。私は、かつてヴィレッジ・ヴァンガードが好きだった。わくわくした。しょっちゅう通っていた。コミックスコーナーの例のヴィレ・ヴァン特有の黄色のポップを見るのが、楽しみだった。しかし、最近は、コミックス売り場が、狭くなっている。
 ヴィレ・ヴァンといえば、本+雑貨だが、近年、雑貨が中心になり、やはり、ブックオフと同じように、本が押しだされてしまっている。
 雑貨のほうが売れる。だから、そういう店の構成になるのかもしれないが、本好きとしては、残念な感じである。
 足が遠のく。といえばいいか。

 ブックオフで買った本は、いまでも、私の心の栄養になっている。

 心のなかで、長年の貢献に感謝をささげた。

 最後に、文庫、本を取り混ぜて10冊程度買った。

 店を出て、この街には、二度とくることはないかもしれないと思うと、私の胸にスプーン一杯分くらいの哀感が、胸にこみあがってきた。


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緒 真坂 itoguchi masaka
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