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傍線を引く

 以前、小さなフリーペーパーにこんなことを書いた。読み捨てのフリーペーパーなので、ここに再録したい。

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 本は発行した部数だけ、同じ本が、存在している。つまり同じ著者の同じ出版社から出た同じ版の本は、どれも同じ。そう思われている。でも、その同じ本を、世界にたった一冊の本に変える方法がある。それは、気になる一文、気に入った一文に傍線を引くことだ。あるいはページの余白に自分の感想を書き込むことだ。

「誰かがその一か所に一本の線を引いた時点で、そのひとの『読み』が追加された、世界に一冊しかない本になる」(内沼晋太郎「本の逆襲」)

「無視というのは見ないことじゃなかった。その反対だ。常に監視されている。正しく無視するためには僕と一定の距離を保たねばならないのだ」

 さて、私はこの一文に赤線を引いた。ああ、わかる! と思ったからだ。この本は、白河三兎「私を知らないで」(集英社文庫)。ちょっとひねった、ひっかかるタイトルだが、そのタイトルの意味がわかったとき、虚をつかれたような気持になる。お薦め。

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緒 真坂 itoguchi masaka
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