「ストーカーレポート」第2話アキバメイドの悲劇⑪を更新しました。
小説サイト「NOVEL DAYS」にて、「ストーカーレポート」第2話アキバメイドの悲劇⑪を更新しました。
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私にはもう一つ、しなければならないことがあった。
社会保険庁の職員を名乗って、由比の元妻に会いにいった。大きな門にとりつけられたドアフォンで、由比さんのことで話があるというと、すぐに家のなかに入れてくれた。三十畳はあろうかというリビングに案内され、ソファにすわらされた。メイドがすぐに紅茶とお皿に載せたクッキーを運んできてくれた。とてもよい香りのする紅茶だった。
「コーヒーのほうが、よかったかしら?」
元妻は穏やかな微笑とともにいった。「でも、ここの紅茶は美味しいんですよ」
「恐れ入ります」
元妻は呆れたようにまじまじと私を見つめた。
「あらまあ。すっごい美形」
「はい?」
私には何の意味もない言葉だ。
「あなたのことです。超絶美形」
「大変恐れ入ります」
私は丁寧に頭を下げていった。こういうふうにすると会話がスムーズにすすむことを覚えたのだ。「由比さんの年金はあなたに転送されているようだったので、ご報告にあがったのです。由比さんは亡くなられましたので、今後、ご送金はありません」
「知っています。新聞の死亡欄で読みました」
元妻は、数日前に会ったときよりも、ひどく痩せていた。数日間で、これほど人間が痩せられるのかと思えるほどの激変だった。頬がこけ、顔が小さくなり、手足が棒のように細くなっていた。先日までの自信にみちあふれ、矍鑠としていた元妻は、そこにはいなかった。こんなバカなことがあるのだろうか、と思った。これは病気なのか。まさかとは思うが、由比を永遠に失ったことによる恋の病とか。
「本当にバカなひとだった、と思います」
私は紅茶をすすった。美味しかった。