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  • 伊藤ガビンの「はじめての老い」

    編集者 伊藤ガビンによる「老いの初心者」としての雑記です。

最近の記事

はじめての老い -見つめたくない滑舌-

この「はじめての老い」という原稿のシリーズは、老いの初心者であるところの私、伊藤ガビンが、自分の身に起こる日々の変化とそれに対する雑感をだらだら書くものであります。いや、だらだらしか書けないのですね。加齢のせいにしたいところですが、どっこい昔からだらだらしか書けないだけであります。 今回のテーマは滑舌です。よし書くぞ。 あのアスリートでさえも… 加齢とともに自分の体に起こる変化の中で、私が常々じんわり気持ち悪く感じているのが「滑舌が悪くなる」ことなんです。 これについては

    • はじめての老い -未入荷の老い-

      このシリーズを書くようになってからというもの、会う人会う人から「老いの話」を振られるようになりました。 「ガビンさん、おひさしぶりでーす。アレ読んでますよ老いのやつ。実は僕も老眼がかなりきてまして」という具合で、「今日風つよいっすね」くらいの感じで極めてナチュラルに老いの話題がマクラとして使われます。 誰しもが多かれ少なかれ加齢による体の不調・変化を持っているわけで、これほどマクラとして便利なものはないよなあと思います。 老人たちが絶えず病気の話をしているというのも、アレは

      • はじめての老い -老化が開く知覚の扉-

        「老い」について、できるだけ掘り下げないようにしている。調べたり、読み漁ったりしないように心がけております。 だってそれはじめると「チャントシナキャー」というお仕事モードに入ってしまい、ただでさえ遅筆と言われているのになんにも書けなくなっちゃうよーということで、あくまで自分の実感を素人スタンスで「間違ってても書く」というアレでやらせてもらっております恐縮です。 とはいえ。 こうした原稿を書いていると、知人友人家族から「老い記事」のリンクがバンバン送られてくる。バンバン! バ

        • はじめての老い -見えてきた! 私がキレる老人になるまでの道-

          「老年キレ易く、学なり難し」 むかしの人はうまいこと言いますな。 ワカモノのみなさんにおかれましては、キレる老人マジで迷惑・はよ消えてくれ、と感じておられるかと存じますが、自分が50歳くらいになる頃からでしょうか、ああ、キレる老人になりたくないなあ、というキレる側に視点が移動してきたりします。音もなくスッとワカモノから老人になってくるから油断がならない。 そうなるともう外出先などでキレている人をみるたびに、クソが、というより早く、ああはなりなくないな〜、キレたくないな〜と思

        はじめての老い -見つめたくない滑舌-

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        • 伊藤ガビンの「はじめての老い」
          18本

        記事

          はじめての老い -等速じいさん-

          ふとした時に自分の口から「等速じいさん」という言葉が飛び出した。 自分でもビックリして、その瞬間「等速じいさん」という言葉が実体化して口の前に無限コピーされていくような気持ちになった。これはアレだ、空也上人立像だ。 確か妻との会話の中、「アレ見てみてよ、倍速でいいから」というお勧めに対して、いやほら俺「等速じいさん」だから、と。 等速じいさん? なにそれ! これ、うっかり口走ってしまったものの、老い現象としてのステイタスは「保留」であります。加齢による等速なのか、それとも私

          はじめての老い -等速じいさん-

          はじめての老い -握力の低下にショックを受けていることにショックを受けた話-

          お久しぶりでございます。 老いてないと、注意されるようになってきております。 肉体と精神は日々老いて老いて老いまくっておるものの、このシリーズ原稿をアップするのを忘れておりました。 実は、まあまあ、たまっているので、アップしていきますぞ。 握力がない! 数年前より、うすうすと感じていたことなのですが、いよいよ握力が低下したことを認めざるを得ないことになってまいりました。 握りこぶしに力は入り切らないなあ、とか、重いものを掴んだ時の感触が思ってたんと違うなあ、とか感じてお

          はじめての老い -握力の低下にショックを受けていることにショックを受けた話-

          はじめての老い -ついに眉毛が伸び始めた!-

          村山富市である。 ついに内なる村山富市元首相が動き出した。 ある日、マスクの下でたわわに実ったヒゲを剃ろうじゃないかと、鏡に向かったところ、目に飛び込んできたのは村山富市さんのように伸びに伸びた眉毛だった。すごい。来たのか。あれが。この我が身にも! 長い! 長いぞ! 眉毛が長い! ウォー。 なにがウォーなのか。 「老いは常に、鏡で発見される」 誰かが書いた名言っぽく書きましたが、俺がいま書きました。でも、似たようなことはいろんな偉人が言っきていると思います。自分が年をとった

          はじめての老い -ついに眉毛が伸び始めた!-

          はじめての老い -センパイの話-

          たぶん5歳ほど上のセンパイがいます。ミュージシャンの戸田誠司さんです。つい先日京都で戸田さんとご飯を食べまして「老い」についての助言をいただきました。いやあ、面白かった。 戸田さんの正確な年齢は知らないんですが、20代前半からの付き合いで、人生の要所要所でフラッと現れては謎の助言を残して去っていくというセンパイであります。そしてそろそろ音源出してくれやと言いたい。来年で前のアルバムから20年ですよ。 それはさておき「謎の助言」ですが、ちょっと年上ということもあって「これか

          はじめての老い -センパイの話-

          はじめての老い -人間ドックの見え方が変わった話-

          ついこの間、人間ドックに行ってきたんですよ。初めてってわけじゃなくて、毎年行くようにしていたんですけど、コロナでちょっと間隔があいてしまって。この「はじめての老い」を書き始めてからははじめてです。 あ。そのまえに。 この原稿は編集者のわたくし伊藤ガビンが、老いの初心者マークがついているわたくしが日々感じている「老い」について書いているメモのようなものです。過去の原稿はマガジン形式でまとめているのでこちらからどうぞ。 さて。 このシリーズを書きはじめてからというもの、いろい

          はじめての老い -人間ドックの見え方が変わった話-

          はじめての老い -ブランコが怖いということ-

          「はじめての老い」シリーズは、老いの初心者伊藤ガビンが、初心者なりに感じていることを記録しているものです。 30代の中頃くらいからかな、気がつくと高いところが苦手になっていたんです。そして40代、50代と苦手を超えてどんどんどんどん怖くなってきました。設営仕事やらなんやらで稀に脚立に登る機会があるのですが、涼しい顔をしながら、身体の中心部がキュッと縮みあがってしまう。もともとシワシワなのに、キュッと縮んでさらにシワが倍。脚立を降りてからもしばらく膝がガクガクしています。膝で

          はじめての老い -ブランコが怖いということ-

          見えない老い -手が信じられないほどカサカサになるという話-

          「老い」に関するトピック世界におきましては「老眼」や「頻尿」「ものわすれ」なんかはトップスタアなわけですが、実は名前のつかない「老い」がいろいろとありまして、日々の暮らしの端々でそいつらにダメージを食らうんです。家事で言えば「見えない家事」と呼ばれるような、小さくてそしてやっかいなやつ。それが私の何かを削っていくんです。 今日はそんな話です。 この原稿は編集者の伊藤ガビンが、日々感じている「老い」について、初心者としてメモしているものです。マガジンにしているので興味があった

          見えない老い -手が信じられないほどカサカサになるという話-

          服装がずっと同じ問題

          この原稿シリーズは、老いの初心者である伊藤ガビンが、特に調べもせずに日々感じている「老い」について初心者視点でメモしているものです。 「はじめての老い」を生きていくなかで、何度も「問題」として私の頭のなかでグルグルグルグルして、そして特に答えを見つけられないまま放置し続けているものに「服装」があります。つまり、老いてなんの服を着ていくのか? これからどんな服を着ていきゃんだよ俺は? という問いですね。 この「服装」について、シャキッとしない台詞をあーでもないこーでもないと家

          服装がずっと同じ問題

          [朗報] 時間が経つのは年々それほど早くならないのではないか、という話

          題字:タナカカツキ うわ、ついこのあいだ新年が明けたと思ったのにもう3月。やばい。これはやばい。致命的にやばい。 なぜやばいかというと、今回「時の経つのは言うほど早くないよね」ということを書こうと思っていたんです。なのにあっちゅう間に3月。なんてことでしょう。これではこれから書くことにまったく説得力がない。 しかし……もともと説得力があったのか? というと、あるわけがない。あったためしがない。矛盾に寛容になるのが老いのよいところ(なんでも老いのせいにしていくぞ)。気にしない

          [朗報] 時間が経つのは年々それほど早くならないのではないか、という話

          CLOVA Noteを通して自分の欲しい道具がはっきりした話

          この原稿はモーリさんの「文を紡ぎ編む人たちの Advent Calendar 2022」に参加しているものです。 このAdvent Calendarの主旨などはモーリさんのエントリを参照のこと。 さて、自分で名前を書くことにすっかりご無沙汰デイズだったのですが、リハビリ的にnoteにて「はじめての老い」というものを書き出しまして、そしたらまあまあ筋肉ほぐれてきた感あり、来年はもっと書くゾウ(パオーン)という気持ちなのですね。 「これなら仕事に使えるな」の万年ループ問題そ

          CLOVA Noteを通して自分の欲しい道具がはっきりした話

          らくらくホンを買う日を想像する

          題字:タナカカツキ 「老い」の永遠の初心者として、「はじめての老い」についての書きなぐるシリーズ5回目です。過去記事はここにまとまっています。 https://note.com/itogabin/m/mfadfc4b35ea7 本日のお題は「新しい機械についていけなくなる」問題。からの「老いとスマホ」の関係について。 みなさんは、自分がらくらくホンを買う日を想像したことがありますか? そうです、正確な名前は知らないけど、キャリア各社が出しているシニア向けのケータイです。

          らくらくホンを買う日を想像する

          こんにちは老害です ──老害の側から考える老害──

          老害への変身 こんにちは、老害です。 そこそこ長いこと生きていると、自分の視点がパチンとスイッチを入れたように切り替わる瞬間があります。 例えば僕の場合は、20代後半の頃、バイク事故で亡くなった友人の葬式に出たんですね。その時、なぜかわからないんだけど、視点がパッチーンと「事故で子供を亡くした親」に変わってしまって、異様に悲しかった…。子を持つ親どころかまだ独身だったのに。そして、そこからはもう視点を「故人の友人」に戻すことはできなかった。 またある時には、猫がネコト

          こんにちは老害です ──老害の側から考える老害──