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パリの地下鉄で
"いつの間にか、こんなに遠くまで来た"
パリの地下鉄で、仕事にいく途中にふと思った。
***
2年くらい前に出張でフランスのパリに3ヶ月滞在することがあった。はじめてのパリで右も左も分からず、でもすることは決まっていたので(仕事)流れに身をまかせていた。
出張先のオフィスはパリの中心から少し離れた西の方にあって、出勤には地下鉄と路面電車を使っていた。
フランス語はほとんど話せなかったけれど、表記はアルファベットで少し語彙を覚えれば地下鉄や路面電車を乗り継いでオフィスに行くのはそんなに難しくなかった。
毎日、ほとんど同じ時間に地下鉄に乗って、路面電車に乗り換えをして仕事に遅れたことはなかった。
パリに滞在し始めて1ヶ月くらい経ったとき、いつもどおり地下鉄に乗ってオフィスに行く途中にふと昔のことが頭をよぎった。
***
あの時はまだ学生でカナダのトロントにいて、ホームステイ先の家に帰るのにバスに乗っていた。英語は少しわかったけれど話すのは全然自信がなくて、ちゃんと家の近くのバス停で降りられるかそわそわしていた。
あまり聞き覚えのないバス停の名前が聞こえてきて、乗ったバスが間違っていたかもと、どんどん不安になってきた。
バスの運転手さんに聞こうかなとも思ったけれど、自分の話す英語に自信がなくてやめた。
結局、私の乗ったバスは間違っていなくて(いつもと違うルートだった)降りたかったバス停で降りられた。
帰ってこられた、という安堵感・達成感と同時にどっと疲れを感じたのを覚えている。
***
あれから7、8年の日が経った。
今私はパリの地下鉄でほとんど不安を感じることなく、もし間違えていたってどうにでもなるだろうという気持ちと共にKindleで本を読みながら通勤している。
"いつの間にか、こんなに遠くまで来た"
あのトロントのバスで不安を感じていた場所から、今このパリの地下鉄でリラックスしている私に辿りつく道のり。普段特に意識することはないけれど、いくらかの経験が積み重なって今に繋がってるんだなと実感した瞬間だった。
それと同時に、もっと遠くまで行ってみたいと強く思った。
快適な場所から一歩踏み出して、間違えても不安でもいいから自分の心が動くことに挑戦すること。
そしていつかまた、ふとした時に
"いつの間にか、こんなに遠くまで来た"
を感じられたら嬉しいな、と思う。