短歌「貝殻を耳に当てると海の音聞こえるなどとあなたなら言う」をコントにしてみると…
今回はコラボ企画としまして、雨(NAVY BLUE)さん(X:@NAVYBLUE1377562)から短歌をご提供頂きました!雨さんの短歌から連想、創作させて頂いたコントです。この場を借りて厚く御礼申し上げます!!
【本文】
時は令和。東京日本橋。日本国道路 元標のある橋のたもとにて。
男( 肉男)、筋骨隆々で短髪。タンクトップ短パン姿。右手にバナナ、左手に 蛤を持ち、交互に食べている。目線の先にはフラフラしている女( 豆子)。
女( 豆子)、紺色のパンツスーツ姿。長髪。パンプスを脱ぎ両手に持ち、橋の 欄干に登り、ヨロヨロと歩き始める。
肉男「(バナナを食べながら)何をしている?」
豆子「ん?なにって…うぃっく…飛び込んじゃったりして(笑う)」
肉男「なぜ?」
豆子「なぜって…アンタそりゃ、人間色んな悩みがあんのよぉーそれをお酒の力でいなしてる訳じゃない?分かるぅ?」
肉男「( 蛤を食べながら)タンパク質は摂っているか?」
豆子「ん?なんだって?新手のナンパ?わたし、今ナンパされてるの?」
肉男「タンパク質、脂質、炭水化物は1日何グラム摂っているかと聞いている」
豆子「ボディビルダー…の人?」
肉男「通りすがりの筋肉質だっ」
豆子「"筋肉質だっ!"って、あんたウケるね。好き。そういうノリ」
肉男「何に悩んでいるか知らぬが、ビタミンB6を摂れ。バナナを食って日光浴をしろ。そして歩け。栄養は」
豆子「(遮るように)ちよ、ちょっと待ってよ。私、悩んでないから。確かに最近フラれたばっかだけど。気持ちよく酔ってるだけ」
肉男「しかし、川に飛び込もうとしていただろ」
豆子「誰が飛び込むかっ!もぉヤダァーあんねぇ、 川面に浮かぶぅ、光をぉ? 掬おうとしてただーけっ(はにかむ)」
肉男「光を… 掬う?」
豆子「間に受けるなよ。マジメか?てかアンタ何食べてんの?」
肉男「バナナと焼き 蛤だ。そこの浜焼き屋で売っている。バナナは自宅から持って」
豆子「(遮るように)筋肉を一生懸命鍛えてんの?」
肉男「バナナからトリプトファンを摂り、蛤からはタウリンを補給しているとこだ。 大腿四頭筋と栄養素は裏切らない」
豆子「よっぽど辛い目に合ってきたんだろうね。話聞こうか?てか何だいたい?」
肉男「 大腿四頭筋。太ももだ」
豆子「太もも?ならそう言ってよぉ。もぉ」
肉男「飛び込まぬなら良い。ではこれで」
肉男、立ち去ろうとする。
豆子、橋から降り、
豆子「ちょっと待ちなよ。彼にフラれて立ち尽くしている美女を放っていくわけ?ナンパなんでしょ?」
肉男「悩んでいないと言っただろ?それに全く好みではない」
豆子「それも失礼だろ。てかさ…酔い覚ましにどっか連れてってよ。歩くと体にいいんでしょ?(肉男の顔を下から覗く)」
肉男「そ、それはそうだが(食べ終えたバナナと蛤をポケットにしまう」
豆子「じゃ決まりぃー」
豆子、パンプスを履きながら、
豆子「アンタ名前は?」
肉男「 肉男だ」
豆子「…両親グッジョブだね!まんまだわぁ」
肉男「そうか。ありがとう」
豆子「ありがとう?まぁ。どいたしまして」
2人、歩き始める。
肉男「ジムもしくはステーキハウス、どちら希望だ?」
豆子「どっちもヘビーだなぁ。私の日常には無い2択だわぁ」
肉男「喜んでいるのか」
豆子「喜ぶっていうか未知との遭遇を楽しんでる感じ?痩せて理知的な元カレとアンタ、正反対っぽくて興味本位で」
肉男「ありがとう」
豆子「いやだから褒めてはないって」
肉男、立ち止まる。
肉男「給水ポイントだ」
豆子「ん?コンビニじゃん」
肉男、コンビニの中に消えて行く。
豆子「あ、ちょっと!」と言いながら追いかける。
***
数分後。
2人してコンビニ前にしゃがみ、紙パック飲料(プロテイン)を飲んでいる。
豆子「(紙パックを見ながら)これ、初めて飲んだけど意外と美味しいんだね」
肉男「今のプロテインは美味いものが多い。しかし、人工甘味料には気をつける必要がある。甘味成分が天然由来のステビアであれば良いがスクラロースは体内の」
豆子「ちょ、ちょいストップ。筋肉談義はいいから。違うこと話そっ」
肉男「…(豆子を指差し)名前は?」
豆子「わたし?豆子。(はにかみながら)可愛いでしょ?」
肉男「フッ(微笑)イソフラボンか。素質は…ある」
豆子「何のだよ」
肉男「豆子はこの辺で働いているのか?」
豆子「そう。日本橋でね。って何で呼び捨て?外資系でバリバリ…と言いたいところだけど何だか疲れちゃってね」
肉男「忙しいのか?」
豆子「うん。給料はいいんだけどなぁーでも忙しすぎ。あっ!聞いてよ!」
肉男「聞いているぞ」
豆子「そうね。今日の夕方!化粧直しでトイレ行ったんだけど」
肉男「おう」
豆子「鏡で自分の顔見たらさ」
肉男「おう」
豆子「鼻の下にうっすらヒゲ生えてんの!」
肉男「おう」
豆子「えっ?わたし男?男なのって!」
肉男「(真顔)」
豆子「笑うとこなんですけど?」
肉男「テストステロンが多量に分泌されたのだろう」
豆子「は?」
肉男「男性ホルモンだ。豆子、BMI値は?」
豆子「女性にそういうのズカズカ聞かないのっ!」
肉男「しかし、適正なテストステロンの分泌量を推し量る為には」
豆子「筋肉よりさぁ空気を読む力を身につけた方が良いんじゃない?」
肉男「お、おぅ」
2人、立ち上がり、空になったプロテイン飲料をゴミ箱に捨てる。
肉男「歩くか?」
豆子「いいよ」
2人、歩き出す。
豆子「どこ向かってんの?」
肉男「目的地など無い」
豆子「ん?さっきはジムとかステーキって言ってたじゃん」
肉男「…」
豆子「ま、まさか空気読みだした(笑う)?急に?アンタ不器用だねぇ(笑う)」
肉男、歩き方がぎこちない。たまに右手と右足が同時に出てしまう。直そうとして一瞬スキップのように飛ぶ。
豆子「(肉男の歩き方を見て)アンタ歩くの下手すぎない?そんなことある?一瞬飛んでんだけどっ!(笑う)てか、どんくらい歩くつもり?」
肉男「そうだな。ほんの5キロくらいか」
豆子、足を止め、
豆子「はっ?冗談でしょ?300メートル以上はタクシーだから。タイムイズマネーっしょ」
肉男「何?普段からそんなに歩かないのか?歩けば 大腿四頭筋、ハムストリング、 大臀筋は鍛えられ、悩みや不安も無くなり何より」
豆子、黙って見つめている。
肉男、その様子に気付き黙る。
豆子「日本経済まわんねぇよ?アンタの筋肉ついても、日本経済が沈んだらコンビニでプロテイン買えないからね?」
肉男「(早口で)日本経済より体内のクエン酸回路を回す方が優先であり、経済が生まれる遥か以前から我々は生物としてこの地に生きており、血糖値の安定の為にも歩くことは」
豆子「(遮りながら)あぁ!わかったわかった。歩くよ。歩きゃいいんでしょ。まったく」
肉男、小さくガッツポーズ。
豆子「チッ(舌打ち)」
2人、しばらく歩く。
豆子「あぁ。なんか久しぶりだなぁ。目的もなくただ歩くなんて」
肉男「そうだ。集中だ。足の裏を感じながら歩くのだ」
豆子「元カレも私と似て合理的な人だったからさぁ。デートと言えば事前に目的地をちゃんと決めて、寄り道せずに直行だったし。仕事と同じく効率!生産性が命!みたいな」
肉男「(豆子の話を聞かず集中して) 踵さんが地面を踏む、離れる。親指さんと人差し指さんがくっ付く、離れる」
豆子「聞いてる?」
肉男「ああ。歩くことは素晴らしい」
豆子「まぁ、そうだね」
豆子、歩きながら路地を横目に見て、
「大通りから一本入ると、知らないお店がたくさんあるね。ここで生活してる人もいるんだ。なんか不思議だなぁ」
肉男「そうだ。歩くことは映画を見るようなものだ」
豆子「映画かぁ。最近見てないなぁ。アンタはどんな映画が好きなの?」
肉男「俺は力で全てをなぎ倒し、最終的に悲劇のヒロインを救う、そのような映画なら全て好きだ」
豆子「分かりやすくていいね」
肉男「そうか?」
豆子「うん。でもさ、本当は敵なんていないじゃん」
肉男「ん?」
豆子「敵を倒さないし、お姫様も助けない、明確な使命もわかんない。だいたいの人はそういう日々だから映画を見に行くんじゃないの?」
肉男「それは…」
豆子「ただ歩くだけ。今のうちらみたいなのって…映画にはならないねっ(はにかむ)」
肉男、足を止め、
肉男「豆子は今、どこへ行きたい?」
豆子「どこへって…明日も会社だし、正直、元カレにフラれたばっかでそれどころじゃないんですけどぉー」
肉男「仕事も元カレも捨て去れるとしたら」
豆子「は?捨てらんないし、忘れられないから酒飲んでんでしょうがっ(手で軽く肉男をはたこうとする)」
肉男「(豆子の手を止め真剣な表情で)自分を苦める過去があるならば、そんな過去など力で断ち切れ!その為には強い意思が必要だ。その為には強い 身体が必要だ」
豆子「や、やだぁ…アンタ間に受けすぎっ!冗談だよ冗談。もう何とも思ってないんだからさっ」
肉男「もう一度聞こう。人間関係や過去の出来事。それらを認めた上で、腕力と脚力で葬り去る旅があるとしたら、豆子はどこに行きたい?」
豆子「(手を振り解き)ど、どんな旅だよ…でも京都かな」
肉男「京都か…とても良い場所だ」
豆子「私だって…そりゃ今までの事に踏ん切りをつけられたらベストだけど…てか詳しい理由は聞かないの?」
肉男「理由など聞く必要が無い。湯豆腐、煮豆、にしんそば。それらに加え、おばんざい。素晴らしいバランスだ。筋肉の花園であることは言うまでもない」
豆子「そうだね、とだけ言っておくわ」
肉男「よし!行こう!京都へ!」
豆子「えっ?私、出会って間もない筋肉質と京都行っちゃうの?いやいやいやいや、さすがにそこまで軽くないんですけどぉーてかお泊まりセット持ってないし、別れたばっかだし。ちょい待って。部屋は?別だよね?さすがに!さすがに別よね?だってさっき出会ったばっかでまだそんな」
肉男「(沈黙)」
豆子「うっそー!同じ部屋なの?ちょっとハイペース過ぎない?さすがに!アンタ、ウォーキングハイになってない?いや、私か!えっどうしよう」
肉男「安心しろ。下心は皆無だ」
豆子「多少あれよ」
肉男「皆無だ」
豆子「2度言わないで?あっ、まだ距離があるもんね?そりゃそうだ。うーん、どうしよ、あ、あのさ、ちょっとだけその胸の筋肉触ってみてもいい?」
肉男「断る」
豆子「えっ?」
肉男「聖域に入る者はなぎ倒され運命にある」
豆子「なぎ倒される…ってそれはアンタの意思次第だよね?強い意思はどこいった?てか距離の取り方がムズすぎるんですけどぉー」
肉男「どうする?京都へ行くのか?行かないのか?過去を完了させ未来へ進む強き意思はあるのか?選ぶんだ」
豆子「選ぶんだって…それをレディに言わせるなんて…そりゃ、なーんにも考えなければ行きた」
肉男「(遮るように)歩きだが」
豆子「はっ?歩き?歩いて行くの?誰が行くかっ!即答でノーだわ。なんだよこの時間。悩んだ時間返してほしいわ」
肉男「2週間で着く」
豆子「長っ!江戸時代かっ!会社クビだわ!てか新幹線なら2時間ちょいで行けるし!」
肉男「さっきから何をごちゃごちゃ言っている。実際にではない。脳内でシュミレーションしながら旅をするのだ。脳内の筋肉を鍛えるんだ」
豆子「なんなの?嘘なの?妄想に付き合えって話?ちょっと期待して損したわ。もういいバカバカしい、歩こっ」
豆子、再び歩き始める。
肉男も歩き始める。
豆子「アンタの言葉を間に受けた私がバカだったわ。シュミレーションなんでしょ。はい、まずはどこへ観光いたしましょ?」
肉男「観光などせん」
豆子「観光はしません、と。はい、じゃどこに泊まりますか?」
肉男「テント泊だ。俺が持っているアーミーテントを1貼り、貸してやろう」
豆子「はいはい、テントですね。それは楽しみだこと」
肉男「4時間に1度は体内へタンパク質を入れ、間食はこまめに摂る。おやつはサツマイモかナッツだ。下半身を重点的に鍛える旅とする」
豆子「まるで狩猟生活ですね。せっかくの細い足が京都に着く頃にはムキムキになってそうだわ。どうしましょ隊長」
肉男「2等兵もそう思うか?」
豆子「誰が2等兵だって?てか、日本橋から京都までどうやって歩くわけ3等兵?」
肉男「東海道か中山道だろうな」
豆子「神奈川、静岡、愛知、三重、かぁ」
肉男「東海道はな」
豆子「中山道は?」
肉男「埼玉、群馬、長野、岐阜、滋賀を通るルートだ」
豆子「だったら私は中山道がいいな。深谷ねぎのお鍋食べて、高崎でだるま見て、あ!軽井沢観光できるじゃん!ちょっとテンション上がるんですけどっ!」
肉男「俺は神奈川県の戸塚、平塚辺りで新鮮な魚介類を食い、浜名湖で鰻、三重で蛤だ。良質なEPAを摂取できる。別々に行くか?」
豆子「なんでだよ!じゃ最初から誘わないでくれる?てか現地集合でいいじゃん。なんかさ、アンタばっかり楽しそうな旅だから私からも1ついい?」
肉男「なんだ?」
豆子「ルートは東海道で行ってあげるから、海岸沿いを歩く度、素敵な貝殻をたくさん拾って?」
肉男「拾ってどうする?」
豆子「京都に着くまでに、その貝殻で私にブレスレット作ってよ。それでゴールしたらプレゼントしてっ」
肉男「腕輪がほしいのか」
豆子「腕輪って言われると何か違和感だけど」
肉男「儀式か?何かの儀式に用いるのか?」
豆子「儀式じゃねぇわ。お前の筋肉がしぼむ"おまじない"かけたろか。思い出でしょ?出会うはずもない2人が出会った」
肉男「…こ、この体格の男が貝殻拾いをしていても変ではないか?」
豆子「あ、意外と気にするんだ?そういうの」
肉男「それは、人の目があるだろう」
豆子「変よ。そりゃ」
肉男「なに?」
豆子「冬にタンクトップ短パン姿の筋肉質が海岸にいる。海上保安庁の人かと思い近づいてみると、真剣な眼差しで小さな貝殻を拾っている。きっと美しい女性の為に彼は必死で集めているのだろう。はたからはそう見えるわね、きっと」
肉男「ぐぬぬ…」
豆子「よし、決まりね」
肉男「決まり…まあ、いいだろう」
豆子「で?良質なタンパク質を摂って、歩きまくって、2週間後に着きました。私はどうなってるわけ?」
肉男「豆子の大腿四頭筋は立派に育ち、心は平安そのもの。過去の出来事は未来への栄養として消化吸収済みだ。鋼のフィジカルとメンタルを手に入れたも同然だ」
豆子「なるほど。それは嬉しいわ。で?ブレスレットはできてるんでしょうね?」
肉男「もちろんだ。桑名は素晴らしいところだった」
豆子「桑名?…三重県?」
肉男「そうだ。名産地だ」
豆子「名産?何の?てか、どんなブレスレットができたか絵に書いてよ」
豆子、立ち止まり、鞄からノートとペンを取り出そうとする。しかし、肉男は豆子の手を止める。
肉男、ポケットから先ほど食べていた 蛤の殻を3つ取り出す。その場にしゃがみ、靴紐を外し、 蛤をパカっと開き、 蛤どうしを結ぶ。
肉男「これだ」
豆子「…はっ!!」
肉男、バカでかい 蛤が3つ、無造作に紐でくくられた物体を持つ。豆子の腕に結ぶ。
豆子「何これ?」
肉男「腕輪だ」
豆子「う、嬉し…いや貝のサイズ感っ!おかしいだろっ!!」
肉男「 蛤はタウリン豊富で」
豆子「タウリンは黙ってて?ブレスレットだから。分かる?もっと小さくて純白な貝殻がいくつもいくつも輪をなしているイメージなの。分かる?アンタの脳みそ、筋肉痛なの?」
肉男「は、 蛤ではダメか?」
豆子「ダメだろ!こんなドス黒いでっけぇの!どこの部族だよ!」
肉男「あ、あたたかい地域の」
豆子「ちがーう!」
肉男「でも…」
豆子「でも何?」
肉男「耳に当ててみるんだ」
豆子「えっ?まさか?」
肉男「(頷く)」
豆子、 蛤を耳に当ててみる。
豆子「無音じゃねぇか!」
肉男「波の音は?」
豆子「しない!元カレからは言われたことないロマンチックな言葉に期待して、まんまと乗ったけど!何だよどいつもこいつも!」
肉男「なぜ聞こえないんだ…」
豆子「いい?貝殻を耳に当てて波の音っぽく聞こえるのは、貝と耳の間に程よい隙間があるからなの!耳に当てた時に通る空気音が波っぽく聞こえるの!」
肉男「なるほど。 蛤では大きすぎると?」
豆子「そう。耳全体を覆うよね、ばかデカいから」
肉男「耳の穴から少し離してみたらどうだ?」
豆子「えっ?それはどうだろ…(蛤を離したりくっつけたり微調整する)あっ!微かになんか聞こえるかも」
肉男「どんな音だ?」
豆子「(耳に蛤を当てながら)おじいちゃんが…お茶をすすり終える時、みたいな音」
肉男「(初めて笑う。しかし笑い方が"引き笑い"のように独特)」
豆子「アンタ…笑うんだね。笑い方ちょっと変だけど(笑う)…てかバッカバカしい。何なのこの妄想の旅。歩き疲れたわ!もう帰ろ。完全に酔い覚めたし」
2人、足を止める。
豆子「(蛤を見せ)コレどうすんの?くれんの?」
肉男「プレゼントだ」
豆子「鞄に入れる勇気ないなぁ」
肉男「次の旅まで持っていてくれ」
豆子「えっ?それはリアルな旅?それとも」
肉男「東海道ではなく、中山道なら行ってくれるか?次は本当に」
豆子「本当に?妄想じゃなくて?」
肉男「そうだ。休みを取って行かないか?」
豆子「んーどうしよっかな。新幹線だよね?」
肉男「 自転車だ」
豆子「行かねーよっ!」
肉男、笑う(引き笑い)。
豆子、つられて笑う。
2人、笑い合う。
暗転