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文化庁「社会貢献も宗教活動」の見解から税金のことを考える

■社会貢献も宗教活動 文化庁が見解


文化庁は1月25日、公益財団法人日本宗教連盟と全国の都道府県の宗教法人担当課に宛てて、情報提供と称して、宗教法人が行う社会貢献活動も宗教活動の一部に位置づけられるとの見解を示した。

このニュースを報じた文化時報の記事によると、「近隣住民のために災害備蓄品や炊き出し用機材を保管している寺社の防災倉庫に対し、一部自治体が『宗教活動のための施設に当たらない』として、固定資産税を課税した例が散見されたため」、日本宗教連盟は、公益活動と宗教活動の関係について文化庁にその見解を求めてきたのだそうだ。

信徒のためだけの活動に留まらず、広く社会に開かれた活動をする宗教団体の背中を押す取り組みとして、日本宗教連盟の働きかけと文化庁の対応を評価したい。


■課税が問題の起点

今回の文化庁の見解について、宗教法人法第6条、宗教法人の公益活動や宗教活動そのものの定義など、論点がいくつもあるが、ここでは「課税」にフォーカスしたい。

日本宗教連盟が文化庁への問い合わせを行った起点は、「社会貢献活動は宗教活動にあたらない」とされたことそのものではなく、「宗教活動でないならば、課税の対象である」とされたことにある。

当事者たる寺社も、行政から単に「宗教活動に当たらない活動をしている」と評価されただけなら、何の不満もなかっただろうが、地域社会のために行った活動が原因で課税されることになったことに、釈然としないものがあるだろう。

性質を異にするが、2008年に最高裁が示した2つの判例で、ペット供養への課税が争点とされた際も、ペット供養が宗教活動であるかどうかが課税判断の材料とされた(ちなみにペット供養が宗教活動ではないとした最高裁判決に、わたしは批判的立場)。

このあたりには順序があべこべな議論が多数ある。「定価が定められているから」「広告を行っているから」「企業と類似した形態であるから」、宗教行為ではない。したがって、収益事業であり、課税対象である――といった筋の議論である。


■やぶ蛇なんて思わず宗教者は税の議論を


宗教活動に対する課税の是非は、最終的には主権者たる国民の判断だ。宗教活動に含まれようとも課税すべきであると国民が決めるのであれば、それがこの国のルールということだろう。

だが、現在の問題点は、課税・非課税という結論を導くための手段として、宗教団体の活動が宗教か公益か、はたまたそのどちらにも該当しない収益事業かを判定されていることではないか。

一方で、「課税されるならやらない」とか「行政が宗教行為として認めないならやらない」と考える宗教者がいることも残念なことだ。こちらも考える順序が違う。

「宗教団体と税金、宗教行為と税金の議論になれば、やぶ蛇で、むしろ課税の範囲が広がってしまう恐れがある」として議論を避けていけば、行政からの課税圧力よりも、市民から宗教団体が見捨てられてしまうのではないか。

信仰の価値を市場経済とは異なった世界観で存続させていくために、非課税という扱いが重要であることを、宗教界は真正面から議論してほしい。

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