マガジンのカバー画像

ss

37
物語に成れなかった言葉たち。
運営しているクリエイター

2021年1月の記事一覧

春の雪

都会の雪は
雨にはじまり
霙でおわる。 

気まぐれに積もり
跡を濁し
薄くアスファルトに張り付いていく。

神田川の底の底
桜並木の囲まれた
深さの下で雪は積もる。

雨になりて
霙になりて
春の雪を
待ち続ける。

捨てた花束

捨てた花束

あなたが簡単に捨てた花束を
私は後生大事に抱えている。

茶けて 朽ちて ばらけて
いつか 土に還るのに。

あまりに軽く あまりに脆く
あったことさえ 忘れていくのに。

名も 色も 匂いも すべて
いつかは 地球の肥やしとなる。

覚えておける保証がない。
私もいつか還るのだ。

それでも それでも
両腕がからになるまで。

(あなたは忘れてしまうのだ)
#全読 #詩