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物語に成れなかった言葉たち。
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2018年11月の記事一覧

無題

誰かがいいよ、って肯定してくれたなら、
こんなに嬉しいことはなかったね。

知らぬ他人に己を預ける。
でも私はそれさえ欲しくてたまらない。

支流の分け目の様に通り過ぎてく。
みんな私がわからない。

画面越しの有象無象。
現実より温かみがあるのは、何故。

些細な言葉に動き疲れて、
一歩さえ足を伸ばせない。

みんな知っているのだ、
上手な息の吸い方を。

私はわからないのだ、
環の加わり方が。

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プラスチックの指輪

お互い知らないフリをして、
思い出を貪るのは、
もうやめにしませんか。

貴方も私も、ずっとこのまま。
死ぬこともなく、
生きることもなく。

偶々惹かれあってしまっただけなんだよ。
事故なんだよ。

些細な情で、
人生を棒に振るのはやめましょう。

こんなの、
プラスチックで出来た指輪みたいなもんなのよ。

だから、
安っぽい関係に、
さよならしましょうか。
#詩 #ss集 #雑文

しろ

目の前にいたって、何にもないように振舞って
跡など最初っからないんだと笑うのだ

君はどこかに行きたがる
その瞳に映るは白色で、
いつだって僕を通り過ぎる

僕は君のどこにもいなくて、
ひとりたちずさんでばかりだ

ねぇ、おしえて。
明日と明後日、そのまた次も
昔のことでもいいね、君のことが知れるなら

落ちるとこまで落ちていこう
世界なんて知らないよ
僕に君をわけさせて
#詩 #ss #雑文

既製品

型でくり抜かれた僕らは
生産者の意向で旅立ちました

プログラムに従って右へ左へ
しかし僕らは不良品です
調整ミスや血管部品の数々

ガタがきてすぐさま無能扱い
壊れて消耗品でそれでも数合わせ

まるで死ぬために生まれたみたいだ

何の為にここにいて
何の為に足掻くのですか
いっそ廃品回収に出しませんか

器もなければ未練もない
産み落とされたことを、
今更ながらに恨んでいます
#詩 #雑文

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死にゆく蠍の火

心を砕く。
その欠片は星となって僕らに降り注ぐ。

きらきらとひかって、一瞬のときを照らしている。
とうぜん、心は死んでゆく。

きみは空っぽになる。

あかく、あかく、燃え尽きる。

少しずつ、体温を失っていく。
かすっきれになるまで。

塵さえ残さない僕らは。
願うことしかできない僕らは。
#詩 #雑文 #ss

グロリア

陽だまりがそこにあった。
影の奥底、そこは隔たれた白の中庭。

自由があった。
夢があった。
キャンバスに描かれた不器用なことば。

「あんなに好きだったのになぁ」

果てた景色に今、だれもいない。

壊れたラジオが音を鳴らす。
使いかけの絵の具が芝を汚す。

それでもそこは、眩しいままで。

枯れた喉が潤っていく。
再生されるは懐かしさばかり。

頰を伝うはほんの少しの淋しさと。
きえゆく世界へ

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