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露プーチン政権と対立、ナワリヌイ氏、亡くなる 相次ぐ政敵の暗殺・未遂 もし暗殺されたとするなら?

 ロシアのプーチン政権と対立し、服役中だった反政府活動家のアレクセイ・ナワリヌイ氏(47)、が、北極圏のヤマロ・ネネツ自治管区にある刑務所で16日に亡くなった。

 ナワリヌイ氏は昨年12月にこの刑務所へ移送されたばかり(1)。

 一方、遺族がまだ遺体を確認できておらず、あるいは亡くなった時期が公式発表よりも早かった可能性があるとの見方もあり(2)、死因についての憶測が広がっている。

 公式には死因は明らかとなっていないが、ナワリヌイ氏の母親と弁護士が刑務所を訪れた際、

「死因は『突然死症候群』だ」

(3)

と言われたという。しかし、遺体を確認できず、母親は死因について独自に検証することができていない。

 また、ロシアの独立系メディア「ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」によると、ナワリヌイ氏が収監されていた刑務所の受刑者の話として、ナワリヌイ氏が亡くなったことが発表された16日の前夜、「刑務所内で不可解な騒動が始まった」(4)として警備が強化されたうえ、複数の車が出入りする音が聞こえたと報道している。

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ナワリヌイ氏とは


 アレクセイ・ナワリヌイ氏は、モスクワ出身の反対制活動家。独自調査でプーチン政権の不正を暴き、違法なデモを呼び掛けたとし、これまでに何度も逮捕されてきた。

 2020年8月、飛行機の中で意識を失い、治療を受けたドイツの病院の診断により、神経剤による毒殺が図られた疑いが浮上する。

 21年1月にロシアに帰国した際に空港で当局により拘束。同年2月、モスクワの裁判所は過去の有罪判決の執行猶予手続きに違反したとし、実刑の適用を決め、刑務所に収監。

 同12月、欧州連合(EU)欧州議会が「サハロフ賞」を授与。同賞はノーベル平和賞を受賞した旧ソビエトの物理学者であるアンドレイ・サハロフ氏にちなみ欧州議会が人権擁護に貢献した個人や団体に対し、毎年贈るもの。

 しかし、その後もナワリヌイ氏は、過激派団体を創設した罪などで懲役刑を言い渡された(5)。

 ナワリヌイ氏が一躍脚光を浴びるようになったには、2011年のロシアの下院選や翌12年の大統領選をめぐる抗議デモで主導的役割を果たしとき。 SNSや動画を活用し、政権幹部の不正を追及した。

 とくにプーチン氏のものとする「宮殿」の暴露動画は、再生回数が1億回を超えた。2年前に始まったロシアによるウクライナ侵攻についても強く批判した。

相次ぐ政敵の暗殺・未遂


 プーチン政権下では、大統領に反対した人の暗殺や不審死が相次ぐ。政敵がいなくなる具体的な理由や動機は諸説あるが、ロシアでは極端な権力の集中と、それに反対する勢力の排除が同時になされていることは間違いない。

 最近では、民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏が思い出される。昨年8月に搭乗機が墜落し、死亡した。

 あるいは、野党指導者ネムツォフ元第一副首相は、プーチン氏が主導した2014年のウクライナ南部のクリミア半島の併合や、東部ドンバス地域の親ロシア派武装勢力への支援を批判し、15年2月に暗殺。

 同じくプーチン氏を批判した元連邦保安局(FSB)職員のリトビネンコ元中佐は06年、亡命先の英国で放射性物質ポロニウムにより毒殺される。

 英国のスパイとして活動していたとして有罪判決を受け、プーチン氏から「裏切り者」とされた元情報機関スクリパ氏は18年、神経剤で襲撃される(6)。

 ナワリヌイ氏も20年8月にロシア国内で毒殺未遂に遭っていた。療養先のドイツで旧ソ連の軍用神経剤「ノビチョク」系の毒物の投与が確認され、ロシアの情報機関の関与が報道。ナワリヌイは死線をさまよった。

もし暗殺されたとするなら?


 もしナワリヌイ氏がロシア政府に対し、”消された”とするなら、ナワリヌイ氏が近年のロシアでは「最も著名な野党指導者」であるという事実がその動機の可能性も。

 ロシアでは、今年3月に次の大統領選が予定されているが、プーチン氏に対抗する候補者は実質的にいない状態だ。

 ロシアの中央選挙管理委員会は8日、大統領選に関し、ウクライナ侵攻に反対するボリス・ナデジディン元下院議員(60)の候補者登録を認めないと決定。

 防衛省防衛研究所の兵頭慎治研究幹事はNHKの取材に対し、

「ロシア大統領選挙の1か月前というタイミングで、しかも、選挙戦で唯一、反戦を主張していたナデジディン氏の立候補が却下された直後ということが注目される」

(7)

と指摘、


「プーチン大統領は戦時下の状況で次の大統領選で8割以上の得票率で圧勝することが重要だと考えている」

(8)

としたうえで、

「もし、プーチン政権が死亡に関与したのであれば、大統領選挙の前にこうした反戦・反プーチン的な動きが高まって、プーチン大統領が圧勝するというシナリオに影響が出ることを政権が警戒した可能性があるのではないか」

(9)

との見方を示す。


(1)共同「ナワリヌイ氏、死亡」西日本新聞、2024年2月17日付朝刊、1項

(2)NHK NEWS WEB「ナワリヌイ氏 遺族が遺体確認できず 死因めぐり波紋広がる」2024年2月19日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240219/k10014364031000.html

(3)NHK NEWS WEB、2024年2月19日

(4)NHK NEWS WEB、2024年2月19日

(5)共同、2024年2月17日付1項

(6)共同「「裏切り者」相次ぐ不審死」西日本新聞、2024年2月17日付朝刊、5項

(7)NHK NEWS WEB「ロシア ナワリヌイ氏が死亡 プーチン政権批判の反体制派指導者」2024年2月17日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240216/k10014361581000.html

(8)NHK NEWS WEB、2024年2月17日

(9)NHK NEWS WEB、2024年2月17日

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