一時保護所の現状を伝える難しさ~注目度について~
こんにちは。ジジです。
またまたまた土曜更新になってしまいました。すみません。
さて、今日から一時保護所の現状について伝える難しさについて書こうと思います。
0.これまでの議論
これまで私は一時保護所で子どもの声を聴くということについて書いてきました。
第1回では、一時保護所での子どもの声を聞けない現実について。
第2回はそもそも「声」とは、について
第3回では、「聴く」ということについて
第4章では、声の聴ける理想的な一時保護所について
第5回では、声を聴く人の声を聴くということについて。
こうした、一時保護所の難しさと理想を右往左往する形で書いてきました。
1.一時保護所への注目度は?①
NHKからこうした児童相談所の職員の悲痛な訴えが出てきたことは大きな進歩だと思います。
ですが、この記事の中で一時保護所について書かれた部分はこの部分しかありません。
「一時保護所」や「児童養護施設」から、「集団生活に馴染めないので、他を探してほしい」といわれるなど、子どもの預かりをめぐって、何度もやり取りをすることが少なくないといいます。
まるで「一時保護所」が児童相談所とは別個にあるかのようですが、一時保護所は児童相談所に「附設」してあるものです。
物体としての児童相談所とは、離れているかもの一時保護所ですが、機能としては児童相談所の一部を担っています。
ですが、注目されるのは親御さんと面談を中心にする児童福祉司がイコール児童相談所職員と認知されているかと思います。
児童相談所には、児童福祉司だけでなく、
子ども達と面接をする児童心理司
一時保護所で生活をする職員等
がいます。
ですが、世間の認知度的には児童福祉司が注目されているからこそ、相対的に一時保護所が着目されないのかもしれません。
2.注目度②~法律として~
では国としての注目度はどうでしょうか?
そもそも児童相談所は、国・地方自治体によって運営されています。
そして行政機関は法律等によって運営されます。
では一時保護所の法的規定はいかなる規定でしょうか?
実は一時保護所について書かれた法律は以下のみです。
児童福祉法第12条の4
「児童相談所には、必要に応じ、児童を一時保護する施設を設けなければならない」
児童福祉法に、一時保護所の設置義務が書かれているのみです。
では具体的な規定はどこに定められているかというと、
2018年の「一時保護ガイドライン」に具体的に規定があります。
しかし、これはあくまでもガイドラインなので、
国からのアドバイスとしての効力しかありません。
また2018年に改めて一時保護ガイドラインが作られたというのも、
かなり最近のことであるように思われます。
また令和2年から、一時保護に関する検討会が行われています。
こうした「一時保護」に関する検討会はこれまで行われてきました。
そして一時保護所についての検討もこの第3回で行われました。
近年になって注目されつつあると言ってもいいかと思われます。
ですが逆にいえば、これまで「一時保護所」について国として検討会を行ったのは、今回が初のことであるのも事実です。
なぜこれまで一時保護所というものが注目されてこなかったのでしょうか。
3.私なりの解釈~多様な一時保護所~
その理由として私は以下のように考えています。
一時保護所の運営がこれまで各自治体にとどまらず、各々の一時保護所によって運営を任されてきたという現実があるからだと考えています。
一時保護ガイドラインには以下のように書かれています。
しかしながら、子どもの安全確保のみならず、権利擁護も図られる必要があることに加え、子どもの安全確保に重きが置かれ、子ども一人一人の状態に合わせた個別的な対応が十分できていないことがあることや、ケアに関する自治体間格差、学校への通学ができないことが多いなど学習権保障の観点からの問題、一時保護期間の長期化などの問題が指摘されている。
つまり自治体によってかなり差があるということを伝えているのです。
私はこの差を大きく表しているのが、各一時保護所でのルールだと思います。
2019年に東京都の一時保護所にて人権侵害的なルールが課されていることが公にされました。
そこでは以下のようなルールがあったといいます。
私語禁止、会話を制約する、子ども同士が目を合わせることまで禁じる
こうした厳しい人権制約を課していた一時保護所があるのも事実です。
ですが、一方で一時保護所での経験がよかったと答える人もいます。私は以下のツイートが心に響いてきました。
私はこのツイートに、一時保護所がこれまで注目されてこなかった理由があると思います。私なりの解釈では、
① そもそも一時保護所が歴史的に注目されてこなかった
② 一時保護所各々で運営されているからこそ、一時保護所での統一した法律・ガイドライン・検討がされにくかった。
に加えて、ツイートでもあるように
③ 一時保護所での生活を明らかにすることで、一時保護を経験している・した当事者の生活を脅かす可能性がある
ということがあるのだと思います。
一時保護所は、かなり秘匿性の高い施設になっています。
その場所も非公開ですし、職員の守秘義務の度合いも高いです。
親御さんからの奪還の危険性も高い場所ですので、少しの情報も漏らすのは危険な施設になっています。
ですが一方で、一時保護所の秘匿性が高いがゆえに、
これまで独自の運用をしてきた一時保護所では人権制約の面が強くなっている場所もあります。
現在第3者委員会などの設置も努力義務であるので、外部の目が入ることはまれです。
そうした中で、強く管理されている一時保護所があるのも事実です。
ですが、その秘匿性をオープンにしようとすれば、
いわゆる当事者の危険を脅かすことになります。
ですが、オープンにしなければ、脅かされる子どもの人権もあります。
こうした①歴史的背景 ②ローカルな運営文化 ③当事者への危険と秘匿性
この3つが絡まることで、一時保護所というのがこれまで注目されてこなかった…というよりも、一時保護所が注目されにくかった構造があるように思います。
このnoteもオープンさと秘匿性のバランスを考えなくてはなりませんと、改めて感じます。
今日はここまでです。
ジジ
毎週金曜日更新
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