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湖嶋いてら
2021年9月7日 19:52
庭の土はぴくりとも動かずに、しんと横たわっている。いつの間に頭上の闇から落ちてきた小雨が染み込み黒ずんだ土は、一層無言になっている。 ビール瓶をガーデンテーブルに置く。タイルの僅かな凹凸に、瓶底が浮ついた声を上げる。ラベルのピンクの象が、歩き出す。 幸せの象徴らしいよ、と笑った君は21だったか。酒などろくに知らない若い二人、ラベルを買っているようなもんだった。ジンクスを飲んでいるようなもんだ
2021年9月5日 17:13
ずぶ濡れの体でぴしぴし言いながら発火する妙な生き物、それが俺だ。湯気だか煙だか分からないものを撒き散らしている。それは目に見えないほど細かい粒子となって空気中を漂い、誰かの足にまとわりつく。まるで妖艶な猫の尾のように。揺らめきながら這い上がっていく。撫で回すように、絡みついていく。そして密やかに強かに、その体内へと入り込んでいく。あぁ気分がいい。ああ最高。 立ち込める高揚のなかで、降ろした瞼に