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いてら堂 小説の棚

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湖嶋いてらの感覚や妄想から成る小説が並んでいます。
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2021年9月の記事一覧

庭の底、満月

庭の底、満月

 庭の土はぴくりとも動かずに、しんと横たわっている。いつの間に頭上の闇から落ちてきた小雨が染み込み黒ずんだ土は、一層無言になっている。
 ビール瓶をガーデンテーブルに置く。タイルの僅かな凹凸に、瓶底が浮ついた声を上げる。ラベルのピンクの象が、歩き出す。
 幸せの象徴らしいよ、と笑った君は21だったか。酒などろくに知らない若い二人、ラベルを買っているようなもんだった。ジンクスを飲んでいるようなもんだ

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闇の奥の曇り空

闇の奥の曇り空

 ずぶ濡れの体でぴしぴし言いながら発火する妙な生き物、それが俺だ。湯気だか煙だか分からないものを撒き散らしている。それは目に見えないほど細かい粒子となって空気中を漂い、誰かの足にまとわりつく。まるで妖艶な猫の尾のように。揺らめきながら這い上がっていく。撫で回すように、絡みついていく。そして密やかに強かに、その体内へと入り込んでいく。あぁ気分がいい。ああ最高。
 立ち込める高揚のなかで、降ろした瞼に

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