受験から逃げて留学することにした
私には夢がない。明確な夢があったのは幼稚園生の頃までで、その頃はプリキュアになりたかった。ちなみにプリキュアを観たことは一度もない。そんなわけで、私は将来像というものを全く想像できないのだ。
中学3年生の頃、進路に迷った私は、得意だった英語を伸ばす道に進んだ。高校では英語の授業ばかりで、理数は1年しかやっていない。勉強をサボりまくったので、成績も悪かった。そして高校3年生になり、今度こそ深刻に進路に悩むことになる。
やりたいことがない。学力もない。マイッタな。受験したい大学はないし、受けたところで落ちる気がする。
うちの家系は代々お勉強ができるほうで、祖父母は元教員だし、両親は共に一流大学を卒業したし、いとこ達はみな優秀な成績を納めている。そこへ生まれた怠惰人間。努力を怠り、落ちぶれた。
国内の大学に進んだところで、物笑いになるだけである。ならば、同じ基準で測れない海外はどうか。海外の大学なら、多少ランクが低くとも、留学という点を評価されるに違いない。国外逃亡。それが私の出した答えだった。
海外か。オーストラリアとか、カナダとか?ただ一つ問題がある。私は英語があんまり好きではない。たまたま少し得意だった、それだけである。しかし、やはり語学には興味があった。英語以外の言語なら面白いかも?
そんなとき、当時の担任がある提案をしてくれた。
「うちの高校の先輩には、何人か台湾に行った人がいる。中国語を学ぶための予備校もあるよ。」
中国語。世界で英語の次に多く話されている言語。
(英語と中国語を話せたら、無敵なのでは?)
なんとも浅はかな動機である。
そして私を捕らえた、決定的な事実。
「台湾の大学に留学するなら、入試がない」
これだ。台湾に行こう。
こうして私は予備校に入った。そしてなんと、中国語に魅了されてしまった。中国語は音が美しい。聞いていて心地よい。もちろんヤカマシイ中国人も多いが、私は中国語が気に入った。
私が留学すると告げたとき、担任もクラスメイトも仰天していた。そりゃそうだ。こんな陰キャが海外に行くって?オマエ、日本語もロクに喋れないだろう。そんな声が聞こえてきそうであった。
しかし私は、一度決めたら突き進むタイプなのだ。周りの声はお構いなし。受験から逃れるためなら、なんだってする……。
高校卒業後、毎日6時間中国語を勉強した。自分でも驚くほどに楽しかった。勉強が、楽しい。これは革命だった。
半年間ひたすら中国語だけを勉強し、私は台湾の、とある大学に入学した(台湾は9月入学)。試験はなく、自己推薦書と学習計画書を英語で書き、合格をもらった。国外逃亡は成功した。
私は現在、就職問題に頭を悩ませている。
大学院に進んで、就活から逃げようかしら。