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孫の顔

「はやく孫の顔が見たいわぁ」 私は女で、しかも長子なので、何かとこの話題を突きつけられる。20歳の誕生日を迎えてから、この言葉はますます現実味を帯びてきた。 しかし、当の私はというと、子供を産む気などさらさらない。 「出産は親のエゴである」 これが私の持論だ。 この世界に、自ら望んで生まれてきた人間は一人もいない。つまり、子は親から人生を押し付けられている。 もしも私が子供を産んだら。子供の人生を考えてみる。子供は私を母親に持って幸せだろうか?自身の人生に満足できるだ

    • 部外者であること

      私はいつも馴染めない。クラスにも、部活にも、習い事にも。正確には、馴染む「努力をしない」。疲れるからだ。しかし、場に馴染まない人間は必ず浮く。そうなるとやはり居心地が悪い。私はその居心地の悪さを、ずっと抱えながら生きてきた。 そんな人生に、ある転機が訪れる。私は高校卒業後、海外の大学に進学した。そこで初めて、私は堂々と「私」でいられたのだ。 言葉も文化も、何もかもが違う土地。外国人は、周りの人々と同じレベルを要求されない。できないことが多くても許され、常識を強要されること

      • 画鋲を飲んだかもしれない

        (私、画鋲を、飲んじゃったかもしれない) すべてはここから始まった。 あれは小学校低学年の頃だった。私の机のすぐ後ろで、先生が掲示物を貼っていた。画鋲を刺す音が、プツリプツリと聞こえてくる。 ふいに、先生の手から画鋲が落ちた。 「あ、落ちた……見失っちゃった」 エッ 「どこ行った……?無いなあ……」 画鋲が、消えた。自分の周りを探してみるが、見つからない。 (もしかして、私が、飲んじゃった……?) そんなはずはない。分かっている。分かっている、けど、でも、やっ

        • 受験から逃げて留学することにした

          私には夢がない。明確な夢があったのは幼稚園生の頃までで、その頃はプリキュアになりたかった。ちなみにプリキュアを観たことは一度もない。そんなわけで、私は将来像というものを全く想像できないのだ。 中学3年生の頃、進路に迷った私は、得意だった英語を伸ばす道に進んだ。高校では英語の授業ばかりで、理数は1年しかやっていない。勉強をサボりまくったので、成績も悪かった。そして高校3年生になり、今度こそ深刻に進路に悩むことになる。 やりたいことがない。学力もない。マイッタな。受験したい大