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感情表現の3つのモード

人間は感情についてさまざまな表現ができる生き物と言われています。
表情や仕草だけでなく、言語であったり、音楽であったり。

EQ(感情知能、emotional intelligenceなのでEIということもあります)を学ぶと、人の表情から感情を読み取ったり、できるだけ多くの感情表現の言葉を使いこなせるように訓練されたりします。
NVC(Non-violent communication、非暴力コミュニケーション)でも、まず体に起きている反応から感情を察知し、それを作り出しているニーズを探ることをします。

自分自身の感情を認識することと、目の前の相手の感情を認識し理解することはとても大切なコミュニケーションスキルだと思います。

日本語でいう「感情」に相当する言葉は英語では少なくとも3つあります。
emotionmoodfeelingなのですが、これの違いがわかるとより感情の理解が鮮明になってきますので、少し整理してみましょう。

emotion(エモーション)

一つ目のemotionは、湧き上がってくるような感情のことを指しています。
「emotionalになってる」なんていうときは、感情的になってしまって強い言葉を吐いたり泣き出したりしている状態の時に使っていますよね。

emotionを感情以外の言葉に訳すと「情動」となります。
情動の「動」はmotionですので、それっぽい訳だと思いませんか?
気持ち(情緒)が動かされる状態のことを「エモい」とも言いますよね。あれもemotionから来ていると思われます。

emotionは人間の脳の脳幹に近いところで湧き起こるもので、人の冷静な思考をハイジャックすることがあり、それを大脳前頭葉の理性でコントロールしようとするのがマインドフルネスであったりEQのトレーニングだったりします。

何かを引き金にして咄嗟に湧き起こる強い感情であり、それゆえにものすごくエネルギーを使うのでemotionは本来それほど長い時間は持続しません。ゆえに情動なのです。

emotionは比較的原因がはっきりしており、生理的な反応を伴い、比較的短時間で消失するので、「あ、今カッとしてるな私」と「これは一時的な情動だ」と認識することでコントロールも可能になってきます。
認識できないときはまさしく「感情的で我を忘れてしまっている」のでしょう。

情動には実はそれほど種類はないのかもしれません。基本的には喜び怒り恐れ嫌悪悲しみの5つぐらいではないかなと思います。
これらはポール・エクマンによると基本感情と呼ばれているようで、これを取り上げた映画もありましたね。

mood(ムード)

emotionの次に来る感情の状態がmoodです。
突発的に湧き起こった情動が少しおさまってきたあたりでこの状態になり、激しくはないもののしばらく継続します。

moodも辞書では「感情」なのですけれど、それ以外の言葉に訳すならば「気分」ではないかと思います。
憂鬱な気分(イライラ)とか、嬉しい気分(ウキウキ)とか、消沈した気分(ガッカリ)とか。カタカナにするとmoodの言葉として認識しやすいですね。

moodはある程度の長さ続きますけれど、TPO(time/place/occasion、すなわち時や場所や状況)が変わると、スッと冷めてゆきます。
そういう意味では継続はしますけれど一時的なのです。

もう少し、このmoodに浸っていたいなぁ、なんて思ったらとりあえずそのままじっとしているのが一番かもしれません。
mood、すなわち気分が変わる要因は人それぞれで、意識が別のものに行った途端にムードは急激に冷めてしまいます。

いい雰囲気だなぁ…なんて貴方が思っていても、相手の意識がそうかどうかはわかりませんよね。
相手の考えていることが違うかもしれませんから、口説こうとしてる時には、場から貴方が感じているmoodを相手も感じてるのかどうかは要確認、ですね。

feeling(フィーリング)

Feelingは一般的に感情の総称のように扱われているもので、場合によってはemotionやmoodまで含めてfeelingと括っていることもあるでしょう

でも、元々はfeel(感じる)の現在進行形ですから、自分の感情を感じている状態であり、日本語でより的確に訳そうとすると「気持ち」になるのではないかと思います。
「気」を「持って」いる状態なので、自分の意思で持ち続けることができるのと、emotionと違って長続きするのがfeelingです。

咄嗟のハプニングではなく、過去のことを思い出したり、未来のことを想像することで体に感じられる何らかの変化、それは落ち着きやムカムカした感じであったり、が起きるようであればそれはfeelingになります。

feelingは「感じ」ることなので、感じ続けることで保持でき、感じる対象がある限り呼び起こされます。
これが「気、持ち」ゃってる状態とも言えるかもしれませんね。でも、それゆえに手放すことも割と簡単にできるので、実は最もコントロールしやすいのがfeelingであるとも言えるかもしれません。

感情をコントロールするために知っておきたいこと

私自身は、思考が先行することが多く、冷静で感情的にならないとよく職場の仲間から言われます。
しかし、その分だけ相手の感情に鈍いとも言えるなと気付いたのが10数年前でした。そこからEQを学んだりもしましたが、そこで最も大切なことだと教わったのが自分の感情に自覚的であること、でした。

人の感情を理解したり、自分の感情をコントロールするには、まず自分の感情の状態を知らないとコントロールなど到底できないというわけです。

貴方の表情はあなたのためではない」とセラピーを学んでた頃に教わったこともあります。
確かに、自分が今どんな表情をしているのかを自分では見ることはできません。しかし、相手は私の表情を見て私の心の状態がどうであるのかを簡単に察することができます。
文字通り「顔に書いてある」ようになることってあるじゃないですか。顔に書いてあるのに、言ってることがそれと違うと相手は混乱しますし、貴方も信用もされないでしょう。

取り繕っているように見えても、感情が表に出てしまっているのだとしたら、自分が今どんな気持ちであるのかを素直に認めて、それをも相手に伝えた方が相手は安心できるものです。

自分の感情に自覚的であるためには、これはもう訓練しかないなというがここ10年私がやってきて感じることです。
具体的には日記やジャーナリングをしながら、できるだけ多彩な言葉で感情を言語化してみることが私の場合は有効でした。そうすることで「あ、今自分はどんな感情なのだろうか」と考える癖のようなものができたからです。
ポール・エクマンの5つの基本感情を46に展開したモデルや、ロバート・プルチックの感情の輪なども参考になるかもしれません。

言葉にするのが難しい人は、絵とか色で表しても良いかもしれません。ともかく正直に自分の今の情動、気分、気持ちを表現してみることです。

これに慣れてくると、毎日が豊かに感じられるようになります。
私の場合はそうでした。
感情を味わうようになる前は、思考中心で日々起こることを捌いてるような状態だったので、後で振り返った時に記憶に残っているものがない、ないしはひどく無味乾燥なものでした。
感情を意識するようになってからは、例えば楽しんでいるときはそれを実感できますし、後からの記憶もイベントの記憶ではなくワクワク感が体の中から湧き起こるようになってきました。

おそらく感情優位で日々を過ごしている人にとっては、こんなことは当たり前のことだと思いますが、思考中心で忙しく過ごしているビジネスパーソンであれば試してみる価値はあるのではないかと私は思います。

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