プライドもてる仕事の仕方
数十年サラリーマンを続けてきました。私のことをよく知る人間はなぜ転職回収が少ないのかとか独立していないのかとかを尋ねてきますが、考えてみると私は割と早い段階で自分がプライドを持って仕事ができる状態になっていのかもしれないと最近思います。
上司から初めてもらった言葉の話を読んでくださった方は私が恵まれた環境にいたことをお分かりいただけると思いますけれど、一方で社会人1−2年目で結構辛い目にも遭っています。
具体的には、上司に裏切られたと思った経験を2回ほどしてまして、会社組織というところは本当にひどいところだと思い、悔し涙を流したことがあります。今思うと若かったなぁと… ^_^;
でも早い段階でその経験をしたおかげで、サラリーマンとして仕事をしてゆく上で自分の指標であり矜持になってる考え方を作ることができました。
それは二つあります。
Manage Up
確か入社三年目の研修で聞いた考え方でした。Manage Upward、上司をマネージしながら仕事をしてみろ、ということです。
社会人も三年も経てば、一通りの仕事の仕方は覚えて上司からの指示がなくてもある程度は自分の判断で動けるようになります。おそらくはその段階に来ているからこその三年目研修でのインプットなのでしょうけれど、私はかなり衝撃を受けました。
というのも、私はずっと体育会系できていたので、上はコントロールできず上からの指示は絶対であり、たとえそれが理不尽であっても従うものである。ないしは上から与えられた(制約)条件の中で自分のやるべき仕事を黙々とやるのが当たり前という考え方の中にいたからです。
Manage Upは上をうまく使って効果的に仕事をしようというもので、二通りの意味と言うかアプローチがあります。
一つは、上司からの制約条件を交渉したりうまく躱したりするやり方。言葉を選ばずに言えば同僚を「出し抜く」ことにもなります。特にマイクロマネジメントをしてくるような上司に対しては、様々な手段で予防線を張り自分の仕事に邪魔が入らないようにすることです。
もう一つは、上司を利用して自分の成果を上げることです。例えば、自分一人ではアプローチができないキーマンとコンタクトをするために上司の人脈を使わせてもらったり、ここ一番の交渉がまとまった後のフォローアップでお礼の挨拶に同行をしてもらったり、と言う具合です。
日頃との上司との関係性が無ければ「上司をうまく使う」ことはできませんが、それがしっかりとしたものになっているのであれば、上司が活躍する場を作りそれによって自分の出したい成果につなげる事もできると言うことです。
この言葉を知ってからは、当時自分の横のデスクで新聞を読みながら踏ん反り返っていた上司を如何にして上手く使うかと考えるようになり、それがうまくいっている妄想をすると楽しくなってきたものです。
Completed Staff Work
もう一つの考え方は、私が十年選手になった頃にこれまた研修で某大学の先生から教わったものでした。
当時、私は言われたことはそつ無く期待以上の成果をコンスタントに出せるようになっていました。なんでもできるだろうというある種自惚れた万能感や無敵感があり、やや傲慢で鼻っ柱が強いところがあったかもしれません。
そんなとき、まだまだ上のレベルがあるんだと言うことを知ったのが、このCompleted Staff Workという考え方でした。
これは第二次世界大戦当時の米国陸軍の中から出てきた言葉です。日本語で直訳すると「完了しているスタッフの仕事」となりますが、意訳をすると「他者が付け加えたり判断をする必要がない完璧な仕事」ということになりますでしょうか。スタッフ部門の職員の理想的なアウトプットを定義するものとして使われています。
つまり上司の意思決定すらコントロールする完璧な上申(元々はレポートやドキュメントによる)のことをCompleted Staff Workと呼んでいる訳でして「仕事として完結しており上司の出る幕(YESとしか言えない)がない」状態を指しています。
当時の私は、これには「デキる」サラリーマンのつもりでいた自分の後頭部をスリッパでスパーンと引っ叩かれたような衝撃を受けました。同時に、これだ!と思ったのです。というのも、自分がより大きな仕事をするためには管理職(マネジャー)になって決定権をもたないといけない、と思い込んでいたからでした。
なんだCompleted Staff Workで仕事をすれば、別に管理職にならなくたって上司を意思決定まで自分でコントロールして思い通りにできるじゃないか、と考えることができたので、「管理職になりたい」とも思わなくなりましたし「管理職じゃないから」という言い訳もしなくなりました。
例えば、顧客から「これはなんとかならないか」とタフ目の要望事項をもらっても、「上司に聞かないと」とは言わず「上司を動かします」と言えるようになったのです。
もちろん、Completed Staff Workは簡単にできることではありません。上司に提案してはつき返される経験を何十回もして、その過程で論理の組み立て方やプレゼンテーションのスキルも今までとは桁違いに上がった末にできるようになるものではあります。
でも、一旦これがきっちりできると上司からの信頼も得られます。そして何回か続けるとレポートを読まなくても、「何をすればいいんだ?」となります。
痛快なサラリーマン人生へ
一回しかない人生でサラリーマンをやることになったとしても、その時間は食ってゆくための「苦行」であり、上司から言われたから仕方がない…なんて思いながら仕事をしている人生はつまらないとは思いませんか?
たとえ他に選択肢がなくてサラリーマンとしているとしても、どうやったら痛快な仕事の仕方ができるのかを考えて試すのはやってみる価値があると思います。
もちろんManage UpもCompleted Staff Workも簡単なことではありません。
しかし、以下の三つの価値があると思います。
1) チャレンジすることで自分が鍛えられて論理構築力が向上する
2) マネジメントの考え方を学び体得することにつながる
3) 人に決断をさせるもって行き方を身につけられる
これらはいうまでもなくマネジメント・スキルであり、上位マネジメントになればなるほど重要になってくるものでもあります。しかも、マネジメントにならなくてもチャレンジはいつでもできるのですから。
もしあなたが上司や組織の他のメンバーの意思決定に至るまでコントロールできるとしたらどうでしょうか?
サラリーマンという環境だからこそできる愉しみがそこにあるんじゃないかなと私は思います。