2023世田谷観音の特攻桜 その1
世田谷観音の特攻桜
撮り続けて20年以上
世田谷観音さまにはソメイヨシノの老木が何本かあります。そのうち特攻観音堂の前にある一本が「特攻桜」と呼ばれています。まず桜が先に植えられ、その傍に観音堂が建てられたそうで、もとは名も無い普通の桜の木だったのでしょうし、霊魂を宿すような由縁もありません。しかし、その咲きぶり、散り行く姿などは、何事かを語り伝えるように思えてなりません。
その「何事か」を写真に撮って伝えられないかと、もはや20年以上も撮り続けています。
たとえ先天的な才能が乏しくても、後天的に修得できる技術によって補完できることがあります。
写真の才能が足りていないのは平素より痛感しています。いつも何枚かを一組にして、順序を考えつつ前の一枚と次の一枚とに繋がりを持たせ、最後まで見終えたとき、全体として流れが見えてくるように……そういう工夫の仕方を中年すぎてから授業料を払って教わりました。
遺憾ながら、どうにもならないのは、インパクトのある写真を撮るセンスです。強く印象に残る単写真は、どうやら私には撮れないようです。
例年、サクラの開花期に世田谷観音さまの特攻観音堂の前にある、ソメイヨシノの老木の写真を撮り続けて20年以上が過ぎました。よくいわれる「継続は力なり」という言葉を信じていましたが、撮り続ける執念だけでは人の心を動かす写真は撮れません。それを悟りはしたけれど、諦めることも出来ないまま、いまや老いたうえに持病を抱え、そろそろタイムリミットが近づいています。今年こそ、たとえ不出来でも写真集を出します。
そんな思いで、今年も特攻桜を撮り始めました。