”普通”である、という感覚 ― 為末大 ―

異端会議からの転載です。(異端会議サイトでは無料です)

“普通”を認識するには、それまでの“普通”を壊す体験が必要

薮崎 「私自身も含めてですが、世の中みんな、自分が普通の感覚を持っている常識人だと思っていて、一方で相手のことを『変わっているな』と思っていると感じます。“普通”を理解する力は、世の中の共感を得るために今後ますます必要になると思いますが、どうすれば鍛えられるでしょうか?」

為末 「“普通”が壊れる体験をすることが大事な気がしますね。現役の時の話で、当初は自分のことをけっこう社交的だと思っていたんですが、アメリカのチームに入ったときに、まあ英語の問題もあったんですが、周りに比べて全然社交的じゃないことに気づかされたことがありました。その時に思ったのが、多くの人は『人生で出会ってきた人の平均値』のことを『普通』だと認識していて、そこから『自分はどっちにずれているか』というので自分を説明しているなと。だから『自分らしさ』は案外あやしいものだな、って思ったことがあったんですよ。それからたくさんの人に会って、『自分はどの辺に位置するんだろう』って考えるようになりました。会う人が変わると『自分らしさ』も変化するということは非常に面白いなと。」

ここから先は

2,941字 / 3画像

¥ 100

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?