『静かな』 山口祐也

私は夏に死にました
暑い暑い静けさの中でした
あるいは暗い水底でした
あるいは取るに足らない期待でした
あるいは流し台を流れる哀れみでした
あるいは路地で管を巻く怠慢でした
あるいは緩やかな絶望でした
あるいは日陰に寝そべる猫達の夢でした
あるいは果たされなかった約束でした
あるいは風にたなびくお香の煙でした
あるいは日曜日昼下がりの光景でした
あるいはあなたの言葉でした
思い出せないほど繰り返された嘆息でした
それは静かな耽溺でした
私は夏になりました

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