「音楽が私たちの耳に届くまで」の学問領域 その1
<今週の能大マガジン week 21>
「音楽が私たちの耳に届くまで」の学問領域 その1
今回は、大学時代に芸術工学部音響設計学科で体系的に学んだ「音」について、概要だけお話しします🗣
前回の「芸工式アート思考」の続編!
大学時代振り返りシリーズです!
前回の記事はこちら👇
様々な学問分野
前回の記事でも触れましたが、芸術工学部では幅広い学問分野を学びます。
音響設計学科では大きく分けて以下の分野を学びました。
✔︎ 音文化学
✔︎ 音響環境学
✔︎ 音響情報学
もう少し具体的に見ていきましょう。
上記URLを引用します。
教育理念・目標、育成する人材像等
音文化学では、音声言語の体系的理解と音楽の表現方法や歴史的理論的理解に基づき、音を介して人間の精神活動の成果を生み出す音声言語文化、音楽文化に関する高度な教育研究を行います。主な研究分野は、作曲、音楽系メディアアート、音楽生態論、音楽分析、音楽美学、音楽マネジメント論、接触比較言語学、福祉言語学などです。
音響環境学では、人間にとって最適な音環境を構成するために、人間的側面からの評価と物理的側面からの解析・予測・制御を通して、各種の音環境を計画・設計することに関する高度な教育研究を行います。主な研究分野は、建築音響学、音場制御、音響心理学、サウンドスケープ、音質評価、非線形現象論などです。
音響情報学では、聴覚情報を獲得し、体制化する知覚、認知の仕組み、及び音響情報の抽出・処理・記録・伝達を含む音響機器の最適化に関する高度な教育研究を行います。主な研究分野は、知覚心理学、聴覚認知論、聴覚医学、音響情報工学、音声情報工学などです。
上記のように、3つの分野ではまとめきれないほど、様々な分野から「音」に向き合いました。
今回は、これらの分野を活用する具体例として、日常の中で音楽を楽しむ過程に当てはめて振り返ってみます。
「音楽が私たちの耳に届くまで」を考えたときに、学問としてどのような分野が関わるのかを見てみましょう🗽
1. 曲をつくる:音文化学
音楽理論や音楽史を土台として、曲を作曲します✍️
美しい調律を奏でたり、逆に心地悪い不協和音を取り入れてみたり、ジャンルごとのリズムやメロディーのパターンを別のジャンルに取り入れてみたり。
一般的には、このように音楽理論をもとにして曲が作曲されます。
また、時代とともに変化する価値観や社会情勢、技術に応じて音楽も変わっていきます🌀
例えば、音楽を聴く場所や方法によって扱う音楽や適切な音楽が変わります。
西洋音楽史を見ると、教会で歌われていた聖歌から始まり、宮廷や音楽堂で演奏される貴族のための音楽、庶民が楽しむレコードやラジオから流れる音楽、、、というように、音楽の社会的位置付けや技術などによって音楽が変化することは想像できると思います。
これらの音楽理論や音楽史を学問として学んでいなくても、意識している、あるいは無意識のうちに影響されているのです。
暗い雰囲気のメジャーコードはありませんし、自分が聴いてきた曲に影響されているはずです。
とにかく、曲をつくるという活動はこのような視点から学問に紐づけることができます🪢
2. 歌う:音響情報学・音響環境学
歌う、または発声の仕組みは、言語学や物理音響の分野で説明ができます。
声の高さや母音・子音の仕組みは言語学で学ぶことができます👄
声の高さは声帯の振動数によって決まり、各母音は声道(声帯から唇または鼻孔)の形によって決まります。
また、子音は声帯が振動するかどうかによって有声音・無声音に分けられ、さらに唇・歯・舌をどう使うかによって様々な子音に分類されます。
母音の発声時の共鳴に関しては、管の共鳴という部分で物理音響で扱われることがあります。
声道(声帯から唇または鼻孔)を管と捉え、例えば日本語の「あ」を発声するときの声道の形を異なる太さの管の繋ぎ合わせで表現し計算できます。
このように、発声の仕組みは複雑で、また管楽器などの管に近似されることから、歌は楽器と言われることがあります🎷
3. 音がマイクまで伝播する:音響環境学
音という振動の波が空気中を伝播する部分については、物理音響の分野で学ぶことができます。
その中でも環境によって解析方法や分野が細分化されています。
残響があるのかないのか、屋外なのか室内なのか。
録音スタジオなのか、教会なのか、コンサートホールなのか。。
様々な環境下での音の伝搬について物理的な観点から考えることができます🌀
次回予告!
今回は、歌がマイクに届くまでで、どのような学問分野が関わるのかを見てきました。
次回以降は以下のフェーズに着目して見ていきます!
4. 録音する:音響情報学
5. 編集・ミックス・マスタリング:音文化学・音響環境学・音響情報学
6. ディジタルデータを変換し、スピーカーから音を出す:音響情報学
7. 音が耳に届くまで:音響環境学
8. 音を楽しむシチュエーション:音文化学
あと2回くらいに分けてゆっくり投稿していきます🗽