#「べジモア食育協会」 高橋思歩さん
料理は愛情。
耳馴染みのいい言葉だけれど、どれだけの人が実感して使っているだろう。
「食事、料理は人、社会を築く基本。
愛情と幸せの基本だと、本気でそう思います。」
思歩さんが、そう思えることに感謝しているという、これまでの物語を聞いてみた。
※* ※* ※* ※* ※* ※* ※* ※
9つのこ食をなくして
誰もが家族みたいに集う食卓を
※* ※* ※* ※* ※* ※* ※* ※
「食を囲んで、誰もが家族になれるような食卓を広げたい。」
料理教室をはじめ、こども食堂、フードパントリー、
見守り弁当宅配、老人ホーム食イベント、一人親支援スナック・・・と
数々の活動を行う「べジモア食育協会」を足立区で発起して、5年。
コロナ下も地道に活動を続け、地元で食のボランティアとして知らない人はいない。
べジモアの食育の柱は、
「9つのこしょく」の改善。
食事は、誰もが愛情を感じ、愛情を表現できる一番身近なひと時。
食べる人みんなが健康で幸せになってほしい。
そしてたどり着いたのが、
孤食・個食・固食・粉食・子食・濃食・小食・戸食・虚食、を改善して、
食に制限がある人、年齢や志向、国が違う人も、
みんなで野菜いっぱいの料理を楽しめる場を増やす、食育活動。
慣れ親しんだ味を、植物性100%、白砂糖不使用、グルテンフリーで作って、みんなで食べる。
そんな活動を知って、多くの現場から頼りにされ、一つずつ真摯に取り組んできた。
※* ※* ※* ※* ※* ※* ※* ※
幼い頃の「こ食」の記憶
おいしいの笑顔が、糧に
※* ※* ※* ※* ※* ※* ※* ※
幼い頃、思歩さんの食卓はいつも「こ食」だった。
「生みの母親を知らずに、祖父母に育てられた後、
義母と2人の妹を迎えた家庭で、
義母は、食事を作ってくれませんでした。」
16歳の頃、義母がいなくなると、
思歩さんは、料理を含む家事すべてを担うことに。
家庭科以外には独学の料理だったが、
妹たちは「おいしい!」と食べて、懐いてくれた。
「家事、学校、仕事と大変な毎日の中、妹たちのその言葉がなければ、私は頑張れなかったと思います。」
その言葉と笑顔は、精神的にも身体的にも、辛い日々の思歩さんの大きな支えになった。
妹たちに、もっと美味しい料理を食べさせて、健康で幸せになってほしい。
その思いを、来る日も来る日も、料理に込めた。
※* ※* ※* ※* ※* ※* ※* ※
身体も精神も疲弊して
揺り戻された、自身の食の原点
※* ※* ※* ※* ※* ※* ※* ※
社会人になると、アパレル業界へ就職。
ショップ店員から店長、さらに女性の美をコンセプトにしたブランドのプロデューサーを務めるまでになり、仕事は昼夜を問わず超多忙に。
身体も、肌も・・・悲鳴を上げはじめた。
体調を崩し、ライフスタイルを見直そうとした時、
思い出したのが、自身の原点「食は幸せの基本」という記憶だった。
そこから、料理教室に通って基本から学び直し、
更に、食と美容・健康の関係を学ぼうと、女性向けインナービューティーの資格を取得、初代インストラクターに認定され、お料理教室を足立区に開講。
2年後、多世代に向けて活動を広げようと、ベジモア食育協会を設立した。
「食、料理は幸せな人、社会を築く基本」ということを伝える、
地域の食卓のような場づくり&人材の養成をスタート。
これまでの食環境から経験したことを踏まえ、子どもからお年寄り、ひとり親など、孤立しがちな人の支援、地域コミュニティづくりに、食でできることがあればと東奔西走の日々がはじまった。
※* ※* ※* ※* ※* ※* ※* ※
『食事は愛情、幸せの基本』
気付く機会をもらえたから、伝える
※* ※* ※* ※* ※* ※* ※* ※
経済的なこともあり、水商売や、無理な働き方を経験してきた。
周囲にもそんな働き方で、身体的にも、精神的にも、体調を崩す多くの人を目の当たりにしてきた。
「食は、身体と心に沁み入るものです。
食環境は、無意識にとても深く根付き、人格すらつくります。
十分でないと、健康が壊れるだけでなく、犯罪の引き金にもなるかもしれません。」
身体、精神的に健康でないと、自分を愛せなくなったり、他人を傷つけたりすることにもつながっていく。
美容、不調の問題を何とかしなければと、高価な化粧品や健康食品、施術を受け続けたり、解決できないままますます追い込まれるケースも多く見て来た。
「私は、経験を通して『食は人、心、体をつくる』『食事は愛情、幸せの基本』、そのことに気付く機会をもらえた。そのことに、感謝しています。
食事、料理が日常にあたりまえの時代に、そのことに気付けないまま解決できずにいる人は多いと思います。」
食は、愛情を循環させる生命の営み。
食べることで、誰もが愛情をチャージして、幸せ、健康、キレイを創って日々生きている、と実感しているからこそ、湧くパワー思歩さんの中にはある。
「食、料理を通して、お互いがそれぞれの幸せや健康を願うことができたら、
みんなが幸せで、サスティナブルな未来をつくることは、夢じゃない。本気で。」
その実現を誓い、今日も思歩さんの挑戦が続く。
(岡志寿子 著)