学校事務職員の精神疾患による休職状況がさらに悪化

労働のありようを考える上での重要データ

文科省が毎年公表している「公立学校教職員の人事行政状況調査」。
23年度の調査結果が公表された。

この人事行政状況調査では、精神疾患による休職等の状況も取りまとめられており、教員だけでなく事務職員についても明らかにされている
教職員のメンタルヘルスを、ひいては職における労働のありようを考える上で重要なデータだ。


昨年は学校事務職員が初の1%超え

昨年もこれをもとに、以下の記事を書いている。

調査の経過や問題意識も記しているので、今からでもお読みいただけると嬉しい。

以下では、今回公表された23年度結果についても、速報的に整理しておく。


悪化がさらに加速

学校事務職員の精神疾患による休職割合はさらに悪化し1.12%に。増加自体ももちろんだが、伸び率が加速している点に深刻さを感じる。


精神疾患による休職割合について、事務職員が教員を一貫して上回り、しかもその差が年々広がっていることはかねて指摘している。
率直に言って、そろそろ縮まるのではないかと思っていた。根拠なく。しかし、そんなことなかった。


精神疾患による、休職と1か月以上の病気休暇取得の割合。こちらもさらに悪化し1.85%伸び率が加速している問題も同様だ。


割合だけでなく人数も増えている。休職608人、1か月以上の病気休暇取得も含めると1,006人にのぼる。


加速の要因…23年度はどんな年だったか

今回の結果を見ると、単に状況の悪化が続いているのみならず、それが加速している。

要因はなにか。
調査対象の23年度に、何があったか。

同年度直前の23年2月、文科省は
「令和4年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果等を踏まえた「令和3年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果等に係る留意事項について(通知)」の補足事項について(通知)」
という通知を出した。

この通知は、本来学校以外が担うべきとされていた学校徴収金業務について、学校業務として温存し事務職員に転嫁することを勧奨する、たいへん問題のある内容であった。

全学労連ニュース447号 2023年5月27日
文科省課長通知「学校徴収金は事務職員が一括して管理を」 中教審答申以来の大前提をねじ曲げる「補足」という名の暴走

全学労連ニュース449号 2023年8月5日
全学労連文科省交渉 学校徴収金、高い休職率と業務負担問題で文科省の姿勢を質す


また、23年5月には「質の高い教師の確保」が中教審に諮問された。
中教審「質の高い教師の確保特別部会」は8月に「緊急提言」が出し、文科省はそれを踏まえた取組徹底を促す通知を出した。

ここでいわゆる「3分類」「14の取組」の徹底が挙げられ、具体的には「学校徴収金の徴収・管理」「調査・統計等への回答等」「進路指導」における事務職員への業務転嫁の徹底が打ち出された。


こうした動きの中において、事務職員の精神疾患による休職等の状況はそれまで以上に加速度的に悪化した。
客観的な事実経過として、そういうことになる。


学校事務がもたなくならないように

それでも、事務職員への業務転嫁の動きが止む気配はない
日教組事務職員部や全事研といった、事務職員内における職務領域拡大・業務取り込み志向の人々が考えを変える気配もない
例えば中嶋康晴・日教組事務職員部長は直近の寄稿で次のように述べる。

職務の幅を広げるといった新たな実践・取り組みも必要です。職務の幅を広げるためには新しい業務が生じたりすることから、負担と感じる事務職員もいます。しかし、社会が変化し、学校や事務職員を取り巻く情勢が大きく変わっている中、業務の質を変え、変化に対応することは不可欠です。
ーー中嶋康晴・日教組事務職員部長

学事出版「学校事務」2025年1月号

「しかし」の前と後がどうつながるのかよくわからない。
「不可欠」だとする「変化に対応する」ことが困難な、新しい業務を「負担と感じる事務職員」は、どうしたら良いのだろうか。

こういう能力主義的な強者の考えの蔓延が、学校事務職員の55人に1人が精神疾患で休職・長期休暇に入るような状況を生み出したのではないだろうか。

このままでは学校事務がもたなくなる。そんな感覚がある。

いま、真に必要にして不可欠なのは、持続可能な労働条件なのだ

無理をして負担を感じて倒れる人を出してまで、業務の幅を広げる必要はない。
無理や負担や倒れる人が出ない社会、情勢をつくることこそが、目指すべきことではないのか

それを実現することこそが労働組合の使命であり、学校事務の世界において担うのは全学労連ー学労運動なのだと思う。

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