伊藤拓也(全学労連/学労川崎:学校事務職員)

学校事務職員の労働団体・全国学校事務労働組合連絡会議(全学労連)、学校事務職員労働組合…

伊藤拓也(全学労連/学労川崎:学校事務職員)

学校事務職員の労働団体・全国学校事務労働組合連絡会議(全学労連)、学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川)・同川崎支部(学労川崎)で、学校事務労働運動に参加しています。川崎市立学校事務職員15年目。アイコン猫は以前の勤務校内で保護しました。

最近の記事

「定型的」と断ずる人の仕事

学校事務の世界には、ある種の業務を「定型的業務」と呼んで、それへの軽視を露わにする方がいる。 それとセットで言われる近年の流行文句は「AIで代替可能」だ。 ただそれを見聞きしていると 「それはあなたが、その業務を定型的にしか執行していないだけではありませんか?」 と感じてしまう。 私は、どんな業務にも工夫と改良の余地があって、そのことが、賃労働に過ぎずとも「人」が仕事をすることの価値のひとつだと思う。 冒頭のスタンスの主=言ってしまえば日教組事務職員部や全事研の幹部=が

    • 前提は疑わずに「つかさどる」ということ

      「学校現場における課題の多様化・複雑化を踏まえ、令和の日本型学校教育を推進する上で教師が教育活動に専念できる環境整備のため、学校事務職員がその役割を発揮することが求められまた期待されている」 あたりが最新の学校事務役割論。 ただこちら、前提を所与のものとしている点に疑問があります。 例えば、これだけ疲弊し人も集まらない学校現場にさらに多様・複雑な課題を負わせることの是非は、かねて議論の俎上に乗ってること。 課題の中身、日本型学校教育の是非、教育活動に専念できる環境整備の中

      • 引っ越してきました

        振り返ると2020年から。 はてなブログで「事務室の鍾声~学校事務職員の発信実践」を書いてきました。 当初は毎日更新を目指していて、でも根が三日坊主なので最近は月1更新すれば良い方です。 これは今回の引っ越しとは関係なくて、ただこれからはもう少し頻繁に更新したいなと思っています。(更新のたびに言ってるけど) 顧みれば、Twitterには自身の発信実践がたくさんあります。 しかしいつのまにか、Twitterはアカウントなしでは読めなくなっている由。 ですので、その転載も多

        • 「チーム」と、厄介で不採算なものについて

          公立学校の学校事務職員はその名の通り、「〇〇学校」という部署に所属する職員だ。 小中学校はたいてい、「課」相当の部署…という認識。少なくとも川崎市はそう。 で、特定の部署に属する職員である以上、新人職員の指導・育成・サポートは任命権者や服務監督権者とともに、当該部署も一定の責任をもって担うのが通常だ。 これを他の部署の職員に丸投げし、あまつさえ部署内では指導・育成はおろかサポート(新人相応の業務軽減)さえしない、というのは本来あり得ない。 学校においても新人教員への扱

          【調査報告】共同実施・共同学校事務室と「事務の適正化」の実態~着服・横領事例はすべて共同実施導入自治体

          学校事務の共同実施・共同学校事務室の意義のひとつとして、「事務の適正化」は必ずといっていいほど挙げられるものです。 ほかに、「事務職員の育成及び資質の向上」「事務処理の質の向上」も同じ系統と言えるでしょう。 なるほど、確かに同じ職種同士で集まって情報交換や業務の相互チェックをすれば、「事務の適正化」が図られるとする考えには一理あると思います。 しかし、それは共同実施や共同学校事務室が「情報交換や業務の相互チェック」という機能にとどまっている範囲においては、のことです。

          【調査報告】共同実施・共同学校事務室と「事務の適正化」の実態~着服・横領事例はすべて共同実施導入自治体

          学校事務職員の仕事~「多品種少量」「定型的業務」そして思考と実践の話

          あと3か月もすれば学校を卒業して働き始める人たちがいるのだなぁと、ふと気付きました。 私たち学校事務の世界にも、新人がやってきます。 川崎市は13人の採用試験合格を出しています。このうちどれだけの人数が実際に入職するかはわかりませんが、歓迎の気持ちを表するとともに、労働条件と職の将来を維持向上させるため、引き続き頑張っていきたいと思います。 そうした方々がおそらく気になることのひとつ。それは、学校事務の仕事や役割とは何ぞや。 これはなかなかイメージしがたいところだと思

          学校事務職員の仕事~「多品種少量」「定型的業務」そして思考と実践の話

          賃金改善は「嵩上げ」ではなく「底上げ」で~行政職給料表構造下での昇任による賃金改善は労働者全体のものとはなり得ない~

          様々な事情から、ひとつの事業体の中に複数の労働組合が併存しそして対抗関係にあることは、珍しくありません。 私が所属する学労川崎で言えば、義務制学校事務職員という組織対象が川教組(日教組)と重なっており、組合員の獲得という点においてもそれ以外の様々な課題に対する認識においても、対抗関係になります。 とはいえどんな労働組合であっても、その目標に「賃金改善」を掲げないところはおそらくないでしょう。 それでは、その一点ではそうした併存組合でも共闘できるのでしょうか。 例えば神

          賃金改善は「嵩上げ」ではなく「底上げ」で~行政職給料表構造下での昇任による賃金改善は労働者全体のものとはなり得ない~

          「それを誰が実施しようとしているのか」~外見上は同じことであっても、実施主体によって「それ」の意図は変わるし結果も変わる

          私が所属する全国学校事務労働組合連絡会議(全学労連)、学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川)、同川崎支部(学労川崎)は、学校事務の共同実施・共同学校事務室に対して一貫して、反対する姿勢をとっています。 学校事務の共同実施が公に行政施策として位置づいたのは、1998年の中教審答申「今後の地方教育行政の在り方について」からと認識しています。 この答申を受け、各地で学校事務の共同実施導入の動きが広がりました。 さらに2017年には地教行法が改正され、共同実施組織が「共同

          「それを誰が実施しようとしているのか」~外見上は同じことであっても、実施主体によって「それ」の意図は変わるし結果も変わる

          怒る教頭会と怒りの感じられない教職員組合 ~共同実施導入からセンター化&事務職員無配置校激増に至った大分県の事例

          学校事務の共同実施について調べている中で、「大分県公立学校教頭会」作成の報告資料に行き当たりました。 http://oita-ktk.com/downroad_files/jimu2022/jimu04.pdf 「令和3年度 全国公立学校教頭会の調査~全国と大分県の比較~の分析」と題されたこの報告では と、大分県教委によるある施策を厳しく批判する言葉が並びます。 管理職集団である教頭会の報告としては異様とも映り、労使癒着のへたな教職員組合よりよほど痛烈です。 問題の

          怒る教頭会と怒りの感じられない教職員組合 ~共同実施導入からセンター化&事務職員無配置校激増に至った大分県の事例

          会計年度任用職員の期末勤勉手当〜「制度だから仕方がない」ではなく、労働条件をめぐる差別に敏感でありたい

          地方公務員の賃金確定が、各地で進行しています。 それに先立つ各地の人事委員会勧告では、民間企業の賃金実態を踏まえるとして、特別給=期末・勤勉手当を引上げること、引上げは勤勉手当に配分すること、とする内容が多くの自治体で出されました。 私の勤務する川崎市も同様であり、そして市当局は賃金確定交渉において同様の提案を終始示してきました。 もちろん、特別給引上げ自体は歓迎するものです。 しかしながら勤勉手当=成果給部分への配分は、平等な賃金体系をさらに弱め職員間の賃金格差を拡

          会計年度任用職員の期末勤勉手当〜「制度だから仕方がない」ではなく、労働条件をめぐる差別に敏感でありたい

          全国学校事務労働者交流集会~3年ぶりの全交流は頼もしい皆さんに助けられ、とにかく楽しいものでした

          9/30~10/1にかけて、私も事務局メンバーを務める団体・全学労連の主催する「全国学校事務労働者交流集会」通称「全交流」が開催されました。 一昨年・昨年はコロナ禍を受けて中止を余儀なくされましたので、3年ぶりになります。 特に昨年は東日本大震災・原子力災害から10年という節目ということで、かなり早い段階で「21年は福島で」ということが決まっていました。 全学労連の中でもっとも勢いのある組合が福事労(福島県学校事務労働組合)で、それだけにいろいろおんぶにだっこになりがち

          全国学校事務労働者交流集会~3年ぶりの全交流は頼もしい皆さんに助けられ、とにかく楽しいものでした

          デジタル化社会における学校での生き方 ~「個別最適」と「ウェルビーイング」とは異なる価値観を~ 2021年11月26日・全学労連交流集会基調

          思い返すとこの基調を書くのには、かなりの時間と労力をかけました。 今年の人事院勧告に「ウェルビーイング」の語が入ったのは、個人的にはショックでした。 1年近く前の文書ですから今から見れば修正したい点もありますが、それでもあの日の集会でとどまらずもう少し多くの方に目にしていただきたいと思い、敢えてそのまま掲載します。 === デジタル化社会における学校での生き方 ~「個別最適」と「ウェルビーイング」とは異なる価値観を~ 2021年11月26日・全学労連交流集会基調 伊

          デジタル化社会における学校での生き方 ~「個別最適」と「ウェルビーイング」とは異なる価値観を~ 2021年11月26日・全学労連交流集会基調

          「学校における働き方改革」により事務業務そのものが増えている。なのに「事務職員も教員の負担軽減の取り組みを」と。二重の要求を行っている自覚はあるか。

          8月下旬に政府各省庁の来年度概算要求が公表されました。 文科省の概算要求を見ると、教職員定数の改善においては特段見るべき点はありませんでした。 小学校35人学級化が進行中であり、文科省は次の定数改善はその効果検証を踏まえて、という考えのようです。そのことから、この傾向は当分続くものと考えられます。 事務職員の定数改善についても、小指の先ほども期待を持てない、前向き姿勢さえ感じ取れない内容です。 (「チーム学校や学校DXの推進に向けた運営体制の強化」名目で主幹教諭、養護教

          「学校における働き方改革」により事務業務そのものが増えている。なのに「事務職員も教員の負担軽減の取り組みを」と。二重の要求を行っている自覚はあるか。

          初めて学会というものに参加してみた話~シンポジウム「AI活用・教育データの利活用とその課題」の感想を中心に

          昨日、川崎市のカルッツ川崎で開催された「日本教育工学会2022年秋季全国大会」に参加する機会に恵まれた。 会員でもなければ研究者でも教員でもない私が、なぜ突然教育工学の学会なんてものに参加したのか。 実は、川崎市教育委員会が開催地として大会の共催に名を連ねたため、川崎市関係者は無料で参加できることとなり、その案内通知が学校に来たのを目にしたせいだ。 (事務職員は文書受付処理を行うので、ほとんどの通知を目にすることができる) (ちなみに言えばその案内は私の職場の校内では、結

          初めて学会というものに参加してみた話~シンポジウム「AI活用・教育データの利活用とその課題」の感想を中心に

          経歴初期の学校事務職員にはベーシックな業務に集中できる環境を保障すべき。それが豊かな学校事務にもつながるはず。

          この仕事に就いて13年目になる。 当然ながら、給与事務にせよ旅費事務にせよ文書事務にせよ財務事務(これが業務比率としては圧倒的に多い)にせよ、経験年数の浅いころに比べてスムーズにできている。はずだ。 昔はマニュアルと首っ引きでやっていた職務でも、今は空(そら)で進めることができることが多くなっている。 強いて希望したわけではないが一貫して小学校勤務だったせいで、どういう物品がいつ頃どんな用途で必要になるかも、わりあいわかっているところがある。 重ねてきた経験の中で、難

          経歴初期の学校事務職員にはベーシックな業務に集中できる環境を保障すべき。それが豊かな学校事務にもつながるはず。

          学校の粗大ごみ廃棄事情と「先送り文化」

          すっかり間が開いてしまったが。これでは発信実践の名が泣く。 どうもこのところ、文章を書くにあたっては「書くぞ」と気構えてしまう傾向が強くて、そうすると途端に億劫になってしまって書かないままになり、たいへんよくない。 昔はもっと気軽に書き散らしていたような気がするので、もう一度、気軽に文章を書き散らす姿勢をこのブログに持ち込んでいこうと思う。 これは一種のリハビリだ。 今日は勤務校で粗大ごみの回収があったので、その話でも書くこととしよう。 川崎市立学校における粗

          学校の粗大ごみ廃棄事情と「先送り文化」