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「深く憂慮する教育関係者一同」の一員にさせられて~教育関係23団体緊急声明について

昨日の続きです

「質の高い教師の確保」を命題とし、とりわけ「教職調整額」が焦点化している、教育政策をめぐる攻防について。

昨日の投稿の続きです。

今日は11月11日の財務省案、これに反論した12日の文科省見解に続き、15日に「緊急声明」を発した「子どもたちの豊かな育ちと学びを支援する教育関係団体連絡会」(以下「連絡会」)とその声明について。


「子どもたちの豊かな育ちと学びを支援する教育関係団体連絡会」

連絡会は教育委員会・校長会・教頭会・PTA・職能団体・教職員組合等から成り、具体的には次の23団体で構成されている。

  • 日本PTA全国協議会

  • 日本教育会

  • 全国市町村教育委員会連合会

  • 全国都市教育長協議会

  • 中核市教育長会

  • 全国町村教育長会

  • 全国連合小学校長会

  • 全日本中学校長会

  • 全国公立小・中学校女性校長会

  • 全国特別支援学校長会

  • 全国連合退職校長会

  • 全国高等学校長協会

  • 全国公立学校教頭会

  • 全国特別支援教育推進連盟

  • 全国へき地教育研究連盟

  • 日本連合教育会

  • 全国養護教諭連絡協議会

  • 全国公立小中学校事務職員研究会

  • 全国学校栄養士協議会

  • 日本教職員組合

  • 全日本教職員連盟

  • 日本高等学校教職員組合

  • 全国教育管理職員団体協議会

パートナー路線への転換からかれこれ30年近くになる日教組が、教育委員会や校長会と席を同じくすることにはもはや何ら疑問はない。
ただ日教組と全日教連が席を同じくする光景は、その裏にどのような思いがあるのだろうかと興味深い。
案外何もないかもしれない。
日教組も全日教連も、それぞれが多数を占める地域において「与党」を成し、そうした地域から派遣された人たちが全国組織中央の主流を形成していることだろう。
「他県の人たちの集まり」くらいの感覚かもしれない。全くの推測。

脱線した。
とにかく、そんな23団体で構成されている。


文科省「見解」との相似

連絡会緊急声明には、3日前の文科省見解との相似が相当程度見られる。
そのため、文科省見解に対して昨日の投稿で加えた批判は、おおむねそのまま連絡会緊急声明にもあてはまる。

  • 教員の平均時間外在校等時間が今なお上限指針を大幅に超過している実態にまったく言及せず、問題意識が欠如している。

  • 「財務省案は学校や教育委員会の努力だけでなんとかしろというもの」と描き出し、実際には存在する人的配置に関わる提案内容を無視している。

  • 文科省のこれまでの政策や今回の「見解」に対する評価がまったくないまま、事実上追認している。

などだ。


「学校や教師の実態」と「勤務時間縮減」

順番が前後するが、緊急声明はそのはじまりから首をかしげるものだった。

財政制度等審議会において、学校や教師の実態を考慮に入れない働き方改革や給与制度についての提案が行われています。

「学校や教師の実態」である。
しかし、まさにその「実態」を見直すことなしに、「学校における働き方改革」はなしえないのが「実態」なのではないだろうか

私たちの知っている「学校や教師の実態」は、「勤務時間」「始業時間」「終業時間」の存在自体を知らないかのような(中には「本当に知らない」者までいる)、働き方・働かされ方だ。
そして教員の「勤務時間」を考慮しない、教育委員会や学校管理職、そして保護者や学校を取り巻く地域、という「実態」だ。

そうしてみたときにふと、もうひとつのことに気付く。

緊急声明は「業務削減」には言及しているが、「勤務時間縮減」には一言も言及していないのだ。

びっくりした。


「教育関係者一同、深く憂慮しております。」

学校事務職員が「教育関係者」に当たるのかどうかはわからない。
ただ、連絡会には全国公立小中学校事務職員研究会(全事研)も名を連ねている。
そして私は心ならずも、その会員である。
そうなると、私も「深く憂慮しておる教育関係者一同」のひとりに勘定されてしまうようだ

私のことはともかくしかし、連絡会は本当に「教育関係者一同」を代表しているのだろうか。
いや少なくとも、加盟23団体の機関決定に基づいて緊急声明は採択されたのだろうか。


機関会議を経ましたか

11月11日に財務省提案が明らかになり、緊急声明は15日。
中3日の早業だ。

それだけの短期間に、これだけの数の団体の機関決定をまとめ上げ、さらに文科大臣の時間を確保して直接提出したのだから、大したものだ。

ところで、その期間内に緊急声明を議論・承認するような機関会議―理事会や役員会、執行委員会など――が予定されていなかった団体がいくつも確認されたのだけれど。
緊急会議を招集したのだろうか。

http://zenrensho.jp/
https://asp.schoolweb.ne.jp/1350003/download/document/2399095?tm=20241016160004


http://www.zen-koh-choh.jp/event/event_honbu.pdf
https://kyotokai.jp/wp/wp-content/uploads/2024/06/%E4%BB%A4%E5%92%8C6%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E6%B4%BB%E5%8B%95%E4%BA%88%E5%AE%9A%E8%A1%A8.pdf
http://www.zenhekiren.net/img/R6gyouji.pdf
https://www.nikkokyo.jp/schedule.html


連絡会緊急声明は何を代表しているか

連絡会加盟23団体のホームページを昨日8:30~9:10に確認したところ、緊急声明を紹介しているのは日教組ただひとつだけであった。
全事研は公式LINEによる配信機能を持っているが、今に至るも緊急声明については配信されてきていない。
Xではどこかの高校の校長が「自分は聞かされておらんよ」とつぶやいた。

「教育関係者一同、深く憂慮しております。」
連絡会緊急声明は、教育関係者一同を代表するかのようにそう述べた。

しかし実態はどうだろうか。
加盟団体が積極的に公表せず、構成員にも周知せず、機関決定にも疑念が生じる経過を伴う、緊急声明。

本当は、何を代表しているのだろうか。

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