ヒント-021
同じ体の動きの短めのフレーズを、かなりの回数リピートした事があるだろうか。
より短いフレーズの方が、「実験」として面白いのだが、大抵の場合、飽きてしまうことが多いと思う。
ただ例外的に「繰り返しに耐え得る」フレーズというものもある。30-40回繰り返してもつまらなくなるどころか、逆にそうする事によって、別の存在感が宿るという感じのものだ。音楽でいうところのミニマルテクノのような感じだ。
具体的にどんな動きのショート・フレーズがそのような効果を生みやすいのか、まだ残念ながらこちらではその特徴は掴んでいないが、この「飽きるまで、フレーズを繰り返してみる」という行為は、クリエーションにとってかなりの有効性を秘めているように思うのだ。
リピートの「実験」をしている最中に「もしかしたら、この動きの後のつなぎには、こういう動きがあると効果的かもしれない」「このフレーズは半分の長さにしてもいいかもしれない」等、いろいろなアイデアを、ひらめく事が多いのだ。体を動かしながらの思考だからだろうか。
もちろん、「これはこのまま50–60回リピートすることで、より存在感が増すタイプのフレーズだろう」ということも気付くことができる。そういう優れたフレーズにはなかなか出会えないが。
冒頭にも書いたが、この「実験」は、長時間やると、だいたいは「飽きて」しまうのだが、ここからがキーなのだ。
そこから全く別のフレーズにつなぐのか、相似形のようなものに少し変化するのか、そのまま続けるのか、という類いの選択肢が、さらに現れることが多く、なかなか興味深い思考を得られるからだ。
こういう時、ダンサーは、だいたい変化をさせたがる人が多いと感じるが、リピートを止めずにいた方がいい結果を生む事も確実にある。スタジオにビデオカメラを持ち込んで、収録して確認してもらいたい。
同じ事の繰り返しは、ダンサーとしては、つまらないこと/辛いことかもしれない。ただ、そういうフレーズの展開スタイルが「熱狂」を呼び込み、作品自体のグルーヴを産むことが多いのだ。
ここがダンサーと振付家の視点的違いかもしれないが、動きのフレーズとして、ダンサーは自分が飽きてしまうことや、体力的に辛いものを、やはり積極的には選ばないだろう。それでも構わないが、それらを優先ばかりしていると、観客への「キラーフレーズ」を取りこぼしてしまっている可能性も出てくるのを忘れないで欲しい。
また彼らは、「大きめの変化」を求める事が、一般的にちょっと多過ぎるような気がする。体の動きのフレーズが大胆に変われば、確かに、「自分は仕事をした」と思えるのかもしれないが、ミニマルなアクションの流れといったものも、アートとしてのダンス作品には効果的であることを、常に頭の片隅に入れておいてもらいたいのだ。
(文責・石山雄三)
次回は12月30日、掲載予定。
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