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ヒント-006

当たり前だが、「ここで、こういう動きがあれば、より良い作品になるだろう」と思えば、その方向性に沿う形で、振付家は作業を進めていく。

しかし、こういう時に、自分はよく「正反対の動き」を想像してみたりもしている。
何と言うか、「+100」の動作が必要ならば、「–100」のものを、思い浮かべたりしているのだ。

具体的な例を挙げると。流れるような流暢な動きが欲しければ、逆にぎくしゃくした動きとはどのようなものだろうかとか、ステップを切ってクイックにステージ上を駆け巡るようなものならば、立ち位置がほぼ変わらない、ゆっくりとした動きのフレーズはどんなものが考えられるか等、頭を巡らしている。

回り道のように聞こえるかもしれないが、「正反対の動き」の方がよりクリアに発想しやすいのなら、まずそれを仮に設定して、全てを反転させるようにフレーズを組み上げた方が、「結果」を得られるのが早い時もあるのだ

もちろん、文頭にある素直なやり方で、自分が納得出来る振付が仕上がったのなら、それでいい。

それでもいいが、自分のやり慣れた動きばかりで組んで、フレッシュさに欠けるとどうしても感じるのなら、もしくは作るべき動きのフレーズの具体的な「方向性」がまだいまいち見えて来ないのなら、このパターンだ。「真逆のテイストの動きから180度反転させて、解答を引き出す」という形だ。クリエーションの方法論としては、なかなか有効だと石山は思っている。

ただ、ここでは「真逆」ということが重要になる。
身体動作の構成要素(方向、力加減、速度、動きが展開するエリア等)が確実に180度反転しているなら、最初に作ることを想定していた動きのフレーズと「正反対の動き」は、ステージ上でほぼ「被らない」のだ。つまりは共存しやすく、ソロパートで使ってもいいし、4–5人のダンサーで両方のパターンを同時展開しても、スムースにシーンは進行するだろう。お互いの良さを殺さず、引き立てあう関係になれるからだ。

もう一つの利点として、動きのフレーズのバリエーションを容易に生み出せる点も見逃せない。動きの「ボキャブラリー」が、増えることは振付家にとって、使える「筆」や「ブラシ」が増えることと同じだ。より多彩な描写が可能になることを意味する。

「正反対の動き」を独立させて、別のシーンを組み立ててもいいし、そこから更にアレンジを加えて、全く別の動きのフレーズを作ることもできるだろう。

身体の動きへの「解析力」があれば、こういうパターンの「振付」も可能になるのだ。

(文責・石山雄三)

次回は7月25日、掲載予定。

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Yuzo Ishiyama/石山雄三
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